狙われた中日同僚「ヤジすごかったから」 大乱闘で飛び蹴り“集中砲火”…3冠王も標的に
Full-Count / 2024年12月14日 6時50分
■1988年、札幌遠征からそのままナゴヤ球場で練習した星野中日
星野仙一監督率いる中日といえば、闘争心むきだしの野球が有名だった。キャッチフレーズは「ハードプレー・ハード」。指揮官は「グラウンドは戦場、ユニホームは戦闘服」と口にした。乱闘も多かったが、中日の主力選手だった宇野勝氏(野球評論家)は、そんなシーンでほとんど目立っていない。「俺は周りにいただけって感じだったからね。言葉だけ参加していたかな」。中日が優勝した1988年も大乱闘劇があったが、その時も冷静に動いていた。
星野中日は宇野氏がプロ12年目の1988年にセ・リーグを制覇した。4月終了時点では首位・広島から8ゲーム差の最下位だったが、そこから巻き返して6月終了時点では首位・巨人に1ゲーム差、2位・広島に0.5ゲーム差の3位に浮上した。だが、7月に入って大洋3連戦(1日~3日、平塚、横浜)と巨人3連戦(5日~7日、旭川、札幌円山)に6連敗。延長11回5-6でサヨナラ負けした7日は試合が長引き、予定の航空機に乗れず札幌に1日延泊となった。
「次の日に移動して、そのまま家に帰ろうと思ったら、バスがあったんだよね。『えっ、バスってどこに行くの』なんて思った覚えがある。それでナゴヤ球場に行って練習だったんだよね」。中日首脳陣は前夜に札幌の宿舎で打開策を協議。基本に戻ろうということで、ベースランニングなど走ることからやり直しとなった。「次のゲームもギリギリ勝ったって感じだった。で、そこから急に調子がよくなったんだよね」。
7月9日のヤクルト戦(ナゴヤ球場)に10-9で何とか勝った中日はそこから6連勝。ひとつ負けて、また6連勝と勢いに乗って首位に立ち、突っ走った。8月下旬にはドジャース留学で急成長の山本昌広投手が帰国して活躍するなど、チームに弾みもついた。「マサ(山本昌)は(前の年まで)よくバッティングピッチャーで(1軍に)来ててさ、そのままなっちゃうのかと思ったら、アメリカで大化けだもんね。ガタイもデカくなって帰ってきたよね」。
中日で活躍した宇野勝氏【写真:山口真司】
■1988年9月9日の広島戦で大乱闘…2人の退場者が出た
そんな中、大乱闘劇が9月9日の広島戦(広島)で発生した。死球に怒った仁村徹内野手がマウンドに行きかけると、中日ナインが一斉にベンチから飛び出した。広島ナインも負けじと出陣。グラウンドのあちらこちらでバトルが繰り広げられ、もっとも激しかったのがショート付近だ。中日・岩本好広内野手に広島・長嶋清幸外野手が飛び蹴りや連続キックを浴びせるなど、すさまじい展開。最も目立ったこの2人は退場処分となった。
宇野氏は「あったねぇ。岩ちゃん(岩本)は前からヤジとかすごかったから、向こうから狙われていたんだよね」と話し、自身については「俺はああいうのには加わらない。乱闘の輪の中の殴るとかには加わっていない。いつも口だけ。“やめろ、やめろ”って感じでね」。この試合でも岩本をつかまえた広島・長内孝外野手の背後でユニホームを引っ張って止めることに終始。蹴ったり殴ったりの“中心”には行かず、冷静に後ろ、後ろに回り込み怪我をしないように動いていた。
付け加えれば、その日の宇野氏は打席でも”冷静”だった。そもそも乱闘のきっかけは0-0の6回2死から広島先発の長冨浩志投手が中日の4番・落合博満内野手に死球を与えたこと。そして5番の宇野氏にも危ない球がきた。「落合さんに当てて俺にも来ると思っていたよ」。体をくの字にして内角危険球をかろうじて避け、その後に左翼席へ2ランをかっ飛ばしたのだ。「及び腰になりながらね。甘めのスライダーが来たんじゃなかったかな」。
打たれた長冨は、6番の仁村にも内角に投げて当てたから、一気に大乱闘に発展したが、宇野氏はうまくかいくぐっていた。「まぁ、星野さんはやられたら、やり返す野球だから、そりゃあ乱闘になるよね」と言う、たとえ、そうなっても他の中日ナイン同様にグラウンドに勢いよく飛び出しながら、自らパンチやキックを繰り出すこともなく、相手から食らうこともなく、うまく動いていたようだ。
中日は10月7日のヤクルト戦(ナゴヤ球場)に11-3で大勝して、6年ぶりのリーグ優勝を決めた。星野監督の胴上げの際はスタンドからファンが大挙乱入の大騒ぎ。「すごかったよね。俺も帽子がどっか行っちゃったよ。みんな逃げるようにベンチに帰ったもんね」。この年の宇野氏は全130試合に出場して打率.277、18本塁打、76打点。本塁打こそ減ったものの勝負強さを発揮して優勝に貢献した。乱闘で目立たなくても、ここぞという時にバットで頼りになる存在だった。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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