2020年4月からスタート! 相続における「配偶者居住権」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月24日 10時15分
相続にまつわる心配事の1つとしてよく挙げられるのが「家」です。特に再婚の場合、「夫が亡くなった後、前妻との実子が家を相続し、再婚した配偶者(後妻)が住む家をなくしてしまう」といったことが、これまで問題になっていました。 しかし、相続法の新制度は配偶者に手厚いのです。2020年4月からスタートする配偶者居住権の内容を見ていきましょう。
新制度のスタート、その理由は?
夫婦どちらかが亡くなった場合の遺産相続で残された配偶者が困ることの1つが、夫婦で住んでいた家の処遇です。遺産分割のために家を処分しなければならなかったり、相続したとしても、家(土地含む)の評価額が高いためにそれ以外の現金などの遺産を受け取れなかったりすることがあります。
そこで、ひらたくいえば、残された配偶者が引き続き家で暮らせるように、なおかつ、現金などの財産分割もスムーズに行われるように、この制度ができました。また、夫婦共有名義の自宅では、配偶者居住権を使わずとも妻は居住継続可能です。
「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」
亡くなった方の配偶者がそれまで生活した家で継続して住み続けられるように配慮されたこの制度は、2つの種類があります。
遺産分割が確定するまでの期間(最低6ヶ月)、自宅に無償で住み続けることができる「配偶者短期居住権」と、遺産分割の際に取得すれば終身(つまり亡くなるまで)または一定期間、やはりタダで住み続けることのできる「配偶者居住権」です。
「配偶者短期居住権」は、相続税の課税対象外になります。土地に関する「配偶者居住権」は配偶者が取得するものになり、小規模宅地等の特例が適用されるので、評価を下げることになり、税負担を抑えることができます。
どう変わるのか?
配偶者居住権を含めて、遺産相続をどのようにしていくのか、具体例で見てみましょう。
[例]
相続するのは妻と子。相続財産が自宅(2000万円)と預貯金(3000万円)の場合
妻と子の相続分=1:1
これまでの制度では、
妻が相続=自宅(2000万円)+預貯金500万円
子が相続=預貯金(2500万円)
となり、妻は生活費に不安をおぼえるかもしれませんが、新制度では、
妻が相続=配偶者居住権(1000万円)+預貯金1500万円
子が相続=負担付所有権(1000万円)+預貯金1500万円
となり、妻の暮らしをより守ることができるようになっています。
「配偶者居住権」の価値評価方法
遺産相続のときに、実際いくらの価値があるとみなされ、「配偶者居住権」を取得できるのか、その評価方法を具体的に見ていきましょう。
◎建物敷地の現在評価額-負担付所有権の価値(※1)=配偶者居住権の価値
負担所有権の価値は、配偶者が平均寿命まで暮らすと想定した場合のその家(土地含む)の価値です。建物の耐用年数、築年数、法定利率などを考慮し、さらに現在価値に計算しなおして出た金額のこと。
[例]
夫は妻が75歳のときに他界。その時点での家と土地の評価額は4200万円。家が築40年のとき。
建物敷地の現在評価額は、4200万円。
負担付所有権の評価額は、2700万円。
(平均余命から妻が住み続けた後、将来亡くなった時点での建物敷地の価値を計算し、その価値を現在の価値に計算しなおした価格)
これを上の式にあてはめると……
4200万円-2700万円=1500万円
となるので、「配偶者居住権」は評価額1500万円となります。
注意すべきこと
新制度の注意点としては、配偶者居住権が認められない場合があることです。相続開始時に、その家(土地含む)が配偶者以外の誰かと共有になっていた場合、権利取得後に登記をしなければ第三者に対抗することもできません。
また、あくまで配偶者が住み続けられるようにという配慮をもとにできた制度ですから、配偶者居住権は譲渡することができません。家や土地を売るなら、居住権を放棄しなければなりません。
このような注意点はあるものの、特に再婚の配偶者は住む場所をなくす心労から開放される点で、この制度は画期的といえるかもしれません。遺産相続時に「家をどうしよう?」と慌てないためにも、押さえておきたい制度の1つです。
(出典)法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
執筆者/監修:FINANCIAL FIELD編集部
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