“ガラパゴス戦術”でなかった「3-4-2-1」 PSG、神戸、名古屋が同時採用で流行の予感?

Football ZONE web / 2018年11月9日 19時55分

■CLナポリ戦でPSGが採用、“ミシャ方式”とは異なるスタイル

 スマートフォンが出現しても、しばらくは従来の携帯電話は使われていた。日本製の携帯電話は高度に多機能だったのだが、やがて「ガラパゴス携帯」、いわゆる“ガラケー”と呼ばれるようになる。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌)がサンフレッチェ広島で可変式の3-4-2-1を始めた時は、このシステムを使っているチームは世界でもほとんどなかった。やがてこれがスタンダードになるのか、それともJリーグ限定の“ガラパゴス戦術”になるのか、当時は判然としなかったものだ。

 最近までは、やはりあれは日本独自のガラパゴス的進化だったのではないかと思っていた。ビルドアップの時に形を変えるのはヨーロッパでは当たり前になっているので、その点ではミシャ方式は先をいっていたのかもしれない。だが、ミシャ方式が世界のスタンダードになることはなかった。

 ところが、もしかしたらようやくヨーロッパがミシャ方式を採用するかもしれない流れになっている。

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第4節、パリ・サンジェルマン(PSG)はナポリを相手に3-4-2-1をぶつけた。ミシャ式の可変型というより、J2でよく見る形に近い。

 第3節のホームゲームでナポリに試合を支配されて2-2と辛うじて引き分けたせいか、今回のアウェーでは少し守備を重視したのだろう。とはいえ、守備的な試合をしたわけではなく、攻守にわたって5レーンを埋めてしまえという狙いのようだ。

 ミシャ方式の可変型とは違って、各ポジションが大きく変化することはない。ネイマールとアンヘル・ディ・マリアはそれぞれハーフスペースにいて、基本的に同じレーンを上下動。二人のボランチもそのまま、3バックも左右には動くが形のうえで変化はない。ただ、両サイドのフアン・ベルナト、トーマス・ムニエの上下動の距離が非常に長い。攻守に5レーンを埋め続けるには、この両サイドの運動量がカギだった。

 CLが行われたのと同じ日(11月6日)、未消化だったJ1第28節が行われている。セレッソ大阪と名古屋グランパスの試合では、名古屋がPSGと同じ機能の3-4-2-1を採用していた。3日前のヴィッセル神戸戦の後半もこの形である。



コンサドーレ札幌のペトロヴィッチ監督【写真:Getty Images】

■“ミシャ方式”はガラパゴスではなく先見の明だったか

 なぜ名古屋がこのシステムになったかというと、神戸がアンドレス・イニエスタとルーカス・ポドルスキをハーフスペースに置いた3-4-2-1だったからだ。前半は神戸に支配された。マッチアップのズレとイニエスタ、ポドルスキの能力によって後手に回っていた。そこで後半は噛み合わせたら、逆に名古屋がゲームを支配する展開に変わっている。

 5レーンを埋めてしまえば、マッチアップのズレは起こらない。3日後のC大阪戦でも人選は違えど、同じ3-4-2-1。レーンを埋めてしまうと、C大阪は攻撃のアイデアを出せずに上手く攻略できなかった。

 PSG、神戸、名古屋の3-4-2-1はミシャ方式の形の変化による優位性を狙ったものではなく、攻撃ではハーフスペースの有効活用、守備ではスペースを埋めてしまうことを主眼としている。CLとJ1で同時進行的に3-4-2-1という結論になっているのが面白かった。

 最近は一部で、ガラケー復活の兆しがあるそうだ。一周回って新しいという感じなのだろうか。3-4-2-1もミシャ方式そのままではないにしても、ビルドアップ時の変化やハーフスペースの活用という点で共通点はある。ガラパゴスではなく、先見の明というべきなのだろう。 


(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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