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資生堂は純利益99.9%減、株価も大幅下落…中国人の「爆買い→節約志向」が企業にもたらした“大きすぎる影響”

Finasee / 2024年9月23日 18時30分

資生堂は純利益99.9%減、株価も大幅下落…中国人の「爆買い→節約志向」が企業にもたらした“大きすぎる影響”

Finasee(フィナシー)

資生堂、純利益99.9%減・株価急落の衝撃

8月8、9日の2日間で、資生堂の株価が急落しました。

7日終値は4510円。8日は700円安の3810円、8日は3174円までの安値を付けた後、3350円で取引を終えました。終値ベースで考えると、この2日間で1160円も下げたことになります。

そして今も株価はさえない状況です。9月5日には一時3055円まで下げました。そこから若干、上がってはいるものの、9月17日の終値は3338円です。

資生堂株がここまで売られた理由は、2024年1~6月期(2024年上半期)累計の純利益が、前年同期比で99.9%減の1500万円まで大きく落ち込んだからです。

ここまで純利益が落ち込んだ最大の理由は、日本事業における早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したためなので、この費用を吸収した後の業績回復も期待できるところですが、やや懸念されるのが中国事業です。

2024年1~6月期の連結決算における地域別売上高は、日本が前年同期比で13%増、欧州が12%増になったものの、中国は7%減、トラベルリテールが23%減となりました。

特に中国は、2023年第3四半期の前年同期比が9%減、第4四半期が同21%減です。また、空港や市中免税店における化粧品やフレグランスの販売を示すトラベルリテールが苦戦していますが、これは中国海南島や韓国での中国人旅行者の消費意欲の低下が、売上の大幅な落ち込みにつながっていると考えられます。

LVMH、バーバリー…中国の消費に頼る企業には、大きな打撃が

中国事業における苦戦は、資生堂に限った話ではありません。欧州の高級ブランドも厳しい状況に直面しています。それを証拠に、欧州ハイブランドの株価は、今年に入ってから低迷を続けています。

たとえばイギリスのバーバリー・グループの株価は、2023年4月1日につけた2609ポンドをピークに下落し、2024年9月17日には605.20ポンドまで下落しています。また、さまざまな高級ブランドを擁することで知られているLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの株価も、2023年4月21日につけた901.10ユーロから下落し、2024年9月17日時点では607.70ユーロまで調整しています。

また、中国における消費低迷はハイブランドに限った話ではありません。ユニクロブランドを展開しているファーストリテイリングの業績にも影響を及ぼしています。2024年第3四半期(2024年3~5月期)の海外ユニクロ事業の地域別業績を見ると、中国大陸と香港は減収かつ大幅な減益となりました。もちろんファーストリテイリングの場合、他のセグメントの業績が堅調なので、第3四半期における中国大陸・香港の減収・減益を十分にカバーでき、全体の連結業績は悪くありませんが、中国依存度の高い企業にとって、中国の個人消費低迷は、業績面に少なからぬ影響を及ぼしています。

PMI、失業率…中国の景気指標は軒並み“不調”

中国国家統計局が8月31日に発表した、8月の購買担当者景気指数(PMI)は49.1で、景気判断の分かれ目になる50を下回りました。しかも、7月の同指数は49.4だったので、さらに悪化しています。また、小売売上高の前年同月比をみても、2017年11月までは10%超を維持していたのが、2024年8月は2.1%まで低下しました。明らかに個人消費は落ち込んでいます。

個人消費が落ち込んでいる原因のひとつは、不動産価格の下落と考えられます。少し古いデータになりますが、2019年の中国人民銀行の調査によると、中国の家計が保有する資産の約60%は不動産でした。これはバブル崩壊後の日本も経験したことですが、不動産価格が下落することによる「逆資産効果」によって、個人消費は冷え込みます。

さらに、中国国民にとってダイレクトに影響するのが、失業率の高さです。中国国家統計局が今年2月に発表した公報によると、2023年を通じた年間の失業率平均は、5.2%でした。加えて何よりも問題なのは、若年層の失業率が極めて高いことです。

2023年6月に国家統計局が発表した、16~24歳までの失業率は21.3%でした。この数字がことのほか反響を集めてしまい、国家統計局は調査方法を修正するという理由で、しばらく公表を差し控えることになりました。

そして2024年1月から公表が再開されたのですが、2024年7月の数字は17.1%となり、6月の13.2%から悪化しています。失業率が高まれば、節約志向になり、個人消費は落ち込まざるを得ません。資生堂やファーストリテイリング、さらに欧州のハイブランドなど、消費者相手の商売が落ち込むのは、当然のことなのです。

人気の「半導体」関連にも中国依存度の高い企業が

また、一般消費者相手ではなく、BtoBの企業でも、中国依存度の高い企業は厳しい状況にあります。特に半導体関連では、地政学リスクの影響もあり、株式市場ではそのリスクが嫌気されています。

半導体は、スマートフォンや各種家電製品など民生品だけでなく、戦闘機やミサイル、ドローンなどの軍事品にも多用されています。そのため、米中対立のような国家間の緊張が高まっている現状において、半導体などのハイテク関連製品は、安全保障上の問題から輸出規制がかかることもあります。実際、米国は自国半導体産業の強化を目的にして、最先端半導体や半導体製造装置、設計ソフトなどに至るまで、中国への輸出を禁じる対中輸出規制を実施していますし、同様のことを日本など同盟国にも求めています。

これを受けて、日本政府も高度な半導体製造装置23品目を対象にした輸出規制を行っています。

半導体関連で中国売上比率の高い企業には、どのようなところがあるのでしょうか。

ブイ・テクノロジー(7717)は、スマートフォンや薄型テレビに用いられるフラットパネルディスプレイ製造装置の開発会社で、2018年からはウエハー研磨装置や検査装置など半導体製造装置関連の事業も展開していますが、その対中国の売上高比率が62%もあり、2024年3月期の連結売上は前期比で13.4%減、連結経常利益は前期比で34.59%減となっています。

また、TDK(6762)も中国依存度の高い企業のひとつです。生産額でグループ企業全体の約59%、連結売上の50%超が中国からもたらされています。2024年3月期決算の連結売上高は3.53%減となりました。

その他、チップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)の村田製作所(6981)、半導体製造装置のフェローテック・ホールディングス(6890)、同じく半導体製造装置の芝浦メカトロニクス(6590)なども、中国依存度の高い半導体関連企業として知られています。この手の中国関連企業の株式に投資する際は、地政学リスクも考慮に入れて判断を下すことをお勧めします。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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