3児の母「在宅勤務で自炊し支出が減った。正社員からパートに変えたほうが家計に余裕が生まれる?」
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月22日 8時30分
新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが多くなり、自分の働き方について考え直した女性は少なくないのではないでしょうか。 筆者は、ファイナンシャルプランナーとして子育て世代の方からさまざまな相談を受けますが、明美さん(仮名)からは、正社員からパートに変えたほうが家計に余裕が生まれそうだと相談を受けました。 明美さんは、小学校4年生と1年生、年中の3人のお子さんの母親です。今までは、仕事で忙し過ぎて子どもと向き合う時間がほとんどありませんでした。しかし、在宅ワークになり、少し時間に余裕ができたため、このまま仕事を続けるべきかどうか悩み始めたのです。
在宅ワークで支出が減り、子どもと過ごす時間が増えた
明美さんは、子どもと過ごす時間が増えたことで、その時間の貴重さを痛感するようになりました。他方で、やや割高な時短料理セットを買ったり、お惣菜を買って帰ったり、ランチは毎回外食だったのが自分で料理をするようになり、支出が減ったとも感じていました。
そのため、これをきっかけに正社員の仕事を辞めて、パートに変えたほうが家計に余裕が生まれるのではないかと考え始めたのです。
そこで、明美さんに、現時点で考えているパートになることで変化する項目を列挙していただきました。
・子どもの学童が不要になる 1万円/月
・延長保育が不要になる 5000円/月
・塾が不要になる(自分で教えるため) 3万円/月
・食費が減る(外食が少なくなるため) 2万円/月
このような理由から、パートになることで1ヶ月6万5000円分の支出が減ると考えたのです。
パートになることで、本当に家計に余裕が生まれる?
明美さんの現在の手取りは年間250万円です。これを年収100万円ほどのパートに変更して時間の余裕を作りたいということです。
まず、パートに変更することで、増える金額はパート代と配偶者控除によるご主人の節税分です。ご主人の年収から考えて、節税できる金額は所得税と住民税合わせて6万円ほどです。
そして、明美さん本人の年収100万円には所得税はかかりません。住民税は、地域によって異なりますが、明美さんの地域では非課税です。
社会保険料については、ご主人の扶養に入ることになるため、明美さん自身は支払う必要はありません。よって、パートに変更することで増えるお金は、パート代100万円とご主人の節税分6万円合計106万円です。
一方、正社員のままだと、先ほど列挙した項目分の金額6万5000円が余分にかかります。年換算すると78万円です。年間の手取り250万円から78万円を差し引くと、172万円です。
172万円-106万円=66万円なので、いくら生活費が減った気がすると思っても、正社員として働いたほうが66万円も収入は多いのです。しかも、これは現在の生活のことしか考えていません。
パートになると老後の年金は減ります。明美さんは現在35歳ですが、このまま今の年収で60歳まで正社員を続けた場合と、今後ずっと年収100万円で働いた場合と比べると、老後の年金は年間約35万円の差があると予想できます。
もし、20年年金をもらったとすると35万円×20年=700万円です。職業をキャリアダウンさせることは、今の生活はもちろん、老後の生活にも大きな影響を与えるのです。
さらに、パートになったからといって、塾で学んでいたことを明美さんがすべて教えられるかという疑問も残りますし、パートの年収で今後かかってくる3人分の教育費にどれだけ対応できるかという問題もあります。
明美さんは、在宅ワークで支出が減ったと考え、仕事をパートにしたほうが家計は良くなると思っていましたが、実際はそうでないことがわかり考え込んでしまいました。
しかし、子どもはあっという間に成長します。今の子どもと向き合えるのは今しかありません。子どもとの貴重な時間を優先したいと考える気持ちもわかります。
仕事を続けるという決断
明美さんは、この結果をもとに考え直しましたが、結局、仕事を続けることに決めました。なぜなら、仕事を続けたとしても子どもと向き合う時間がないわけではなく、10年後、15年後、子どもが成長したときのことを考えると、子どものために、お金が必要だと考えたからです。
子どもと過ごす時間を優先するため仕事を減らすのか、子どもとの時間は減るけれど仕事を目いっぱいする生活を送るか、どちらを選択するにしてもご本人が決めたことであればその決断を尊重したいと思います。
ただ、今のお財布状態だけでなく、子どもが成長したとき、そして自分が老後を迎えたとき、何十年先のことも考えて決断していただきたいと思います。
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ
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