株価が上がると、投資信託ってどうなるの?教科書通りに行かない投資信託の不思議
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月21日 9時0分
確定拠出年金制度や各種NISA(少額投資非課税制度)を活用し、投資信託で老後の資金を増やしていこうという方が年々増えているようです。
過去の相談事例に基づくと、これらについては制度の内容や運用商品、運用方法についての質問が主なものになりますが、実践的な質問として「相場の変動要因」について聞かれることがあります。
例えば、「株式市場が上がったら、購入しようとしている投資信託はどうなるのか」といった質問はもとより、「金利が上がると株式市場はどうなるのか」や「景気が悪くなると金利はどうなるのか」などといった相場全体における変動要因の関係性が気になる方もいるようです。
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株が上がったら、株式型の投資信託ってどうなるの?
投資信託で運用する場合、まずオーソドックスにこれから運用しようとしている投資信託がどうなるかが気になると思いますが、株式市場との関係性で見ると、一般的に次のような傾向があると考えられています。
※筆者作成
投資信託は、「株式型」・「債券型」・「バランス型」と大きく3つのタイプに分けられますが、簡単に説明すると、株式型は株式が多く組み入れられている投資信託、債券型は国債などの債券が多く組み入れられている投資信託、バランス型は株式や国債の他いろいろな金融商品などが組み入れられている投資信託となります。
株式が上昇すると、株式型投資信託も上昇し、株式が下落すると、株式型投資信託も下落するというのは比較的分かりやすいと思います。
株式型投資信託には株式が多く組み入れられているため同じような動きをするというのはなんとなくイメージできることでしょう。
株が上がったら、債券型の投資信託ってどうなるの?
しかし、株式が上昇すると、債券型投資信託は下落し、株式が下落すると、債券型投資信託は上昇するという動きはイメージしにくいかもしれません。
債券は国債や社債と呼ばれる借用証書を指します。
例えば、国債の場合、国が国民や金融機関などの貸し手からお金を借りるときに、国債という借用証書を発行しお金を借ります。
このとき、お金の貸し手からすると、元金のみで利息が支払われないならお金を貸そうとは思いません。このため、国債には利回りと呼ばれる金利に相当する部分があります。そして満期が来れば、元金と金利に基づいた利息を含めた金額が手元に戻ってきます。
お金の貸し手が増えれば国債を求める人が増えるので、国債の値段(価格)は上昇します。このとき、国債の利回り(金利)は下落します。これは、たくさんの人がお金を貸してくれるため、わざわざ高い金利(利回り)を付ける必要がなくなるからです。
一方、お金の貸し手が減れば国債を買う人は減るため、国債の価格は下落します。このとき、国債の利回り(金利)は上昇します。これは、国としてはできるだけたくさんの人からお金を借りたいという動機が働くため、金利(利回り)を上げてまでお金を借りようとするからです。
〇国債価格と利回り(金利)の関係
※筆者作成
このように国債価格の動きによって、その利回りは反対の動きをするわけですが、国債の利回りは市中の金利に大きな影響を与えるため、端的にいうと、金利が下落すると、「企業や家計のコスト負担が減るため景気が良くなる」⇒「株価上昇」、逆に金利が上昇すると、「企業や家計のコスト負担が増えるため景気が悪くなる」⇒「株価下落」といった連想につながりやすくなります。
つまり、株価が上昇するときは、債券型投資信託は下落し、株価が下落するときは、債券型投資信託は上昇するといった関係性が、一応、成り立ちます。
一応、としたのは「株式上昇:債券型投資信託下落」、「株式下落:債券型投資信託上昇」という関係が、実をいうと教科書どおりにはいかないケースが多々あるからです。
これは、特にリーマンショック後、顕著に表れていますが、投資家が万が一のリスクを避け、株式を買いながら国債などの債券も同時に買う傾向が広がっているからです。
つまり、株価が上がっても、国債価格は下がらず、似たような動きを示す傾向があり、株式上昇:債券型投資信託上昇、株式下落:債券型投資信託下落という関係性も成り立っているため、この点については注意するようにしましょう。
株が上がったら、バランス型の投資信託ってどうなるの?
最後に3つ目のバランス型投資信託と株式の関係性です。
バランス型投資信託は、株式や債券、その他の金融商品がいろいろとごちゃまぜに入っているのが特徴ですが、この目的は投資信託内でリスクを分散するためです。
このことから、バランス型投資信託は株式の動きに比較的鈍感に動くように設計される傾向があります。
つまり、株価が上昇しても、下落しても、バランス型投資信託はあまり影響を受けず、中立的な動きを示すという意味ですが、これは教科書的な話で、実際はそのようなバランス型投資信託は少なく、どちらかというと、株式市場にある程度連動するようなものが多くなっているのが実情です。
これは単純に、バランス型投資信託に組み入れる株式を増やしていることが理由ですが、結論をいうと、多くのバランス型投資信託は、株価が上昇すると、その基準価額は上がりやすい(株価が下落すると、基準価額も下落しやすい)と考えておいた方がいいかもしれません。
まとめ
確定拠出年金制度や各種NISA(少額投資非課税制度)の下、投資教育や金銭教育といった啓発・教育活動が行われています。これらは投資を行う上でとても重要な活動ですが、おおよそ初心者向けの教育であるため、教科書の内容と実際の運用との間に大きな開きが生まれているような気がします。
昔から投資は「習うより慣れよ」といわれますが、知識のインプットと実践によるアウトプットを通じ、経験を積みながら少しずつレベルアップしていくようにしましょう。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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