学生間で「過去問共有サイト」利用が横行 対策迫られる米大学

Forbes JAPAN / 2019年1月18日 7時30分

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米国の大学では、フラタニティやソロリティと呼ばれる学生組織がメンバーの勉強の成果を保管し、代々受け継いできた。例えば、スミス教授の「植民地時代の米国史」を受講しているなら、書類棚から過去問や小論文などを引っ張り出すだけでよかった。植民地時代の歴史に変化はないため、スミス教授が試験や課題の内容を変える可能性は低い。

しかし、デジタル時代に入り、ファイル共有がより簡単になると、書類棚を使った共有法は廃れ、代わりに学生たちはソーシャルメディア上のグループを使って過去の課題を自由に投稿したり、ダウンロードしたりするようになった。この方法は今も一般的に使われている一方で、大規模な国際的ウェブサイトの登場で進化も遂げている。

こうしたサイトでは、学生が自分の課題や論文をアップロードすることで得たポイントを使い、他の学生がアップロードしたデータをダウンロードできる仕組みになっている。中には、アップロードにより現金を稼げるサイトすらある。

こうしたサイトは数百万人が利用する規模に成長しており、その数も増殖している。メリーランド大学ユニバーシティカレッジ校(UMUC)大学院のダグラス・ハリスン副学長によると、学業成果物の共有を仲介する「違反サイト」は600以上存在するという。

データをアップする学生側から見ると、デメリットはほぼない。成果物は既に出来上がっており、いったん成績が付いてしまえば価値がなくなる。困っている学生に手を差し伸べるという名目で自らの行為を正当化することも簡単だ。課題や過去問をダウンロードする学生側にとってはややグレーな問題で、こうしたデータを使って何をするかによって事情は変わる。いずれにしろ学校側からすれば、学習の手抜きにつながる成果物の共有は学業不正だ。

テクノロジーを悪用するこうした不正行為について、多くの大学はあえて目をつむるか、お手上げ状態だった。だが、UMUCのハリスン副学長の下で最近立ち上げられたタスクフォースは、このような不正行為を少なくとも減らすための新たな対策を考案した。

ハリスンらは、「ボット・クローラーを使ってUMUCの所有物を検知し、決められた手順に沿って大規模に削除通知を出す」方法を検討した。つまり、自律型プログラムを立ち上げてインターネット上を検索させ、UMUCの授業で出された問題や課題に関連するデータを検出するのだ。共有サイトでUMUCの所有物を発見したボットは、著作権保護法などに基づき自動的に削除通知を出す。

タスクフォースによると、こうしたボットは「許可を得ていないアップロードに関わったユーザーの識別情報」を追跡できるため、不正共有を行う学生をある程度減らせるという。ただ、アップロードする側の学生は他の学生に学業成果物を直接渡しているわけではなく、誰もダウンロードしない可能性もあるため、こうした学生にどのような処分を科せるのかは不明だ。それでも、期末試験の解答をアップすれば学校から電話がくる恐れがあると思わせるだけでも、不正な共有行為を抑止できるだろう。

さらに、ボットが自動生成した削除通知には大きな効果が見込めるわけではない。共有サイトの多くは、米国の著作権法が及ばない場所に拠点を置いているからだ。実際の行動につなげるためには、UMUC、あるいはほかの学校が訴訟を起こして勝訴する必要があるかもしれない。

こうした問題は別として、課題の不正共有のまん延に対する行動を起こしたUMUCは大きな称賛に値する。同校は少なくとも問題を認め、対処法について議論したが、多くの学校ではそれすらできていない。UMUCの削除通知ボットが本当に機能すれば、他の学校もそれに倣わざるを得なくなるかもしれない。

これは起業家にとってはビジネスチャンスだ。学校は、不正共有ビジネスの取り締まりに金を払うだろうし、1校が始めれば他も追随するだろう。対策を打たないのは体裁が悪いだけでなく、不正共有サイトを放置すれば大学経営というビジネスの存続にかかわる驚異となるからだ。ハリスンは、この手の不正は大学の「信用」に対する脅威だと指摘している。

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