生命保険金の受け取りに税金が? どんな税金がいくらかかるのか
ファイナンシャルフィールド / 2020年9月9日 10時0分
医療保険や生命保険の給付金や保険金は、傷病による治療・入院や死亡・高度障害時などに備えるための大切なお金です。
しかし、生命保険については、保険契約や保険料を誰が負担するかによって、所得税・贈与税・相続税が課税されてしまう場合があります。万が一の際に多額の課税が発生してしまうと、遺族のための資金準備に支障が生じてしまうおそれがあります。
今回は生命保険の保険金にかかる税金の仕組みと、所得税・贈与税・相続税といった税金の種類ごとの課税額の違いについて解説していきます。
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生命保険の契約者(保険料の負担者)・被保険者・受取人の関係
生命保険の契約では、契約者(保険料の負担者)・被保険者・受取人の設定が重要となっています。これは、保険契約の保障内容を定めるだけではなく、保険金に課税される税金の種類を左右する点でも重要です。まず、次の各用語の意味をよく整理しておきましょう。
【契約者とは】
保険会社と保険契約を結び、保険料の支払いと保険金の請求や契約内容を変更する権利を有する方となります。契約上は「契約者=保険料負担者」となりますが、税制上は保険契約の内容にかかわらず、保険料を実際に負担している方が契約者として見なされるため注意が必要です。
【被保険者とは】
保険契約の対象となる方となります。生命保険では、被保険者が死亡や高度障害などの一定の状態となった場合が保険金の支払われる原因となります。被保険者は契約者と同一の人がなることもできますが、異なる場合は被保険者となる方の同意が必要です。
【受取人とは】
保険金を実際に受け取ることができる方となります。誰でも受取人に指定できるわけではなく、原則として配偶者と2親等以内の血族に限られるため、例えば、結婚によって親戚となった姻族を受取人とすることはできません。
もっとも、近年は、同性のパートナーや入籍していない内縁関係の方も受取人として指定することができる保険商品も増えてきています。
保険金が課税対象になるケースって?
医療保険の入院・手術の給付金などの身体の状態に起因して支払われる保険金や給付金には税金は生じませんが、次に示すような特定の保険金については、課税が行われるケースがあります。
【死亡保険金】
被保険者の死亡によって生じる死亡保険金に対しては、保険契約の内容などに基づいて、所得税・贈与税・相続税のいずれかが課税されることになります。
しかし、余命6ヶ月以内と宣告された場合に、生前に死亡保険金を受け取ることができる「リビングニーズ特約」による保険金は非課税となります。
【満期保険金・解約返戻金】
生命保険の契約期間が満了したことにより受け取ることができる満期保険金や、途中解約によって支払われる解約返戻金については、契約者(保険料の負担者)と満期保険金・解約返戻金の受取人が同じ場合は所得税の対象となります。
満期保険金・解約返戻金を一括で受け取った場合は一時所得となり、年金方式で分割して受け取った場合は公的年金以外の雑所得として課税されます。また、契約者と受取人が異なる場合は、贈与税の対象として課税されることになります。
【年金保険金】
年金保険による給付金も契約者(保険料の負担者)と受取人が同一であるか否かによって課税される税金の種類が変化します。契約者と年金の受取人が同一の場合は、公的年金以外の雑所得として所得税が課税されます。
契約者と受取人が異なる場合は、年金の給付事由が満たされた時点で贈与税が発生し、2年目以降の給付金については、公的年金以外の雑所得として所得税が課税されます。
【収入保障保険の死亡保険金】
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害に陥った場合に保険契約で定められた保険金を一定期間にわたり、年金または一時金で受け取ることができる保険です。支払われる保険金が逓減することから、通常の死亡保険よりも割安な保険料で利用できるメリットがあります。
収入保障保険においても、死亡保険金を一時金で受け取ると通常の生命保険と同様に、保険契約の内容などに基づき所得税・贈与税・相続税のいずれかが課税され、年金形式で受け取る場合は、年金保険と同様の課税が行われます。
大きな違いとしては、高度障害に基づき保険金が支払われる場合は課税の対象とはならないといった点にあります。
契約者・被保険者・受取人の関係でかかる税金が変わる
死亡保険金に対する税金は、表1に示すように契約者(保険料の負担者)・被保険者・受取人の関係によって所得税、贈与税、相続税と異なります。
表1.死亡保険金と税金について
契約者 (保険料の負担者) |
被保険者 | 受取人 | 税金 |
---|---|---|---|
A | B | A | 所得税 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | C | 贈与税 |
出典:国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」
【契約者と受取人が同一の場合】
