離婚して半年で養育費が不払いに…母親が子の将来を守るために実行した「起死回生の一手」
Finasee / 2024年9月12日 17時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
離婚時のトラブルとして度々話題になる養育費の未払い問題。今回紹介する晴美さんも夫の正平さんと養育費について大きくもめた。養育費として平均額より低い月3万円を希望した晴美さんに対し、正平さんは「月2万円が限度だ」と渋った。その後は半年ほどかかって養育費の額は3万円で合意に至った。
2人の離婚の原因は正平さんのお金の浪費癖だったこともあり、晴美さんは将来的に未払いが起きるのではないかと心配になった。そこで養育費の取り決めを公正証書で作成することを提案。公正証書が強力な契約書であること、改ざんや変造などが容易でないことを説明した。
すると正平さんは、「じゃあ、お前が金額を上げたいと考えても簡単には上げられないんだな?」と請求金額が一定という部分に納得したらしく、2人は公正証書を作成するに至った。
●前編:【浪費家で貯金ゼロの夫との離婚を決意…女性が‟養育費不払い対策”のためにした「とっておきの準備」】
離婚後半年で滞りだした養育費の支払い離婚してから半年。案の定というべきか、養育費の支払いが滞りだした。
最初こそ支払いに遅れがあっても翌月上旬には支払いがあったので、晴美さんも目をつぶっていた。だがしかし、それが2カ月単位、3カ月単位と長くなってくるとさすがに我慢も限界に達する。
晴美さんは正平さんに対して裁判上での手続きを用いて強制執行することを決意した。後日、正平さんを呼び出しこう伝える。
「すぐに差し押さえ手続きをしてあなたのお金を差し押さえるから」
これに対して正平さんは必死に反論する。
「意味が分からない。俺は金がないんだぞ?」
そこで晴美さんは正平さんに1つひとつ丁寧に説明する。通常差し押さえをするには裁判で勝訴判決を得て、そこからの手続きとなるわけだが、公正証書にはそこをすっ飛ばしていきなり差し押さえが実行できることを正平さんにも分かるように説明した。
なぜ晴美さんがそのような説明をできるかと言えば、公正証書の作成にあたって私が用意した原案と説明を、晴美さんがしっかり理解していたからである。
公正証書の作成は公証役場という特殊な機関で行う必要がある。私が代理人となると専門家の関与がバレ、事がうまく運ばなくなる可能性がある。そこで、公正証書の作成は晴美さんと正平さんの2人で行ってもらった。その分、公正証書についての知識や作成の流れ、その後の対応についても一通り説明した経緯があった。
公正証書の作成は専門家が関与しなくても可能ではあるが、専門的な手続きである分、失敗したり後悔したりすることにもつながりかねない。そこで晴美さんは私にこっそり依頼をして来たというわけだ。
公正証書は給与からも差し押さえができる「俺は金がない」。この正平さんの言葉は真実だ。事実、彼の口座にはお金がほとんど入っていない。養育費の回収は到底不可能な状態だ。
通常であれば相手に貯金がない以上、養育費の支払いを受けられないとあきらめるかもしれない。だがしかし、公正証書を用いて差し押さえをすることで相手が勤務先から受け取る給与を差し押さえられる。
養育費は差し押さえ可能な金額も大きく、最大で手取り額の2分の1の金額を上限を対象とすることができる。加えて一度差し押さえができればその後の差し押さえは継続して続く。つまり、今後は養育費の支払い漏れが起こりづらくなる。
晴美さんは今回、当事務所と提携している弁護士と相談の上、勤務先からの給料を差し押さえることにした。
手続きにかかった期間はおよそ2カ月。差し押さえには一定の手続きを踏むことが必要であり時間がかかることも多いのだが、きちんと手続きすれば相当高い確率で養育費の回収が可能になる。
現在の晴美さん親子の状況は…先日、晴美さんが夏のギフトをもって当事務所へ挨拶にいらした。30分ほど話を聞いてみると、現在は差し押さえの効果もあり毎月滞りなく支払いを受けられているようだ。
晴美さんに話を聞くと公正証書について知ったのは過去に私の執筆した記事がきっかけだったようで「柘植さんの記事に出会って公正証書を作らなければ今頃離婚すらできなかったか、離婚をしても養育費は泣き寝入りでした!」と感謝の言葉をいただいた。
お子さんもすくすく育ち、今はサッカーに熱中しているという。練習にかかる費用も養育費から支払われており、養育費の存在が大きく役立っている。
公正証書といえば一般的な感覚からは程遠く、何を大げさなと思えるだろう。ただ、養育費には支払いが滞ったり、相手と音信不通となり支払いが断絶されたりすることもある。
離婚協議書だけ作ればいいという声もあるが、公正証書と異なり差し押さえ手続きの前に裁判手続きをしなければならないため、差し押さえ時間とお金を要することもある。場合によっては協議書が無効として扱われて空振りに終わるかもしれない。
離婚において養育費を定めるのであれば公正証書を作成すべきだ。そうすることで自身だけでなく子の将来を守ることにもつながるのだから。
幸い晴美さんは公正証書で離婚協議書を作成することで最悪の未来を回避できた。その一方で、一歩間違えれば晴美さんも養育費の支払いが受けられず、愛しいわが子に満足にサッカーをさせられない可能性があったことから、決して目をそらしてはならないだろう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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