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「認知症になると、資産が凍結される」は本当?認知症になってからの相続対策とは

ファイナンシャルフィールド / 2019年11月21日 9時30分

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「認知症になると、法律行為ができなくなり資産が凍結する」というのは正確ではありません。「認知症で、意思能力がなくなると法律行為ができなくなり資産が凍結する」のです。   認知症になっても意思能力があるうちは法律行為が有効にできます。

成年後見制度の分類

認知症の初期症状は年齢による能力低下とよく似ています。脳梗塞で倒れたというように、ある日を境に意志能力がなくなるということではなく、徐々に能力が低下していくのです。
 

 
判断能力に問題がある人を「制限行為能力者」として不利益な法律行為から保護するために成年後見制度があります。この制度では、判断能力の程度により3段階に分けています。
 
・被補助人:事理弁識能力が不十分な者
      判断能力が不十分で法律行為を失敗して不利益を被る危険性が高いので、手助けが必要。
 
・被保佐人:事理弁識能力が著しく不十分な者
      法律行為の利害を十分に判断することができないので、重要な行為は独りではできない。
 
・被後見人:事理弁識能力を欠く常況にある者
      法律行為の利害を判断することができないので、代理人が必要。
 
後見制度は、一般的には親族などが家庭裁判所に申し立てますが、補助の場合は本人の「同意」が必要です。
 
また、被保佐人・被後見人になると会社役員の地位を失うなど権利等に制限が発生しますが、被補助人には権利に対する制限は特にありません。
 
このように、認知症であっても被補助人には法律行為をすることが認められているのです。

判断能力の有無の確認

しかし、実際には成年後見制度の利用者は2015年12月末時点で19万1335人にとどまっています。
 
2015年の認知症患者は推計520万人ですので、仮に成年後見制度の利用者全員が認知症患者だったとしても、認知症患者の5%未満しか利用していないということになります。
 
また、法律行為ができるのかできないのかの判断は非常に困難です。このため、高齢になってから遺言を作成しても、不満のある相続人が「この頃には認知症になっていたから、遺言は無効だ」などという主張をして、争族になってしまうのです。
 
このような争いを防ぐために、遺言を公正証書にするという方法があります。公証人は、国の公務である公証事務を担う公務員であり、法により以下の義務を負います。
 
公証人法26条
-公証人ハ法令ニ違反シタル事項、無効ノ法律行為及行為能力ノ制限ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行為ニ付証書ヲ作成スルコトヲ得ス
 
公証人法施行規則13条1項
-公証人は、法律行為につき証書を作成し、又は認証を与える場合に、その法律行為が有効であるかどうか、当事者が相当の考慮をしたかどうか又はその法律行為をする能力があるかどうかについて疑があるときは、関係人に注意をし、且つ、その者に必要な説明をさせなければならない。
 
このように公証人には、意思能力の確認が義務付けられているのです。
 

 

まとめ

対策せず認知症が進んでしまえば、預金口座の凍結などで家族に大きな負担が発生します。認知症になった後の財産管理で家族に負担をかけたくなければ、「任意後見」または「民事信託」を手配する必要があります。
 
また、争族予防には、財産の分け方を本人が指定する、「遺言」または「民事信託」で対策ができます。その際に、公正証書で公証人による意思能力確認済みとして、家族を守るのです。
もし、認知症を診断されたら対策を急ぎましょう。
 
出典
内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版) 認知症高齢者数の推計」
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―平成29年1月~12月-」
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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