70年目の「七人の侍」リスペクト三昧 “薄っぺら“”スタイルがない”当時は批判されたのに…三谷幸喜も感銘、近年は〝再評価〟のワケ「サボテン・ブラザース」(1986年)
zakzak by夕刊フジ / 2024年9月26日 11時0分
「サボテン・ブラザース」(1986年)ジョン・ランディス監督
今回はコメディーを取り上げる。「サボテン・ブラザース」(1986年、ジョン・ランディス監督)はドタバタ西部劇。当初の評判はあまり芳しくなかったが、近年は再評価されている。
三谷幸喜は「ザ・シネマ」誌でこの映画に感銘を受けたと語る。なぜこの映画が愛されるのか。主演俳優3人の面白さが不当に見過ごされていたが、「戦争と正義」が論議される中で見直され、カルト人気に火がついたからだろう。
当時は辛口コメントしかなかった。ニューヨーク・タイムズには「ジョークは洗練されているが、スタイルがない」と書かれ、「エンパイア」誌は「コメディーの土台はあるが物語が薄っぺらだ」といった具合い。それでも「ユーモアあふれる心地よいシーンもあった」と肯定的な意見もあった。それはひとえに天才的なコメディアンたちの努力のたまものだ。
ここで「七人の侍」との接点を考えてみたい。
ストーリーはこうだ。舞台は「荒野の七人」と同じくメキシコの寒村。強盗団の襲撃に困り果てていたカルメンは、教会で見た映画に出演する俳優を本物のヒーローと早とちりして、助けてほしいとハリウッドに電報を打つ。
電報を受け取ったスリーアミーゴス(スティーヴ・マーティン、チェビー・チェイス、マーティン・ショート)も映画のオファーと勘違い。勘違いの連鎖がコメディーには必須条件のようだ。
面白いのはここから。かつて映画で使った手段を用いて村人と共同で強盗団を見事撃退する。マンガと笑うなかれ。いやいや笑ってほしいからこそ、出演作のアイデアを借用したが、それがズバリはまるからコメディー映画が成立する。
このようにメキシコという場面設定、ストーリーは「荒野の七人」に相違ない。スリーアミーゴスが思いがけず活躍するのはコメディーに徹するためだろう。
最後に村人たちから報酬を渡されるがそれを断り「正義が行われたことが報酬さ」とうそぶいて去る3人。本当はシリアスな映画を作りたかったのではないかと思えてならない。 (望月苑巳)
■サボテン・ブラザース 日本公開は1987年4月11日。脚本はスティーヴ・マーティン、ローン・マイケルズ、ランディ・ニューマンの3人。
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