日本経済再興に組み込まれた「燃料電池車」普及戦略

FUTURUS / 2014年11月12日 12時15分

まもなく、国内で発売される見通しの究極のクリーンカーこと「FCV(燃料電池車)」。水素と酸素の化学反応を利用して電気を作る発電装置「燃料電池スタック」を搭載している。

その特徴については「次世代自動車のまとめ」が詳しいが、約3分間の水素充填で600km以上の走行が可能、排出するのは水だけだ。

水素を燃焼させず直接的にエネルギーの83%を電気エネルギーに変換することが可能で、ガソリンエンジン比でおよそ2倍以上の効率の良さを誇っている。

また水素は環境に優しく様々な原料から生産が可能なエネルギーでもある。

2010年1月、日本政府は地球温暖化対策における温室効果ガスの排出量低減目標を「2020年までに1990年比で25%削減、2050年までに80%削減」と決めた。

同年3月には環境省が目標値を達成するための施策をまとめた中長期ロードマップを公開している。

■ 次世代自動車が「新成長戦略」による経済効果の9割を担う

次世代自動車などの主要温暖化対策により、輸出分を含めると2020年時点で新成長戦略の約9割に相当する45兆円の新たな需要と125万人の雇用を創出、関連企業まで含めると118兆円、345万人規模の経済効果を生み出すとしている。

同年4月には経済産業省の次世代自動車戦略研究会が「次世代自動車戦略2010」を発表している。

これらを受ける形で安倍政権は昨年6月に「日本再興戦略」を発表した。

「第三の矢」となる新成長戦略の「戦略市場創造プラン」では日本の強みを活かし、グローバル市場に打って出れる分野として「クリーンかつ経済的なエネルギー需給の実現」をテーマアップ。


■ 水素供給インフラの普及で世界最速を目指す

具体的には「2030年までに新車販売に占める次世代自動車の割合を5~7割とすることを目指し、初期需要の創出、性能向上のための研究開発支援、効率的なインフラ整備等を進める」としている。(2013年時点23.2%、2012 年:21.2%)

また同時に「燃料電池自動車や水素インフラに係る規制を見直すとともに、水素ステーションの整備を支援することにより、世界最速の普及を目指す」 と明示。

こうした政府による水素インフラへの規制緩和やFCVの発売を控え、石油・ガス業界が一斉に「水素ステーション」の設置に動き出している。

ガス専門商社大手の岩谷産業は今年7月、国内初となるFCV向けの商用水素ステーションをいち早く兵庫県尼崎市内にオープンした。

同社は2025年にFCVが200万台普及した場合、水素需要を24億立方メートルと試算しており、現在の17倍の水素が必要となると見込んでいる。

また来年にはJXホールディングスや東京ガス、大阪ガス等を含め、全国で水素ステーションが100カ所程度に増加する見通しとなっている。

■ 課題だった水素のデリバリーを「液化」で克服

そこで課題となるのが「水素ステーション」までの水素のハンドリング。

気体のままではリスクが伴うだけで無く、運搬コストが高くつく。

そうした中、三菱重工が先頃、洋上で水素を抽出、液化、運搬までを手掛ける船舶の建造を発表(参考:世界初!洋上で水素を生産する技術が開発される)。

油田採掘時に発生するガスに含まれる水素を有機溶剤に反応させて常温・常圧下での水素貯蔵・輸送を可能にした千代田化工建設の「水素液化技術」を利用するもので、既に両社による共同開発が完了。

目的地へ運搬された液化水素は「脱水素化技術」により水素ガスに戻され、各インフラに供給される。

これらの水素の運搬手段が一般化すれば燃料電池はFCVや家庭用だけで無く、将来は鉄道や航空機、船舶用の発電機としても利用されていくことになりそうだ。

*参考:日本再興戦略、戦略市場創造プラン、地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ、低炭素社会づくり行動計画、次世代自動車普及への取組、次世代自動車戦略2010、水素・燃料電池戦略ロードマップ、HySUT(水素供給・利用技術研究組合)、次世代自動車振興センター、三菱重工

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