ブロックチェーンが抱える5つの課題、データ消失の懸念も

Forbes JAPAN / 2018年6月18日 7時0分

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筆者はブロックチェーン技術の信奉者だ。中央集権型システムから分散型ネットワークへ移行し、高い信頼性を実現するというコンセプトは非常に説得力がある。ブロックチェーンは、ファイナンスやデジタル著作権管理、投票システム、サプライチェーンマネジメントなど幅広い分野に多くのメリットをもたらすだろう。

その一方で、ブロックチェーンが社会に普及する上で乗り越えなければならない障害が多いことも事実だ。将来的にブロックチェーンのエコシステムを構築する上で、早い段階からこれらの障害に目を向けて対策を講じる必要がある。

ここではブロックチェーンが抱える5つの課題を紹介したい。

1. 誇大宣伝

多くのメディアは、ブロックチェーン技術があたかも万能であるかのように報じているが決してそうではない。実際には、ブロックチェーンに置き換えず、既存システムのまま運用した方が理に適っている領域が多い。

人々に過度な期待を抱かせると、実現できなかった時に信頼が損なわれてしまう。真面目に仕事をしているブロックチェーン領域の起業家たちにとっては、投資家から資金を調達したり、開発したプロダクトを市場に投入することが困難になってしまう。

2. データ完全性を失うリスク

ブロックチェーンは完全性が担保され、不正や改ざんが困難だと言われることが多い。しかし、実際にはブロックチェーンには様々な種類があり、完全性の高さはそれぞれ異なる。また、現在は完全性が担保されていても、将来的には失われる可能性もある。

例えば、ビットコインネットワークのPoW(プルーフ・オブ・ワーク)システムは、特定の参加者の計算処理能力が全体の50%を超えないことを前提にしているが、それを超えてしまうと不正が可能になる。

ブロックチェーンを管理する不特定多数のノードが進化を遂げた結果、システムの完全性の前提条件が崩れることが考えられる。ブロックチェーンは登記や財産の管理、企業の財務記録などへの応用が期待されており、長期間に渡って高い完全性を保証するメカニズムが求められる。ブロックチェーンの完全性が失われる事態に陥った場合の対策についても今のうちから考えておくべきだ。

3. ICOによる過剰な資金調達

ブロックチェーン領域では、資金調達手段としてICO(新規仮想通貨公開)の人気が高まっている。その理由は、従来の資金調達方法に比べてはるかに面倒が少ないからだ。しかし、問題なのは、ベンチャーキャピタルが厳しいデューデリジェンスを行うことでリターンを得る確率を高めているのに対し、ICOにはこうしたプロセスが存在しないことだ。

また、ICOでは必要以上の資金が調達できてしまうことも大きな問題だ。筆者はサンフランシスコで長年ベンチャーキャピタリストをしているが、過剰な資金調達は資金ショートと同じくスタートアップが破綻するリスクを高める。資金過多な企業は財務の規律が緩み、短い期間に多くの社員を雇用したり、支出が増え過ぎたり、焦点の定まらないプロダクト開発を行うことが多い。

ソフトウェアスタートアップであれば、プロダクト開発に多額の資金を必要としないが、ICOはホワイトペーパーだけで何億ドルも調達できてしまう。創業者にとっては喜ばしいことかもしれないが、規律が緩むことで事業が失敗に終わり、投資家はリターンを得ることができないかもしれない。

全てのICOが悪い投資という訳ではないが、現実の厳しさを味わう覚悟が必要だ。ベンチャーキャピタルですら投資の大半が失敗に終わるのだから、厳しい精査をしないICOの成功確率がさらに低くなるのは当然だ。

4. 規制の適正化

過度な規制はイノベーションを妨げるが、規制が全くないのも問題だ。ブロックチェーンは、資金の移動や契約の締結、証券の発行など、既存の法律や規制のフレームワークに関わる分野で既に利用されている。これらのフレームワークは何十年も前に策定され、最新のテクノロジーに対応できていないことが多い。

ブロックチェーン・エコシステムの参加者は、立法者や規制当局者がブロックチェーンに対する理解を深め、普及を後押しするようなフレームワークにアップデートできるよう協力していくことが必要だ。

5. サイバーセキュリティ

あらゆるデジタル領域においてサイバーセキュリティは大きな課題だが、ブロックチェーンを活用したサービスにおいては特に困難な問題となっている。進化を続けるサイバー攻撃に対応するだけでなく、基盤となるエコシステムが他の領域に比べて格段に速いスピードで変化していることがその理由だ。

毎日のように新しいブロックチェーンシステムやサービスが開発されている。変化がそれほど激しくない業界であれば、サイバーセキュリティ企業はハッカーよりも情報面で優位に立つことができるが、ブロックチェーンではそうはいかないのが実情だ。

Forbes JAPAN

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