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数年前相続放棄すると言っていた兄が法定相続分を主張。親はすでに認知症、どうなる?

ファイナンシャルフィールド / 2020年6月2日 8時30分

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90歳の父親と同居している長女からのご相談。   3年前まで長男は、「親の面倒を見られないから、相続放棄する」と話していた。ところが今年の正月、「法定相続分はもらう」と言い出しました。すでに父親は認知症で遺言ができる状態ではありません。遺産がもらえると思い、貯金も使って介護もしていたのに。   人の気持ちは変わるもの。万が一を想定した争族対策が必要であり、それは元気なうちにしかできないのです。

相続放棄は口約束ではできない

契約は口頭でも有効ですが、後で「言った」「言わない」の争いが起こらないように、大切な契約(約束)は書面でします。
 
しかし相続放棄は、相続発生前にはできません。書面にしても無効です。相続発生後に家庭裁判所に申し立てて初めて有効になります。相談の例では、長男の口頭での相続放棄の意志表示は無効です。
 

遺言できない

認知症が進むと、遺言はできません。認知症と診断された場合でも、初期であれば遺言ができる場合もあります。遺言を公正証書遺言とすれば、公証人が遺言する能力が残っているか判断しますので、争族の予防になります。
 
残念ながら相談者の父親には遺言ができる能力は無いようです。元気なうちに、「長女に全財産を相続させる」旨の遺言を作っていれば、長女が遺産を取得することができました。
 
万が一、長男が「遺留分侵害額請求」をした場合には、遺産の4分の1のお金を支払うことで相続は決着となります。長女に現金が無い場合には、死亡保険金の受取人を長女にするなど、いくらでも対策はできたのです。

相続人の協議

遺言が無い場合には、相続人の協議により遺産を分割します。民法の法定相続分で分割する必要はありません。全相続人の合意があれば、1人が全財産を取得することもできます。
 
合意ができなければ遺産分割ができません。当事者で解決できない場合には、家庭裁判所に調停や審判をお願いすることができます。家庭裁判所は法定相続分を基本に分割方法を判断することになります。

相続財産の調整

民法では、共同相続人間の平等を図るため、生前贈与などで特別の受益を受けた場合や、被相続人の財産の維持、増加に特別の寄与がある場合、これを考慮することにしています。
 
例)遺産1000万円  法定相続人 A(子)、B(子) 
Aの特別受益 300万円 / Bの寄与分 400万円
 
相続財産=1000万円+300万円‐400万円=900万円
Aの相続分=900万円×1/2-300万円=150万円
Bの相続分=900万円×1/2+400万円=850万円

特別受益と寄与分の評価

特別受益は、贈与された金額や不動産の評価額により確定できますが寄与分の評価はなかなか困難です。
 
寄与分とされる行為は
・被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
・被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした

とされています。(民法904条の2)
 
家庭裁判所では、相続人間の実質的な平等を図るため、財産の価格その他一切の事情を考慮して定めるとされています。
 
相談者の場合、介護などは寄与分になる可能性があります。遺産分割協議の際、寄与分を主張できるように、証明となる書類など準備をしておくことが必要と考えられます。

元気なうちの対策

親が元気なうちは兄弟の仲が良くても、相続では合意が難しいのです。財産の分割方法を遺言や民事信託で決めておくと、子としては受け入れやすく遺産分割協議も不要です。
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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