4月からどう変わった? トラブルになりがちな<敷金>のルール改正
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月21日 9時30分
2020年4月より改正民法が施行されました。今回の改正の目玉の一つとして、不動産賃貸の敷金に関するルールがあります。かねてから問題の多かった敷金ですが、民法改正によってどのように変わるのでしょうか。 今回は、アパートやマンションなど住居を賃貸する場合を想定して解説していきます。
そもそも敷金とは
これまで、不動産賃貸で当たり前のように利用されていた敷金という制度ですが、意外にも民法では敷金について規定する条文が存在しませんでした。それにより、敷金の定義が曖昧になり、トラブルが多く発生していました。
そこで、改正民法では、敷金について、家賃など賃貸借契約に基づいて発生する賃借人の賃貸人に対する金銭的な債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭とする、と明文化されました(民法622条1項参照)。
つまり、預り金や保証金といった名称であったとしても、家賃などを担保する目的で借主から交付される金銭であれば、それらは敷金となるのです。
敷金は、地域によって呼び方が異なり、実質的には敷金であるのに名称が異なるため敷金ではないとして、借主から不当にお金を請求される例があったため、明文化されるに至りました。
敷金は返還されることが原則
敷金は、賃貸借契約の終了後に返還されるというのが原則です。具体的には次のような場合、敷金から賃借人の債務を差し引き、残額があれば借主に返還される、と明文化されています(民法622条1項)。
(1)賃貸借が終了して目的物の返還を受けた
(2)賃借人が適法に賃借権を譲渡した
要は、部屋から退去後、家賃の未払いや、通常利用を超えるレベルでの損壊などがなければ、敷金は戻ってくるということです。
以前は、このような規定は明文化されていなかったのですが、敷金がまったく返ってこないという相談例が数多く寄せられていたため、改正民法によって明文化されました。実際、2019年には、敷金に関連するトラブルについて国民生活センターに8000件以上の相談が寄せられています(※1)。
なお、賃貸借契約では、貸主と借主合意の下、敷金の返還時期を賃借物の返還から1ヶ月後とするなど、合理的な範囲内で返還時期に異なった定めをすることは可能と解されています。
敷金が返ってくるのはあくまで残額のある場合
敷金は原則返ってくるものとはいっても、それはあくまでも賃貸借契約の終了後に残額のある場合です。契約中に家賃の支払いが滞っており、退去時に未払い分について清算をした敷金が残っていなければ、当然敷金は返ってきません。
なお、敷金は賃貸借契約の期間中であっても、貸主が家賃などを支払わない場合、貸主の意思でその債務の弁済に充てることができます。しかし、借主の側から「家賃の支払いを敷金から充当してくれ」というように請求することはできません(民法622条2項)。
民法改正によって敷金をめぐる賃貸借はどう変わる?
今回の民法改正によって追加された敷金についての内容は、すでにこれまでの裁判例などで確立されていたルールです。そのため、敷金のありかたが大幅に変化してしまうほどの影響はないと考えられます。
ただし、実際に民法の条文に明記されたことで、敷金はこれまで以上に厳格な判断と運用がなされることが想定されます。
まとめ
民法改正によって、敷金が民法の条文に定義されました。とはいえ、実生活では敷金の取り扱いが大きく変わることはありません。敷金は、すでにこれまで裁判例などによって確立されており、それを民法に反映させたものだからです。
しかしながら、依然として敷金について多くのトラブルが起きているというのも事実です。敷金についてトラブルや悩みを抱えている場合は、国民生活センターなどの専門機関に相談するとよいでしょう。
[出典]※1 独立行政法人国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」
執筆者:柘植輝
行政書士
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