ちょっとしたきっかけで借り入れ、数年のうちに多重債務に…借金の怖さとは
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月9日 23時0分
日本人には借金が嫌いな人が多いと思います。理由はさまざまですが、例えば住宅ローンなどでも余裕があれば繰り上げ返済をして、なるべく早く完済しようとする方もいるでしょう。 一方で、借金をしようと考えた場合、世間には手軽な方法があふれています。テレビコマーシャルなどではカードローン会社のコマーシャルが毎日流れています。なかにはちょっとしたきっかけで借り入れ、数年のうちに多重債務に苦しむ人もいます。 今回は「借金の怖さ」を考え、「借金」をするときの心得についてお伝えしたいと思います。
日本人は借金が嫌い?
日本人の多くの人が「借金は嫌い」と考えているように感じます。おそらく江戸時代ごろの日本は多くの庶民が少ないお金をやりくりし、お金を借りるのはよほどお金に困った人だったのではないでしょうか。
昭和に入ってからも政府が「貯蓄は美徳」として、貯蓄することを推奨していた時期が長くありました。こんな背景が日本人に「借金は恥ずかしい」という観念を植え付けたのではないかと思います。
住宅を購入するときに多くの方が組む「住宅ローン」ですら、将来の返済に不安を感じて躊躇します。確かに大きな金額の借金です。慎重になるのは理解できます。
定年後にもローンが残るような場合には、その後の収入減を考慮して早く返済し、できれば定年時にはローンを亡くしたい、軽くしたいと考えるのは当然だといえるでしょう。
しかし、定年までに十分返済が可能な方でも一生懸命繰り上げ返済されている方もいます。日本人の借金嫌いは必要以上に根深い気がします。
とはいっても、借り入れをしている人の数は決して少なくありません。信用情報機関CICが公表している資料では、2019年11月20日現在、借入残高がある貸出件数は1724万件。人数は1161万人におよびます。
気が付かないうちに借金をしているケースもあります。典型的なのは携帯電話でしょう。月々の携帯電話使用料と合わせて携帯電話の端末購入代金を分割払いで支払われている方は少なくありません。
危険なのはこのような方にはそれが「借金である」という認識があまりないことです。普通に毎月滞りなく支払っていれば問題ありません。しかし、もし銀行の残高が足りなくて引き落としができなかった場合はどうなるのでしょう。「ついうっかり」という方も少なくないでしょう。
しかし、そのうっかりはお金を貸している会社から見れば「滞納」です。
一度くらいならばなんとかなるかもしれませんが、何度も滞納してしまうような方は信用情報機関の「ブラックリスト」に載ってしまう可能性が高くなります。その人は「お金の管理にルーズな人」というレッテルを張られてしまうわけです。
キャッシュレスもちょっと怖い
現在、政府がキャッシュレス決済にポイントを還元していることもあり、最近、キャッシュレス決済をよく使うようになったという方も多いでしょう。
キャッシュレス決済にもいろいろあります。最近よく使われるようになってきた○○payのようなもののほかに、以前からあったクレジットカードやデビットカードなど、カードや現金でチャージするプリペイドタイプもあります。
最近出てきたキャッシュレス決済では、一括払いが原則なのであまり気にする必要はないでしょう(もちろんいくら使ったかを認識しておく必要はあります)。
クレジットカードで決済した場合はどうでしょう。
クレジットカードで買い物をした時「一括払いでよろしいですか?」と聞かれることがあるでしょう。多くの人が「ハイ」と答えると思いますが、この質問にはほかにどんな答えがあるかご存じですか?
一括のほかには、分割払い、リボ払い、ボーナス一括払いなどがあります。分割払いの場合には回数を指定します。分割払いの回数は2~24回の間で選択できます。
余談ですが、一括払いだけでなく、実は2回払いの場合も金利・手数料はかかりません(店によっては分割を扱わないところもあります)。
怖いのは3回以上の分割やリボ払い、ボーナス一括払いなどです。これらは間違いなくカード会社からの借金。そして、金利手数料は多くのカード会社が15%程度を設定しています。世の中が「超低金利」の時代なのに15%というのはちょっと驚いてしまうような金利です。
この高い金利ですが、見方によっては「たいしたことない」と感じてしまうところが怖いところです。
金利の怖さ
クレジットカードで10万円の買い物をし、翌月に一括でカード利用料金として引き落とされた場合、金利はかかりません。
カードローンで10万円を金利18%でキャッシングし、翌月返済した場合はどうでしょう。
この場合の返済額は約10万1500円、金利は1500円程度です。このくらいの金額だとあまり負担を感じない人も多いのではないでしょうか。
では10万円の買い物をし、12回の分割払いを指定したとしましょう(年利15%)。
この場合、毎月の返済額は9025円、総支払額は10万8122円です(金利は日割りで計算されるため、借り入れた日によって若干の差が出ます)。
10万円を借りて支払う金利が8122円。このくらいになると負担感が大きくなってくる人も多いでしょう。しかしものを買うときに店頭でこれを分割にしたら金利負担がいくらになるかを理解している人は少ないでしょう。
しかも返済が終わる前にまた借り入れを起こせば返済元本が増え、金利負担も増えていきます。
慣れの怖さ
そして、怖いのは「慣れ」です。「最初の○○日は金利ゼロ」などとうたっている会社もあります。「初めての人限定」などの条件が付いていることが多いと思います。
怖いのは、一度利用することでカードローンなどに対する心理的なハードルが下がってしまうこと。カードローンだけでなくクレジットカードの分割払いやリボ払いでも同じです。
一度利用し、あまり負担を感じずに返済すると「困った時はまた利用しよう」と考えてしまいます。そして、その「困った時」の判断基準が下がってしまうのです。
その結果、何度も借り入れたり、元本を返済し終わる前にまた借り入れてしまうなどという人も現れます。こうなるともう絵に描いたような「多重債務者への道」。ますます状況は悪化していくでしょう。
まとめ
借金には「良い借金」と「悪い借金」があります。
「良い借金」は現実的に実現可能な返済計画がある借金。一方、「悪い借金」は計画性のない行き当たりばったりの借金です。
サラリーマンなら毎月給料日にはおおよそ決まった収入が得られるでしょうから、短期間で返済することを前提に借り入れることもできるかもしれません。
しかしアルバイトなどでは、翌月の収入を見込んでいたのに急に収入が途絶える可能性もあります。不幸にして学生でも多重債務に苦しむ人がいます。
「ない袖は振れない」と言います。自分の収入などからそれに見合った生活レベルを考え、ない袖を振るような借金は絶対にするべきではありません。
<参照>
信用情報機関CIC「貸金統計データ」(2019年11月20日現在)
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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