新型コロナウイルス問題でイベントが中止になった! 前払いしたチケット代でアーティストやアスリートを応援できて、税金面でのメリットも受けられる仕組みとは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年6月7日 3時0分
新型コロナウイルス感染拡大問題によって、ヒトが多数集まるような施設の一時閉鎖も相次ぎました。 そうした施設で予定されていた展示、公演、コンサート、スポーツなどのイベントも次々と中止や延期となっています。
次々と中止となるイベントへの支援策とは
こうしたイベントのチケットを前払いで購入していた場合、払い戻しを受けられるケースが多数ですが、イベントを実施するはずだった団体等の経済的ダメージは甚大です。
予定していた売上収入がなくなり、前払いされていたチケット代払い戻しの資金や手間も必要です。イベント準備に投じていた資金は戻ってきませんし、次のイベント実施の体制を維持するための経費や人件費等も負担しなければなりません。
そんな団体等の窮状に対して、[前払いしたチケット代の払い戻しを受けない]形で支援した場合に税の優遇を受けられる措置が法律で決まりました。「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(※1)。とても長い名称ですが、この法案は今年4月27日に国会提出され、4月30日に成立し同日付で公布・施行されています。
この5条に上記の税優遇の特例が定められています。ちなみに4条は、[特別定額給付金(1人10万円)をもらっても、税金は非課税にする]特例です。
支援策の内容は
この支援策の所管は文部科学省の文化庁やスポーツ庁になりますが、概要は末尾の関係サイト(※2)内の(※3)や(※4)などで次のように説明されています。
<制度の骨子>
新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止や延期をした文化芸術・スポーツイベンについて、チケットの払い戻しを受けない(放棄する)場合、その金額分を「寄附」したとみなして税優遇(寄附金控除)が受けられる
<手続きの流れ>
(1)主催者の申請に基づき、文化庁・スポーツ庁が対象イベントを指定
(2)前払者が対象イベントの主催者に払い戻しを受けないことを連絡
(3)主催者は、「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」を前払者に発行
(4)前払者が(3)の証明書を添付して確定申告すると、特定寄附金として「寄附金控除」の税優遇を受けられる
対象となるチケット代の上限額は年間ごとに合計20万円で、対象となるイベントは(※4)で解説され、今後両庁が順次具体的に公表する運びです。なお特定寄附金の寄附金控除は、次のいずれかによる税優遇となります。
(ア)所得控除
[寄附金の合計額-2000円]を<所得>から控除する
(その年の所得金額×40%が上限)
(イ)税額控除
[(寄附金の合計額-2000円)×40%]を<所得税額>から控除する
(その年の所得税額×25%が上限)
(ア)は所得金額に対して寄附金額が大きい場合に減税効果大です。一方(イ)は所得税率に関係なく所得税額から直接控除されるので、多くの人にとって(ア)よりも減税効果が大きいといわれています。
先ほどの(※3)でも[1万円のチケット代を払い戻さずに「寄附」すると最大4000円の減税!]と説明されています。上記(イ)の税額控除[(1万円-2000円)×40%=3200円]に住民税の税額控除[(1万円-2000円)×10%= 800円]を足した試算結果です。
「寄附金控除」と聞くとものものしい印象も受けますが、(控除のやり方や計算式に違いはあるものの)ふるさと納税制度もこの仕組みを利用しています。なお今回の税優遇について、次の点にも注意が必要です。
◇「-2000円」は、他の寄附金も含めた年間寄附総額に対して1回だけ適用される。
◇住民税の優遇は、自治体によって取り扱いが異なる場合がある。
◇確定申告が必要となるため、ふるさと納税を利用している場合に「ワンストップ特例制度」は適用されない(ふるさと納税分の控除も確定申告で手続きする)。
まとめ
「サードプレイス」という言葉があります。家が「ファーストプレイス」、職場が「セカンドプレイス」で、家でも職場でもない「第三の居場所」を指すものと理解されています。
文化芸術やスポーツなどのイベントは、物理的にも精神的にも「サードプレイス」のかなめのひとつといえるでしょう。
しかし、そこに出掛けるのはしばらく制約が続くものと推測されます。余暇や趣味の将来のためにも、新しい税制を活用してアーティストやアスリートを応援することを検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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