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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 映画「ジョン・ガリアーノ世界一愚かな天才デザイナー」 天才デザイナーの告白、反ユダヤ主義的暴言で逮捕された2011年

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月23日 10時0分

かなりおもしろい。「週刊文春」の映画評なら☆が4~5。そのレベルだ。

今週、公開された映画「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」(ケヴィン・マクドナルド監督・プロデューサー)。

ジョン・ガリアーノ。ファッション業界では、知らぬ者がいない超ビッグネーム。クリスチャン・ディオールのデザイナーで、ファッション業界の至宝と称賛された彼が逮捕されたのは2011年のこと。反ユダヤ主義的暴言を吐いたというヘイトクライムの罪だった。有罪。

自らの言葉で自らを破壊した汚れた英雄。すべての地位、名声を失った。ディオールに解雇され、レジオン・ドヌール勲章も剝奪されたあの事件から13年。

アイルトン・セナやボブ・マーリー、ホイットニー・ヒューストンらのドキュメンタリーを手掛けたマクドナルド監督が堕ちた英雄に目をつけた。カメラを直視するガリアーノは「洗いざらい話す」。その結果、見応えたっぷりのドキュメンタリー映画が完成した。

美術学校の卒業制作のショーでロンドンファッション界の寵児(ちょうじ)ともてはやされ、華麗なキャリアがスタートする。きらめく才能を、周囲は天才と称賛する。本人も自覚し、次々に革新的かつパワフルなショーを発信するが、表現の成功が経済的な成功に結び付かない。そんな時期を経て、勝負の場をドーバーの向こう側、パリに求め成功に近づく。

スーパースターとして自身のキャリアを次々に上塗りしていく才能。周囲に支援者も多い。だが、実際のところは孤高であった。「ショーを毎回やり切ると、深い谷間に落ちた」とガリアーノは回想する。頼ったのは酒と処方箋。眠るために飲み、起きるために飲んだという、すさまじい暮らしがつまびらかになる。

同時に、少年時代の闇も監督は引き出す。父親や文化に抑圧され、いつの間にか芽生えた考えは「成功することは復讐でした」。

なぜガリアーノは差別的な発言をしてしまったのか。深層心理を探るように監督は天才のベールを1枚1枚はがしていく。成功から転落、再びはい上がる生きざまは壮絶で実にスリリングだ。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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