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チームに浸透している“ヨーロッパ基準” J1連覇の神戸に感じた“バランスの良さ”【前園真聖コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月13日 19時10分

■前園真聖が見て感じた神戸の強さの要因は…

 2024年のJ1リーグは神戸が連覇を達成して終わった。最終節まで3チームに優勝の可能性が残るなか、しっかり自力で優勝を勝ち取ったところが神戸の強さを表していたと言えるだろう。今年の神戸の優勝と、その中でのMVPは誰になるのか。元日本代表の前園真聖氏に話を聞いた。(取材・構成=森雅史)

   ◇   ◇   ◇   

 2024年のJリーグは神戸の優勝で終わりました。連覇を達成した神戸の選手、スタッフ、そしてファン・サポーターのみなさん、おめでとうございました。

 神戸優勝の最大の要因は、勝たなければいけない時に勝てたということです。実際のところ、今シーズンの神戸は最初、調子が出ていませんでした。2節では早くもホームの柏戦で敗戦を喫しています。

 第6節以降は4位に留まる期間が長く、19節を終了した時点ではトップの町田に対して勝ち点6の差を付けられていました。19試合を終わって6敗というのは2023年に8敗で優勝している神戸にとって予想外だったと思います。しかも、20節ではホームで町田に引き分け、差を縮めることができませんでした。

 さらに7月からは天皇杯、8月からはACL(AFCチャンピオンズリーグ)エリートの試合も加わってきて、過密日程が始まりました。ACLのないクラブに比べると、明らかに不利な条件だったと思います。

 ここでクラブと吉田孝行監督の実力が発揮されました。クラブは過密日程をしっかり戦っていけるだけの選手層を揃えていました。たとえば、天皇杯は準決勝までリーグ戦で出番が少なかった選手たちを中心に乗り切りました。そして初優勝を達成しています。

 ACLエリートは初戦のブリーラム戦にこそ引き分けたものの、山東、蔚山、光州、セントラルコースト・マリナーズと、中国、韓国、オーストラリアのチームに対して4連勝。アウェーの浦項にこそ負けたものの、その5日後にはリーグ優勝をかけたJ1リーグ最終節が待っていたことを考えると、力の配分を変えても当然でしょう。

 ただし、それだけの選手層を抱えるからには別の問題も生じます。それは、他クラブだったら当然スタメンで使われるような選手たちに十分なプレー時間が与えられないという問題です。

 監督は選手の起用方法をみんなに納得させなければいけません。しかも負けると采配に疑問が生じて、監督の求心力が弱まります。戦略や戦術も監督にとって大切な要素なのですが、この選手のモチベーションをどうやって維持していくかは、チームマネジメントとして同じくらい大切なのです。

 それがうまくいったから、神戸は尻上がりに調子を上げました。28節から33節まで6連勝。36節、37節と引き分けて広島や町田の追随を許しましたが、最終節では神戸がしっかり勝利を収めたのに対して広島も町田も敗れたことを考えると、やはり神戸が優勝にふさわしかったと言えます。終わってみれば、年間8敗と試合数が増えたにも関わらず去年と同じ負け数でした。

 チームも非常にバランスがいいと思います。中心となるのは海外クラブを経験して帰ってきた選手たち、酒井高徳、武藤嘉紀、大迫勇也、山口蛍、森岡亮太、井手口陽介らがいて、そこに宮代大聖らが入ってきて成長しています。Jリーグの中でもヨーロッパ基準が浸透していると言ってもいいでしょう。

 では、このチームの中からMVPを選ぶとしたら……。MVPが「モースト・バリュアブル・プレーヤー」ではなく「モースト・バリュアブル・パーソン」の略になりますが、僕はやはり吉田監督だと思います。

 2022年6月にミゲル・ロティーナ監督のあとを引き継ぐ形で就任し、最下位だったチームをしっかり残留させただけではなく、2023年からは連覇を達成。しかも2024年は天皇杯との2冠を勝ち取りました。この功績は何物にも代えがたいと思います。僕は吉田監督に最大限の賛辞を送りたいと思います。(前園真聖 / Maezono Masakiyo)

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