石破政権目標の「最低賃金1500円」、本当に実現できるのか? アルバイトや企業の本音は
Finasee / 2024年12月13日 18時0分
Finasee(フィナシー)
「生活が苦しい」 最低賃金1500円を望む人が8割超
今回は転職サービスを提供するマイナビによるアルバイト従事者473人・企業の担当者863人を対象にした調査を参考にする。アルバイト従事者にとって最低賃金が1500円へ引き上げられれば歓迎されそうなものだが、実際はどうなのだろうか。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」調査によれば、最低賃金1500円を「実現してほしい派」(=「実現してほしい」「どちらかと言えば実現してほしい」と回答した人)は83.1%に上った。やはり肯定的に捉えている人が多数を占めているようだ。具体的に理由を挙げていく。
「物価が上がっているから」(女性50代)、「生活が安定するから」(男性20代)、など最近の物価高騰による厳しい生活を挙げる人がいた。また、「仕事内容が大変だから」(女性20代)、といった具合に仕事の大変さと比較して賃金が割に合わないことに不満をもつ人も。
一方で「実現しなくてもいい派」(=「実現しなくてもいい」「どちらかと言えば実現しなくてもいい」と回答した人)が16.9%と一定数存在。こちらはどんな理由からなのだろうか。いくつか見ていこう。
「扶養内で働くので年収は変わらないから」(女性50代)と、103万円の壁でも話題になっている扶養控除を挙げる人がいた。また、「求められることが増えそうだから」(女性30代)、といった具合にお金よりも気楽に働くことを優先したい人も。
さらに一人当たりの単価が上がれば人員を減らす企業も出てくる可能性があることから、「採用率が下がるため」(10代男性)、といった声もあった。
「現状と乖離が大きすぎる」 実現可能性に疑問をもつ人が約半数最低賃金1500円を支持するアルバイト従事者が多かったが、実現可能性についてはどう考えているのだろうか。調査によれば、「実現しないと思う」と回答した人が47.6%と半数近くに上った。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」一方で企業側は最低賃金1500円の実現可能性をどう考えているのだろうか。アルバイト従事者とギャップがあるのか気になるところだ。調査結果では、「できないと思う」(=「できないと思う」「どちらかと言えばできなと思う」と回答した人)は56.3%に上った。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」引き上げができない理由について具体的にコメントを拾ってみると、「人件費に押されて会社の業績が悪化すると思うから」(製造・50~300人未満)、「中小企業は無理がある」(飲食・宿泊・10~50人未満)、など業績が伴わない賃上げによる企業への悪影響を懸念する声も。
特に、一般的に物価高騰による価格転嫁が難しいと言われる中小企業における賃上げの難しさを指摘する人もいた。
一方で賃上げできる理由としては、「パートさんは無くてはならない存在なので辞められると困る」(製造・10~50人未満)、「出来なければ淘汰されるから」(商社・50~300人未満)、など、昨今の人手不足倒産の高まりを受けて、人材確保が企業にとっても重要な経営課題になっていることがうかがえる。
最低賃金が上がっても仕事は大変にならない?仮に最低賃金1500円が実現した場合、企業としてはどんなことに懸念があるのだろうか。調査によれば、「人件費の増加による経営圧迫」と回答した企業が52.7%と最多。「価格転嫁した際の価格競争力低下」が29.2%と続く。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」企業が人件費全体に割けるお金が変わらない場合、アルバイトの時給単価が上がれば、その分だけより多く働いてもらうか、人員数を削減するしかない。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」しかし調査だと、1人当たりの労働時間や人員数(人員体制)については現状から「変えない」と回答した企業がそれぞれ68.3%(労働時間)、64.9%(人員体制)と多数を占めた。
時給が上がると仕事も大変になると心配する人もいるだろうが、調査からはそうした企業は少ないようだ。
人件費が増えれば当然、そのお金をどこかから調達してこなければならない。企業として何か対策は考えているのだろうか。調査によれば、「価格転嫁・値上げ」と回答した企業が37.0%と最も多かった。
出所:マイナビ 「最低賃金1,500円引き上げに関する意識調査(アルバイト就業者・企業)」たしかに売上を増やせればいいだろうが、「設備投資削減」が24.9%に上るなど、他の支出にしわ寄せがいく可能性もあるだろう。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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