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「どうしてそこまで言えるのだろうと…」将来の義実家は弁護士一族、モンスター義母を憤慨させた「嫁の致命的な一言」

Finasee / 2024年11月21日 17時0分

「どうしてそこまで言えるのだろうと…」将来の義実家は弁護士一族、モンスター義母を憤慨させた「嫁の致命的な一言」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

保育士の望海(30歳)は、弁護士家系の裕福な家庭に嫁ぐことになった。次男坊の大樹はごく普通のサラリーマンだが、結婚のあいさつに向かう望海は緊張していた。

義母はワインが好きだと聞いていたので、ちょうど解禁日が重なったボージョレ・ヌーボーを買っていく。しかし望海は明らかに歓迎されておらず、保育士と弁護士の年収差などについて嫌みを言われる。

手土産のボージョレ・ヌーボーも、作られたばかりのワインなんて飲めない。ビンテージじゃなきゃダメだと突き返されてしまう。

●前編:「そんな収入でよく結婚しようと思ったわね」結婚のあいさつで遭遇した弁護士一族の「仰天の価値観」

どうせ味の良しあしなんて分からないでしょうし

固まる望海の代わりにワインを受け取ったのは大樹だった。

「そういう言い方はないと思うけどね」

大樹は瑠璃子を一見して冷たく言い放ち、てきぱきとワインを袋に戻し、望海にほほ笑みかける。

「これは帰ってから飲もうか。俺たちの結婚を祝うにはぴったりだよ。今年のは特に出来が良いらしいし」

しかし、望海は何も返事ができなかった。笑っている大樹の瞳の奥が全く笑っていなかったからだ。

「そうね。私たちじゃなくて、あなたたちのほうが楽しめると思うわよ。どうせ味の良しあしなんて分からないでしょうし」

大樹は瑠璃子の嫌みを聞き、笑顔で返す。

「言えてるね。母さんたちにもビンテージのワインがお似合いだよ。年代とかプレミアとかそんなものでバカみたいな値段がついたものを味も分からず飲んでいるんだから。ものを外側でしか判断できない母さんにはぴったりだ」

大樹の嫌みに、瑠璃子は厳しい視線を向ける。

「……ずいぶんと偉そうになったわね」

「偉そうとかじゃないから。そうやって偉いとか偉くないとか、肩書とか年収とか、上っ面でしか人やものを見れない母さんたちには、何言っても分かんないだろうけど」

「司法試験に落ちてすねるのは分かるけど、そうやって人を落とすような考え方をしてると、自分が成長できなくなるわよ」

瑠璃子からきつい言葉をかけられても、大樹は全く気にしてないようだった。

「確かにあのときはつらかったよ。家族みんなから、司法試験に合格しなかったら人間じゃないと洗脳されていたからね。でも、大学を卒業して1人暮らしをするようになって、いろいろな経験をして分かったんだよ。人は肩書ではなく、それ以外にもたくさん見るべきところがあるってね」

瑠璃子は口を手で押さえて、肩を揺らす。

「そういうのって、負け犬の遠ぼえって言うんじゃないの? 競争に負けた人たちが傷をなめ合っているように見えるわよ?」

「あの、お義母(かあ)さんは、司法試験、合格したわけではないんですよね……?」

望海は思わず瑠璃子に質問をしていた。瑠璃子はその瞬間、眉根をつり上げる。しかし語気は荒らげず、静かな怒りを望海に向ける。

「……だから何? 何か文句があるの?」

「いえ、文句ではありませんけど、どうしてそこまで言えるのだろうと……」

「私は大樹のことを心配して言ってるんだから、部外者は黙ってて!」

瑠璃子に怒鳴られ望海は口を閉じる。なぜか隣にいる大樹が少しだけ笑ったような顔をしていた。

「俺たちは確かにエリートじゃない。そんで父さんたちは立派なエリートだよ。でもさ、それだけで父さんたちが幸せだと思わないよ。家族全員ギスギスしてるしさ。俺はあんたら3人と確かに仲は良くなかったよ。でもさ、3人は仲良くやれているの? そんな風には全然見えないけどね」

瑠璃子は怒りを静めるためにコーヒーに口を付ける。

「……何が言いたいのよ?」

「金とか、世間体とか、そんなことばっか気にして、大事なこと何も見えてないだろって話」

そう言うと、大樹はワインの入った袋を手に取って立ち上がる。

「望海、帰ろう。もう俺たちのやるべきことは終わったよ」

「え……?」

驚く望海に大樹は優しくほほ笑みかける。

「元々、俺と他の家族の関係は終わっていたんだよ。でも後からゴチャゴチャ言われたくなくて、取りあえず結婚の報告をしに来ただけだから」

「え? 報告?」

瑠璃子が思わず聞き返していた。

「そうだよ。あんたたちの許可なんてそもそも必要としてないから。ただ、生んでここまで育ててくれた相手への礼儀として、報告に来ただけ」

瑠璃子は大樹に鋭い視線を向ける。

「それを、お父さんに対しても言える?」

「言えるに決まってるだろ。ていうか、俺の結婚のあいさつよりも仕事を優先するような人間が俺に何を言ってくるって言うんだよ。さあ、望海、帰ろう」

大樹の言葉を聞き、望海はゆっくりと立ち上がる。あっけに取られて座ったままの瑠璃子に頭を下げ、そのまま並んで部屋を後にした。

どんな高級品にも勝るもの

「ごめんね、嫌な思いをさせちゃってさ」

駐車場に戻り、車に乗った大樹は、助手席の望海に向かって頭を下げた。

「ううん、でも、これで良かったの?」

「まあ、最悪こうなるかもってのはちょっと思ってたし、言いたいことも言えてむしろ清々したよ。望海の切り返しも最高だったしね」

大樹はそう言って、うつむきながら思い出し笑いをした。

「確かに母さんは司法試験に合格したわけじゃないのに、弁護士以外は人間じゃないみたいな顔で偉そうに語ってたもんな~」

「いや、単純に不思議に思っただけで、別に揚げ足を取ろうとか思ってたわけじゃないんだけど……」

望海が弁明すると、大樹は声を出して笑った。

「いいんだよ、勘違いしてる人には厳しく言ってあげないとな」

「……まあでも、何だか大樹がダメ人間みたいな言われ方してて、それが悔しかったってのもあるかな」

望海が本音を吐露すると、大樹は目尻を落として見つめてきた。

「ありがとう。望海が俺の味方でいてくれたから、今までの思いを吐き出せたんだと思う」

「それなら良かった」

大樹が車のエンジンをかける。シートベルトを締めながら、望海はふとした思いつきを口にする。

「そうだ。家に帰る前にスーパーに寄ろうよ。ワインに合うつまみを買って帰ろ」

「お、いいね。チーズ? 生ハム?」

「せっかくだから全部買おう。疲れちゃったし、今日くらいはぜいたくしよう」

「おっけー。こりゃ楽しみだ」

車はゆっくりと走りだす。

きっとスーパーで買えるようなチーズも生ハムも瑠璃子にとっては庶民くさい安物なんだろう。だけど大樹と囲むなら、それは望海にとってどんな高級品にも勝るぜいたくなんだと思った。

 

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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