【おさらい】不動産投資には「レバレッジ効果」があるといわれるけど、どんなことなの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月19日 10時0分
新型コロナウイルス感染拡大問題で株式相場も激動しています。2008年9月に発生した「リーマン・ショック」にも匹敵するような「コロナショック」の相場下落局面を経て、先行きも不透明感に包まれているようです。
投資には、さまざまなリスクとリターンが
投資には、リターン(投資から得られる収益)とリスク(将来的な不確実性や変動要因)が背中合わせですが、株式投資は「ハイリスク・ハイリターン」の側面が強いことをコロナショックでも改めて実感させられます。
一方で「ローリスク・ローリターン」の代表といえば銀行預金ですが、金利は小数点以下のゼロを数えるのに目が疲れるような微小な水準。コロナショックへの経済対策の一環として世界的な金融緩和の流れが加速していますので、リターンがさらに水準低下することも予想されます。
不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」
このような中で、「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれるのが不動産投資です。利回りには幅がありますが、ひとケタ台の前半から後半くらいが中心。
ときにはふたケタ台が期待できるものも見られます。またリターンのもとは不動産を貸して得られる賃料であり、株価のように短期間で乱高下する性格ではないことから、リスクも中間的です。
また金額面では、投資対象の種類や規模にもよりますが、それなりにかかります。そのため資金調達の面では、自己資金に加えて借入金に頼るケースが多いのです。
不動産投資の「レバレッジ効果」とは
レバレッジ(leverage)は、英語で「てこ」(lever)の作用を意味します。つまり、小さな力や動きを大きなものに変える仕組みです。
そして不動産などの投資における「レバレッジ効果」とは、自己資本(自己資金)よりも大きな他人資本(借入金)を利用してトータルのリターンを高めることなのです。具体的な例で見てみましょう。
<前提>
◇投資不動産の表面利回り 年8%
◇借入金利 年3%
ケース【A】 価格1000万円(自己資金1000万円)
(資金調達)
・自己資金 1000万円
・借入金 0万円
(表面収益) 80万円 (1000万円×8%)
(借入金利) 0万円
(差引収益) 80万円
(自己資金に対する利回り) 8% (80万円÷1000万円)
ケース【B】 価格3500万円(自己資金1000万円+借入金2500万円)
(資金調達)
・自己資金 1000万円
・借入金 2500万円
(表面収益) 280万円 (3500万円×8%)
(借入金利) 75万円 (2500万円×3%)
(差引収益) 205万円 (280万円-75万円)
(自己資金に対する利回り) 20.5% (205万円÷1000万円)
【A】と【B】を比べると、自己資金はともに1000万円で表面利回りも同じ8%です。しかし表面収益の額は、【A】80万円から【B】280万円へと3.5倍になっています。
差引収益も、【B】では借入金利75万円(初年)を引いて205万円と、【A】の2.5倍以上。自己資金に対する利回りも、【A】の8%が【B】では20.5%と大きく増えているのです。
このように、借入金という「てこ」によって、自己資金1000万円だけの投資に比べて収益総額や自己資金に対する利回りが大きく増加することが、不動産投資の「レバレッジ効果」なのです。
デメリットもあります
もちろん、デメリットもあります。まず、入居者(テナント)が退去してしまう空室リスク。賃料の入金はないのに、固定資産税など(そしてマンションなどでは管理費や修繕積立金も)の保有経費がかかります。借入金があると、さらに金利や元本を返済するためのキャッシュも別に必要です。
また、借入金利が変動制だと大きく上昇局面になるリスクもあります。借入金利の額が増えると差引収益がその分だけ減っていきますが、借入金額が大きいと金利や元本の返済のためのキャッシュの一部を別に用意しなければならない事態にもなりかねません。
このように、借り入れまでして“背伸び”したことが“あだ”となりレバレッジが逆効果になってしまう現象は、「逆レバレッジ」(借入金利が上昇し、利回りを上回ってしまう状態)といわれます。
まとめ
現物の不動産投資は、金額が大きくなりがちです。借入金に頼るケースも多く、「レバレッジ効果」をセースルトークにして物件を売り込む業者も少なくありません。
しかし、無理をすると「ミドルリスク」のはずが借入金によって「ハイリスク」に転化してしまうことだってありえるのです。レバレッジを使うにしても、いろいろなシミュレーションを慎重におこなって、無理のない計画のもとで進める姿勢が必要です。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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