年金制度に不安を感じて、国民年金保険料を滞納しています。何か問題ありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月4日 1時15分
20歳以上60歳未満の自営業者や学生、フリーターの方など(国民年金第1号被保険者)は、国民年金保険料を直接納付する義務があります。しかし、さまざまな理由から、意図的に、あるいは無意識で保険料の滞納をしてしまう方もいるのではないでしょうか。 今回は、国民年金保険料の滞納を続けると何が問題なのか考えてみましょう。
国民年金第1号被保険者とは?
わが国の年金制度は、【図1】のとおり国民年金と厚生年金保険の2階建て構造になっています。そして、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は全て、国民年金の被保険者となります(※1)。
【図1】
会社員や公務員で厚生年金の被保険者である第2号被保険者と、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者は、厚生年金保険を通じて国民年金の保険料を納めています。一方、それ以外の人は、第1号被保険者として直接国民年金保険料を納付する義務があります。
保険料はどうやって納付するの? 納付できないときは?
国民年金保険料は、日本年金機構から送付される「国民年金保険料納付書」により、金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。その他、口座振替やクレジットカードを利用することもできます(※2)。
なお、保険料を節約することができる前納制度というものもあります。これについては「『国民年金保険料を少しでも抑えたい』そんな人は前納と早割制度を活用しよう」(参照記事)を参照してみてください。
また、国民年金には、経済的に保険料を納付することが難しい方を救済する制度があります(※3)。
1.学生納付特例制度
大学や専修学校などに在籍する学生で、本人の前年所得が基準を下回る場合は、申請して承認されると保険料の納付を猶予されます。
2.保険料免除制度
本人ならびに世帯主・配偶者、それぞれの前年所得が基準を下回る場合や、失業した場合など、保険料を納めることが経済的に難しい場合は、申請して承認されると保険料の納付が免除されます。免除される額は、「全額」、「4分の3」、「半額」、「4分の1」の4種類があります。
3.保険料納付猶予制度
20歳から50歳未満の方で、本人と配偶者の前年所得が基準を下回る場合には、申請して承認されると保険料の納付が猶予されます。これらの制度が利用できる所得基準は、【表1】のとおりとなっています。
【表1】
国民年金を払うメリットは?
国民年金は、国が運営しているものです。きちんと払っていくことで、国民年金には以下の4つのメリットがあります(※2)。
1.老後を支える終身保障
老後の生活資金として給付される「老齢基礎年金」は、終身で受け取ることができる年金です。
2.万が一の障害や遺族保障も充実
老後だけでなく、現役世代の被保険者が障害を負ったときには、本人に「障害基礎年金」が支給されます。また、被保険者や基礎年金受給者が亡くなったときには、遺族の生活を支える「遺族基礎年金」が支給されます。
3.保険料が全額所得控除
支払った保険料の全額がその年の所得から控除されるため、所得税や住民税を軽減することができます。
4.基礎年金の半分は国が負担
国民年金は国が運営しており、基礎年金の半分は国(税金)が負担しています。この点は、個人が保険会社と契約する個人年金保険と大きく違う点です。
年金を受給するためには保険料を納付することが要件
前述したとおり、国民年金には、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3種類がありますが、これらの年金を受給するためには、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
1.老齢基礎年金
老齢基礎年金は、【図2】のとおり保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合わせた受給資格期間が10年以上ないと受給することができません(※4)。
【図2】
2.障害基礎年金と遺族基礎年金
障害基礎年金は【図3】のとおり障害の原因となった傷病で初めて受診した日(初診日)の属する月の前々月まで、遺族基礎年金は被保険者または60歳以上65歳未満で被保険者であった方が死亡した日の属する月の前々月まで、公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていることが年金を受給するための要件となっています(※5、6)。
また、障害基礎年金および遺族基礎年金の保険料納付要件には、直近1年間に保険料の未納期間がないことで要件を満たす特例処置が設けられています。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害で障害基礎年金を受給する場合には、納付要件はありません。
【図3】
保険料が払えないのと、払わないでは大違い
20歳以上60歳未満の学生やフリーターなど国民年金の第1号被保険者は、国民年金保険料を直接納付する義務があること、3種類の基礎年金を受給するためには、それぞれの保険料納付要件を満たさねばならいことを見てきました。
したがって、保険料を意図的に、あるいは無意識で滞納していると、【表2】のとおりいずれの年金も受給することができません。一方、保険料の免除や猶予を受けることができれば、その期間は保険料納付要件として認められます。
【表2】
ただし、老齢基礎年金の年金額は、【図4】のとおり算定されますので、保険料の免除を受けた期間は減額されます。なお、学生納付特定および納付猶予の期間は、保険料を追納しない場合は年金額に反映されません。
【図4】
したがって、20歳から60歳までの全期間、保険料の全額を免除されたとしても、老齢基礎年金の満額の年金額の2分の1は受給することができます。また、障害年金と遺族年金については、満額の年金額を受給することができますので、未納と保険料の減免では、極めて大きな違いがあると言えるでしょう。
まとめ
国民年金制度には、老後の生活を保障する老齢年金ばかりではなく、現役時代にも利用できる障害年金と遺族年金があることを見てきました。そして、それらの年金を受給するためには、国民年金保険料を納めることが必要条件となっています。
したがって、経済的に保険料を支払うことが困難な場合は、保険料を滞納することなく、保険料の減免や猶予制度を利用しましょう。
[出典]
(※1)日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度」
(※2)日本年金機構「国民年金の加入と保険料のご案内」
(※3)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
(※4)日本年金機構「老齢年金ガイド(平成31年度版)」
(※5)日本年金機構「障害年金ガイド(平成31年度版)」
(※6)日本年金機構「遺族年金ガイド(平成31年度版)」
参照記事
「国民年金保険料を少しでも抑えたい」そんな人は前納と早割制度を活用しよう
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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