いまさら聞けない不動産投資の基本(11) 不動産投資で目指すべき規模

ファイナンシャルフィールド / 2020年7月22日 12時0分

写真

しばしば、不動産投資のカリスマとして「数億円の資産を築いた」「数千万円の家賃収入を得るようになった」という人の記事を見かけます。確かにそういう方はいます。   本人が登場することも珍しくありません。しかしそこに至るまでには、さまざまな道のりがあります。サラリーマンが片手間でできるようなことではありません。   不動産投資には、目的によって適正な規模があるように感じます。今回は不動産投資を行う場合に、目指すべき規模について考えます。

不動産投資で目指すべき規模感

日本では低金利時代が20年以上続いています。金融市場で大きな利回りが期待できないことから、投資用マネーの一部が投資用不動産市場に流れ込み、売り出されている投資用物件の利回りも低くなります。
 
ローンが残っている間は家賃収入から返済するほか、税金や保険などの支払いもあるので、1、2戸の保有ではそんなに大きな手残りは望めないと思います。
 
将来の年金を補完するためや、生命保険の代わりとして考えるならば、せいぜい年間500万〜1000万円程度の家賃収入が得られれば良いでしょう。場所や物件にもよりますが、ワンルームマンションなら5戸から10戸もあれば十分でしょう。
 
しかし、冒頭のカリスマ大家さんのように「大家業だけで生活できるようにしたい」と考えた場合には、それなりの覚悟が必要です。
 
その他にも、相続税対策として行う場合もあるでしょう。その場合も投資対象を十分に吟味する必要があることはもちろん、相続時の分割方法についても検討が必要です。
 
昔から地主さんや大家業を営んでいる方は別にして、この10年程度の間に不動産投資を始めた方、これから始めようとする方は、その目的を明確にしておく必要があります。

不動産投資を始める時期によって目指せる規模は違う

何を目的にするかも重要ですが、投資を始める時期によっても、目指すことができる規模感は違うと考えられます。
 
今は、バブルの頃のように不動産価格が毎年確実に上がるような経済状況ではないため、キャピタルゲインは狙いにくくなりました。冒頭のカリスマのような規模に達した背景には、始めたタイミングが良かったという側面もあります。
 
サラリーマンなどが、投資用不動産として物件を取得するようになったのは、今から20年ほど前から。
 
この頃、バブルがはじけ痛手を負った人もいましたが、不動産価格が下がり、個人向けアパートローンも今ほど定着していませんでした。個人向け投資用不動産の市場も大きくなかったこともあり、金融機関の融資審査も厳格でした。
 
バブルを経験し、不動産投資にもリスクがあることを痛感した人も多かったことから、今よりも利回りの良い物件が多く、融資する金融機関が見つかり、ある程度自己資金を投入して不動産投資を始めた場合の収益は大きいはずです。
 
投資は多くの場合、リスクを取って初期に始めたほうがリターンも大きくなります。
 
すでに成熟期に入っている投資用不動産市場は、多くの場合10年前よりも効率は悪くなっていると考えたほうがいいでしょう。今から始めてカリスマ大家さんになるのは、かなり難しいのではないでしょうか。

不動産投資の「事業的規模」とは

多くの不動産投資家が考えるのは「将来に資産を残す」「着実に収益を上げる」ということでしょう。そのためには投資効率を考える必要があります。
 
個人で不動産投資を行う場合、「事業的規模」に達しているかどうかで節税策の幅が異なります。不動産を保有していると税金がかかります。税金をいかに合法的に小さく抑えるかが、投資効率に影響します。
 
不動産投資を個人で行う場合には、1物件であっても「事業者」となる心構えが必要だと以前のコラムでもお伝えしました。しかし、税務上の扱いは少し異なります。
 
国税庁のホームページにも「不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上『事業』と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します」と書かれています。
 
あいまいな表現ですが、一般的には「5棟10室基準」といわれ、マンションやアパート等は貸与できる独立した室数がおおむね10室以上、戸建て賃貸のような物件の貸付けはおおむね5棟以上である場合に、「事業的規模」として扱われます。
 
この事業的規模に達している場合、いくつかのメリットを受けることができます。受けられるメリットは、以下のようなものがあります。
 
(1)賃貸用固定資産の取り壊し、除却などの資産損失は、事業として行われている場合には、全額を必要経費に算入できる。それ以外の場合に必要経費に算入できるのは、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額が限度。
 
(2)賃貸料等の回収不能による貸倒損失は、事業として行われている場合、回収不能となった年分の必要経費に算入できる。それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直す。
 
(3)青色申告の事業専従者給与または白色申告の事業専従者控除は、事業として行われている場合のみ適用。
 
(4)青色申告特別控除は、事業として行われている場合は、正規の簿記の原則による記帳を行うなど一定の要件を満たせば、最高65万円の控除を適用できる。それ以外の場合の控除額は最高10万円。
 
専従者給与(家族などを専従者として給与を支払い経費として処理する)や、最高65万円の所得控除は大きなメリットといえます。
 
ただし、この節税メリットを受けるために事業的規模を目指すというのは、本末転倒だといえるでしょう。目的を設定し、それに見合った投資規模を考えるほうが重要です。

まとめ

投資全般にいえることですが、どの程度の投資を行い、どの程度のリターンを目指すのかを設定することは重要です。また、投資には「出口戦略」も必要になります。金融商品であれば容易に売買できますが、不動産投資ではそうはいきません。まず長期投資で行う覚悟が必要です。
 
また、あまりに短期間に次々と不動産を購入するのもリスクがあります。一般的に投資は「分散投資」が望ましいといわれます。「分散」は投資対象もそうですが、投資する時期も分散しているほうが安全です。
 
設定した目的に合った投資対象として不動産投資が向いているか。将来的な目的をどこに置くのかを明確にしておくべきです。
 
冒頭の「数億円の資産を築いた」「数千万円の家賃収入を得るようになった」という方の記事の多くは、投資用不動産を販売する会社や、金融機関の記事であることからもわかるように、投資に興味がある人に不動産を販売して手数料などの利益を稼ぐか、金利の得られる融資を勧めるためのものであることは念頭に置いておきましょう。
 
(参照)
国税庁タックスアンサー「No.1373 事業としての不動産貸付けとの区分」
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

関連記事

不動産投資をする際の重要ポイント
不動産投資の「5棟10室基準」ってどんな基準なのか解説
いまさら聞けない不動産投資の基本(1) 不動産投資の歴史
 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング