「敵に回してはいけない」任天堂法務とユニバーサル・スタジオの因縁
Finasee / 2023年5月19日 17時0分
Finasee(フィナシー)
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任天堂の人気キャラクター「マリオ」を題材とした映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が大ヒットしています。全世界の興行収入は、2023年4月5日の公開から現在までに12億ドル(約1600億円)を突破しました。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は日本でも4月28日に公開され、現在も大人気です。今後はますます任天堂に注目が集まりそうですね。ここで任天堂の歴史を振り返ってみましょう。
花札メーカーから世界的ゲーム機メーカーへ転身任天堂は花札やトランプといった玩具メーカーとして誕生したことは有名です。1889年に花札の製造を開始し、1902年には日本で初めてトランプの製造に着手しました。その後、ゲーム機を作らないまま1962年には上場を果たしていることから、祖業でも比較的成功していたと考えられます。
その後、初のテレビゲーム機として1977年に「テレビゲーム15」と「テレビゲーム6」を発売すると、本格的にゲーム業界へ参入しました。1983年の「ファミリーコンピュータ」や1989年の「ゲームボーイ」など、ヒット商品を連発し業界を席巻します。これらのゲームソフトからは「マリオ」や「ポケモン」といった魅力的なキャラクターが多数誕生し、任天堂の重要な財産となりました。
近年では2017年3月に発売された「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」が世界的にヒットしています。累計販売数量は2022年末で1億2000万台を超えており、任天堂のゲーム機で最大のヒット作となりました。
【地域別Nintendo Switch累計販売数量】
出所:任天堂 ゲーム専用機販売実績
【主なゲーム機の累計販売数量(2022年末時点)】
ファミリーコンピュータ:6191万台
スーパーファミコン:4910万台
ゲームボーイ:1億1869万台
Wii:1億163万台
ニンテンドー3DS:7594万台
Nintendo Switch:1億2255万台
ちなみに任天堂本社は2000年から京都市南区へ移転していますが、京都市東山区には設立当初のビルが現在でも残っています。この旧本社ビルは2022年4月にホテルへ生まれ変わりました。任天堂誕生の歴史に触れてみたい人は、一度泊まってみてはいかがでしょうか。
実はユニバーサル・スタジオに訴えられたことがある任天堂がアメリカに進出した1982年、任天堂は危機的な状況に追い込まれます。任天堂が前年に販売していた「ドンキーコング」が映画「キングコング」に酷似しているとし、制作したユニバーサル・スタジオが訴訟を起こしたのです。内容は苛烈で、ドンキーコングで得た利益を10日以内に支払うよう求めるものでした。
任天堂は支払いを拒み、ユニバーサル・スタジオとは訴訟に発展します。結果としてユニバーサル・スタジオには商標権がなく訴える権利そのものがないことが発覚し、任天堂が勝訴しました。ちなみに、このときの任天堂側の弁護士がカービィ氏であり、任天堂の人気キャラクター「星のカービィ」と偶然同じだったというエピソードが残っています。
その後も任天堂は知財に関する裁判で何度も勝利を収めていることから、「任天堂法務部を敵に回してはいけない」とうわさされるようになりました。
●ティアリングサーガ裁判
「ファイアーエムブレム」に酷似しているとし、任天堂らが「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」の開発会社や販売会社を訴えた裁判。任天堂の主張が認められ、7600万円以上の賠償が命じられた。
●ニンテンドーDS用マジコン裁判
ゲーム機「ニンテンドーDS」で起動させる「マジコン」を輸入販売していた業者らを任天堂が訴えた裁判。マジコンはゲームソフトを違法にコピーする機能があった。業者らには9500万円以上の損害賠償が命じられた。
●3DS裸眼立体視特許裁判
ゲーム機「ニンテンドー3DS」の裸眼で立体視できる機能が特許を侵害しているとし、任天堂が米国で提訴された裁判。一時は3020万ドル(約36億円)の支払いが命じられたものの、差し戻し審で一転して特許の侵害はなかったとの判断を勝ち取り、任天堂が勝訴した。
●マリカー裁判
「マリオ」のキャラクターの衣装と公道用カートを客に貸し出す営業を行っていたレンタル会社「マリカー」を任天堂が訴えた裁判。任天堂が勝訴し、5000万円の損害賠償が認められたほか、営業や広告に「マリカー」を使うことが禁じられた。
任天堂の創業家である山内家は「Yamauchi-No.10 Family Office(YFO)」というファミリーオフィスを設立しています。
ファミリーオフィスとは一般に、財を成した一族の資産を管理・運用する組織のことを指します。不特定多数から資金を集めて運用するファンドと異なり、基本的には特定の資産家一族の資産のみを運用します。
YFOは任天堂を世界的企業へ押し上げた山内溥(やまうち・ひろし)氏の孫が2020年に設立しました。故山内氏から引き継いだ資産を中心に運用し、以下9つの領域へ投資していくとしています。
【YFOの投資領域】
出所:Yamauchi-No.10 Family Office 投資部門
最近では、YFOによる東洋建設株式への投資が話題を集めました。東洋建設はマリコン(海のゼネコン)の代表格で、洋上風力発電といった海洋エネルギー事業で強みを持っています。このポテンシャルに注目し、YFOが同社へ投資したとみられています。
YFOは2022年3月から4月にかけ東洋建設株式を買い集め、同社に対して株式の非公開化を目的としたTOB(公開買い付け)の実施を提案しました。YFOはあくまで友好的な買収としていますが、東洋建設はYFOによる同社株式の買い集めが違法であると主張しており、両陣営は対立しています。今後どのような展開になるのか、要注目です。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
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