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4月から施行された「同一労働同一賃金」給料の男女差も改善するのか?

ファイナンシャルフィールド / 2020年5月14日 2時30分

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この4月に施行された「同一労働同一賃金」の主旨は、同じ職場で同じ仕事をする正規と非正規の従業員の間で待遇や賃金格差を無くそうというものです。   ところが、同じ正社員でもいまだに男女の賃金は格差があると言ってよいでしょう。この格差も新たな法律で解消されるのでしょうか?   今年新たに入社される方もそうではない方も、事実を正しく把握して今後のキャリアを考えてみましょう。  

年齢層別の男女の給与支給額比較

1986年の男女雇用機会均等法(以下、均等法)施行から今年で34年。その頃、均等法パイオニア世代として入社した女性も、今や役職定年を迎える年齢に差し掛かっています。彼女たちの歩んだ道程は、次世代にどのような影響を与えたのでしょうか。
 
以下の図で男女の平均給与額をみてみましょう。調査対象は非正規を含む会社員と役員です。50歳代は男女とも給与額が最大になりますが、格差も最大になっています。
 


 
30歳代前半で急激に差が広がる理由として、女性の非正規社員の割合が多いことが挙げられます。その背景には結婚・出産・育児での退職やキャリアの分断による昇格の遅れ、再就職時に短時間勤務やパートになる割合が多いことなどがあります。
 
初任給は同額でも、育児休職のブランクや、担う仕事の重みの違い等の要因で徐々に昇給・昇格に差が生じていくと考えられます。
 
正規と非正規の賃金格差是正は男女とも、まさに同一労働同一賃金の目指す根深い課題です。でも、性別でキャリアアップの選択肢が限られるのであれば、それは同一労働をする機会さえままならないといえます。残念ながら34年前からいまだに続く課題です。

過去からの男女の給与支給額比較

均等法施行以来、男女の給与額の差はどう経年変化してきたのでしょうか。次の図は今年3月末に発表された、厚生労働省のデータです(※2)
 


 
統計開始以来、月収は増え続けましたが、リーマンショック(H20)以降横ばいです。中でも女性の賃金は着実に伸びていることが見て取れます。男女間賃金格差(女性/男性)は74.3%で前年から1%縮まり、過去最小を更新しました。
 
とはいえ、まだ格差は大きいですね。例えば、スキル・経験が豊富で育児・介護や学び直しにより離職した方を、適切な報酬額で再雇用できれば、企業にとって良質な労働力確保につながるはずです。
 
筆者も、男性に比べてタフな仕事の機会を与えられず成長や昇進に不安がある、という女性の悩みや、片やハラスメントと言われるのが怖くて厳しい指導に尻込みする上司の声を聞いたことがあります。
 
機会均等の実現には、小さな職場単位で真剣に取り組む必要があり、時間が解決する問題ではないことがわかります。

女性に立ちはだかる雇用のハードル

女性雇用について職場はどう受け止めているのか、もう少し具体的に探ってみます。経済産業省が発表した調査報告書から、現場の本音がリアルに伝わります。これは、中部地域の中小製造業(おおむね従業員300名以下)が調査対象です(※1)
 
「女性の採用における課題や不安」の問いには、調査対象の各県合計で「任せる仕事内容がわからない」「社内の理解を得るのが難しい」が「その他」を除き12%でトップタイとなっており、「コミュニケーション能力不足」「更衣室・トイレなど女性用の場所が無い」といった回答も寄せられました。
 
また、「女性に期待する役割」に対しては、「複数部門の調整役(52%)」が最も多く「管理職としての活躍(32%)」「新事業の立ち上げ(4%)」を大きく上回ります。その他、「女性ならではの気配りや細やかさ」「事務・受付能力」などの回答がありました。
 
ものづくり現場主体という特性は考慮が必要ですが、他の業種でも程度の差はありますが同様の意識や戸惑いが、職場の土壌に染み付いているのではないでしょうか。
 
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)もきっと働いていることでしょう。女性の就業については、賃金のジェンダー格差が容易に埋まらないことが推測できます。
 
一方、今後さらに進む少子高齢化の中で、男女を問わず優秀な人材を確保する競争が激化していきます。
 
女性特有の事情でキャリアが途切れたり、就業できる領域・職種の選択肢が狭まらないよう努力を惜しまない。これが、持続的成長を続ける企業の条件のひとつになるでしょう。皆さんの会社はどうでしょうか。変わろうとしているでしょうか?
 
(出典)
※1 経済産業省中部経済産業局「ものづくり中小企業等の女性活躍に関するアンケート調査結果報告書」平成31年3月
※2 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」過去統計から、統計を取り始めた昭和51年と、61年、平成元年分を追記
 
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー

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