妻が被保険者の生命保険で、夫が契約者と保険金の受取人という生命保険は、契約者と受取人が同一で被保険者のみが異なります。この場合の死亡保険金は所得税が課税され、保険金を一括で受け取る場合は一時所得、年金方式で受け取る場合は雑所得となります。
【契約者と受取人が異なる場合】
夫が自らを被保険者とした生命保険の契約を行い、妻を保険金の受取人にする場合は、契約者と被保険者が同一で受取人が異なることになります。この場合の死亡保険金は相続税が課税されますが、生命保険の非課税限度額の適用を受けることができるため、税負担が小さくできる可能性があります。
【契約者と被保険者と受取人が異なる場合】
妻を被保険者とする生命保険の契約を夫が行い、保険金の受取人を子どもにするといった場合、契約者・被保険者・受取人全てが異なるため、死亡保険金は贈与税の対象として課税されます。
所得税なら受け取った保険金から支払った保険料を差し引くことができるなど、さまざまな控除を利用できるのですが、贈与税の場合は110万円の基礎控除のみのうえ、税率も高いため、課税額が大きくなるおそれがあります。
課税対象にならない保険金や給付金とは
所得税法30条1号の規定によると、生命保険や医療保険などで身体への障害に起因して支払いを受ける保険金や給付金は非課税とされています。
課税対象とならない保険金・給付金には、主に入院・手術・通院給付金や、がん給付金、先進医療特約に基づく給付金などの医療関係の給付金、介護保険金や生命保険の余命宣告時に受け取ることができるリビングニーズ特約の保険金などが含まれます。
相続税額のシミュレーション
生命保険の死亡保険金は、遺された家族の生活を支える大切なお金となります。また、相続税額の算定において、法定相続人の人数に応じた非課税限度枠を利用することができるため税制面で有利といった特徴があります。
今回は死亡保険金の税負担が贈与税と相続税でどのように変化するかを、以下の条件でシミュレーションしてみたいと思います。
<シミュレーション条件>
家族構成:夫・妻・未成年の子ども2人の4人家族
死亡保険金:6000万円
その他相続財産:4000万円
法定相続分である配偶者50%、子ども25%ずつで遺産の分割を行うものとした場合。
【相続税:契約者と被保険者が夫、受取人が妻や子どもの場合など】
相続税の基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人3人=4800万円
保険金の非課税限度枠:500万円×法定相続人3人=1500万円
・相続財産の価額
非課税限度枠超過額:死亡保険金6000万円-非課税限度枠1500万円=4500万円
相続財産の価額:その他相続財産4000万円+非課税限度枠超過額4500万円=8500万円
・相続税額の算出
課税価格:相続財産の価額8500万円-基礎控除額4800万円=3700万円
妻の相続税額3700万円×法定相続分50%=1850万円×税率15%-控除額50万円=227万5000円
子どもの相続税額3700万円×法定相続分25%=925万円×税率10%=92万5000円×2人
法定相続人3名の合計の相続税課税額は227万5000円+92万5000円×2人=412万5000円となります。しかし今回の場合、妻にかかる相続税は、相続財産の価額が最大1億6000万円まで非課税とすることができる「配偶者の税額の軽減」制度を利用することが可能です。
今回のシミュレーション結果において、本制度を適用した場合、妻の相続財産の価額は3700万円であるため相続税を非課税とすることができるため、支払うべき相続税額は子ども2人の分の185万円となります。
【贈与税:契約者が夫、被保険者が妻、受取人が子どもの場合など】
この場合は、相続財産は相続税、死亡保険金は贈与税として税額が計算されることになります。今回は子ども2人がそれぞれ3000万円ずつ死亡保険金を受け取った場合で試算を行います。
・相続財産の価額
その他財産4000万円-基礎控除4800万円=控除超過のため相続税の課税なし
・子ども1人当たりの贈与税(一般贈与財産)の算出
子ども1人当たりの死亡保険金3000万円-基礎控除110万円=2890万円
3000万円以下の場合の贈与税(一般贈与財産)の税率50% 控除額250万円
2890万円×50%-250万円=約1195万円
相続財産としての死亡保険金は、遺族の生活を支える大切な資金と見なされ、税負担が小さくなるよう配慮されています。相続税の税負担を和らげるには相続財産として課税を受けることと、保険金の非課税限度枠をフル活用することがポイントといえるでしょう。
まとめ
生命保険の死亡保険金は、契約内容や受け取り方で税金の種類が異なり、控除額の違いから税額も大きく変わります。また、税制上は保険料の負担者を契約者として見なすことから、生命保険料控除を最大限に生かすようにしましょう。
死亡保険金で想定外の税負担を背負わぬように、契約内容と税金の関係をしっかりと把握しておきましょう。
[出典]国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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