相続税対策のために知っておきたい、「生命保険財産完全防衛額」という考え方
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月21日 10時30分
被相続人(=亡くなった人)を分母、相続税を支払った相続人を分子として計算すると、8.5%の人に相続税が課税されています(2018年(※1))。
ちなみに、相続税を納めるのは相続財産(=相続時精算課税制度の贈与財産を含む。以下同じ)を受け取った人のうち、基礎控除の額を超えた場合です。ですので、亡くなった人が相続税を納めることはないのですが、統計では被相続人を分母に計算しています。
「ウチの場合は、どうなんだろう?」という方は、事前に相続税の課税が見込まれるのか否かのシミュレーションをしてみるのはいかがでしょう。そして、もし相続が起きた時に相続税の課税が見込まれるのであれば、事前に相続税の対策をしておく必要があるかもしれません。
生命保険財産完全防衛額という考え方
相続税の課税が見込まれる方で、「受け取った相続財産から相続税を納めたくない」という方には、どのような対策ができるのでしょうか?
「生命保険財産完全防衛額」という考え方があります。
例として、以下のような前提条件を想定します。
<想定する前提条件>
■相続人は配偶者と子ども1人
■相続財産の額は3億円
■相続財産はそれぞれ2分の1ずつ、つまり法定相続分を相続する
配偶者は税額軽減の制度を適用することができ、配偶者が相続した遺産のうち課税対象となるものの額が1億6000万円までであれば、配偶者に相続税が課税されません。つまり、今回のケースで課税されるのは子どもだけです。
ここで、「生命保険財産完全防衛額」の確保を目的に、相続財産とは別に、新たに保険金4075万円の生命保険を契約することにします。その理由は以下の計算でご説明します。
<相続財産完全防衛額の計算>
まず、相続財産の額に受け取った生命保険金を加え、生命保険金の非課税額を差し引きます。
相続財産3億円 + 生命保険金額4075万円(※注) − 生命保険金の非課税額(500万円 × 相続人2名) = 3億3075万円
次に、相続税の基礎控除額を差し引きます。
3億3075万円 − 基礎控除(3000万円 + 600万円 × 2名) = 2億8875円
2億8875円のうち、相続税が課税されるのは子どもだけという想定ですので、
2億8875円 × 1/2 = 1億4437.5万円
続いて、相続税の納税額の計算です。
1億4437.5万円 × 40% − 1700万円 = 4075万円
(相続税の税率は、国税庁「No.4155 相続税の税率」(※2)を参照)
この相続税の納税額4075万円は、(※注)の生命保険金4075万円と同額です。相続財産3億円の相続税を納税するとしても、死亡保険金で充当できるので、相続財産と同等の価値が手元に残るということです。つまり、相続財産を全額受け取ったことと同じことになります。
これが、「生命保険財産完全防衛額」という考え方です。
「生命保険財産完全防衛額」の留意点
ただし、留意点があります。
1つ目は、生命保険の保険料です。保険金を受け取るためには、当然ながら保険料を支払わなくてはならず、それを負担しなくてはなりません。
2つ目は、相続財産の変化です。財産に不動産や株式等が含まれる場合、時間の経過とともにその評価額が上下する可能性があります。もしかしたら、将来相続税の税制や税率が変わるかもしれません。つまり、相続財産の価値が変化すれば、「生命保険財産完全防衛額」も変わってしまうということです。
まとめに代えて
「生命保険財産完全防衛額」の確保を目的に生命保険を契約する場合は、前述の留意点を考慮した上で検討してください。また、相続税対策は他に、生前贈与や法人による死亡退職金、弔慰金という選択肢などもあります。さまざまな状況や選択肢を踏まえて、相続税対策を行いましょう。
(※1)生命保険文化センター「相続税を払う人はどれくらいいる?」
(※2)国税庁「No.4155 相続税の税率」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
関連記事
親が亡くなったとき、すぐにしたほうがいい手続きって?いつまでにどんな手続きが必要?
相続放棄をしても死亡保険金は受け取れるが、そこには思わぬ落とし穴も。
子供や孫にお金を渡したい!相続税を抑えて贈与できる4つの方法とは
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
貯蓄「1000万円」には手を付けず、年金のみで暮らす予定です。なるべく多くの財産を孫に残すにはどうすればよいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月23日 2時0分
-
20年以上連れ添った夫婦は〈自宅の贈与〉が2,000万円まで非課税になるお得な制度があるが…安易に使うと損をするワケ【税理士が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月18日 11時15分
-
「生命保険の死亡保険金」を受け取ったが…相続税が<かかるケース>と<かからないケース>を税理士が解説
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月16日 9時15分
-
先日帰省した際、母が「相続税で税金を持っていかれたくない」と、毎年少しずつ渡してくれることになりました。親子なら「贈与税」はかかりませんか? 少しずつなら問題ないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月6日 2時10分
-
「500万円の掛け軸」を親から譲り受けることに。これって「税金」はかかる?
ファイナンシャルフィールド / 2024年3月29日 4時0分
ランキング
-
1流行りの調理法も実はNG? 炊飯器が壊れやすくなる使い方5選【家電のプロが解説】
オールアバウト / 2024年4月23日 21時15分
-
2Wi-Fiルーターの寿命ってどれくらい? 買い替えを検討するべきサインはありますか?【専門家が解説】
オールアバウト / 2024年4月22日 21時25分
-
3納豆のタレやワサビなどの余った小袋調味料は、どう処分すればいい? 正しい捨て方と活用法
オールアバウト / 2024年4月23日 20時15分
-
4「しまむらグループ大創業祭」を開催、豊富な商品をお得に - 4月24日よりスタート
マイナビニュース / 2024年4月24日 10時37分
-
5家のネット回線が遅いです。中継機かメッシュWi-Fiの導入を検討しているのですが、どちらがいいですか?
オールアバウト / 2024年4月23日 21時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください