「原子力3倍宣言」日本も参加 再評価の機運高まる原子力発電
Finasee / 2024年12月13日 7時0分
Finasee(フィナシー)
株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
***T:12月7日、島根原発2号機が再稼働し、2025年1月にも営業運転を再開する予定です。今年は10月に女川原発2号機が運転を再開し、柏崎刈羽原発の6号機・7号機も再稼働に向けて準備が進められています。原子力発電にとっては大きな動きがあった1年となりましたね。
神様:現在、北海道の泊原発や静岡県の浜岡原発などでも審査が進めてられています。安全性が認められれば、これらも再稼働に向けて準備が進められるでしょう。
T:毎月の電気代も値上がりしていますし、政府は電力需給のひっ迫やエネルギー安全保障の観点から原子力発電の再稼働を進めています。安全性には最大限の注意を払った上での再稼働となり、今後さらに原子力発電への期待が高まっていくと見て良いでしょうか。
神様:原子力発電への期待の高まりは、世界的な流れと言って良いでしょう。原発は発電時にCO2を排出しないことから、温室効果ガス排出量削減の手段として重要視されています。2023年に開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、パリ協定で掲げられた目標である「気温上昇を2℃より十分下方に抑え、1.5℃に抑える努力を継続すること、そのために今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロとすること」に対して、初めて進捗状況が確認されました。その結果、「世界の気温上昇を1.5度に抑える」という目標までに隔たりがあること、さらなる行動と支援が必要であることが判明しています。
T:要するに、これまでの努力が足りないということが強調されたわけですね。
神様:このまま何もしなければ、2℃の気温上昇は早々に達成されてしまうとの報告もあります。その中で、COP28では公式文書で初めて原発が炭素排出量削減にとって重要なアプローチであることが記載されました。日本を含む22カ国(現在は25カ国)が、「2050年までに、2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」という、いわゆる「原子力3倍宣言」を発表しました。国際エネルギー機関(IEA)も、2050年カーボンニュートラルに向け、原子力発電の新設や投資額を増やすニーズが高まると分析しています。
T:世界的に原発への再評価の機運が高まっているのですね。日本は特に化石燃料を使った発電が多いイメージがありますが、今後の電源構成比率を変えるためにも原発は貴重な戦力と考えられますね。
神様:主要各国の電源構成の比較を見ると、日本は化石燃料を使った発電の割合が多く、一方で原発による発電は割合が少ないことがわかります。2022年の日本の火力発電の比率は73%と高く、2030年目標ではそれを41%程度まで縮小することとしています。原子力は2022年でわずか6%であり、2030年目標ではそれを20~22%程度まで引き上げることとしています。一方で、ドイツを除き先進国各国では原発は10%以上の割合です。
T:ドイツは確か、2023年に「脱原発」を実現し、再生可能エネルギーを拡大し電力確保にあてる政策を実施したのでしたね。思い切った政策だと思います。
神様:ドイツの政策がどのように評価されるか、今後の動向を見守りましょう。日本を始めとした多くの国では、原発はエネルギー自給率向上に寄与する重要なエネルギー源として位置づけられています。再生可能エネルギーによる電源確保は、出力が変動するために電力需給バランスの調整が難しいデメリットがありますが、原発はそれを補うことにも役立ちます。現実的に日本の巨大な電力を確保するためには、原発が必要であることは明らかでしょう。
T:今夏にもお話がありましたが、日本の電力需要の見通しを見ると、2023年から2024年あたりを底に2033年度あたりまで「右肩上がりの増加」に変化するのでしたね( 第403話 電力需要、減少から拡大へ 「エネルギー基本計画」の行方に注目 )。社会のデジタル化が進展し、電力需要が拡大していく中での安定的な電源の確保にとっても原発は重要ということですね。
神様:安全性を向上させた次世代型原発の開発も活発化しています。軽水炉をベースに、新しい技術を導入した新型炉が中心となり、地震などの自然災害やテロへの対策が強化されています。これら「次世代革新炉」の開発には日本の企業が深く関わっています。実運転までたどり着くのは2030年代から2040年代の予定とまだ先ではありますが、国内外でビジネスチャンスの拡大が期待されます。今後の動向に注目しましょう。
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