人工光合成は決して夢物語ではない

FUTURUS / 2014年12月12日 8時1分

植物が光を使って水と二酸化炭素を消費し、酸素と炭素化合物を生み出す作用はご存じだろう。光合成というものだ。

当サイトの過去記事でも「人類はついに光合成を手に入れた!人工の葉が酸素を作り出す奇跡」などで光合成の話題を紹介したことがあるが、この植物が生み出すサステイナブルなエネルギーを人工的に、大規模に生み出すことができれば、温室効果ガスの問題は大きく改善されるはずだ。そんな未来を目指した人工光合成の研究を、世界各地の研究者が行っている。


■ 東芝は世界最高効率を実現

先月末には、東芝が世界最高効率の人工光合成に成功したと発表した。東芝のウェブサイトによれば、太陽光の利用効率に優れる多接合半導体と、二酸化炭素と水との化学反応を促進する金ナノ触媒を使うことで、炭素化合物への変換効率1.5%という世界最高の数値を実現したという。

従来の人工光合成技術では、高い反応のエネルギーを得るために紫外光を吸収する材料が使用されていたが、その材料は光利用効率が低いためエネルギー変換効率が低かったという。しかし、今回発表された技術では、光利用効率の高い可視光を吸収する多接合半導体とナノサイズの構造制御技術を適用した金ナノ触媒を使って、燃料の原料となる一酸化炭素への変換効率を改善したということだ。

この技術は、2020年代の実用化を目標に、今後はさらに触媒活性を高めることで変換効率を向上させる研究を進めていくという。そして、火力発電所や工場などの二酸化炭素排出設備に付随する二酸化炭素の分離回収システムに使用することを目指している。

■ オーストラリアではたんぱく質による実験に成功

また、オーストラリアからは、たんぱく質を使った人工光合成の研究に大きな進歩があったという発表があった。オーストラリア国立大学のウェブサイトで発表されている。

こちらは太陽光をエネルギー源として水素を作り出す生物学的なシステムの開発において、重要な実験に成功したというものだ。使ったのはたんぱく質だ。光を当てると、電気的な脈動を起こすたんぱく質を作り出すことに成功したという。これは光合成のカギを握る重要なプロセスになるそうだ。

「これは自然に存在するたんぱく質なので、バッテリーもいらないし、高価な金属も必要ない。したがって、発展途上国でも使える安価なものになります」と研究者のひとりHingorani博士はいう。また、共同研究者のPace教授は「これは、太陽光から一次的なエネルギーの摂取に成功した最初の例になります。これが、高効率な燃料の生成や大気中の炭素の収集へとつながるすべての可能性の始まりになるのです」と話す。

この研究で使われているたんぱく質は、フェリチンという、よく知られたどこにでもあるたんぱく質を改質したものだ。通常フェリチンは鉄をたくわえる役割を果たすが、この研究チームは、光合成において水を分解する器官を真似るために、フェリチンから鉄を取り除き、マンガン(これもよくある物質だ)で置き換えた。

またこのたんぱく質は、感光性の塩化亜鉛で置き換えたヘム類を結びつける働きもする。この改質されたたんぱく質に光を当てると、光合成と同じような電気への変換が見られるという。

東芝の人工光合成の研究は最先端だが、高価な素材や高度な製造技術が必要なようだ。いっぽうオーストラリア国立大学の研究はまだ初期段階だが、シンプルで安価なものによる人工光合成が期待できる。現時点では人工光合成の研究はさまざまなアプローチがあるようだ。未来のエネルギー事情、地球環境問題を変えてしまうほどのものになりえるか、今後のさらなる研究に期待したい。

*参照および画像出典:東芝研究開発センター ー人工光合成 世界最高の効率で、二酸化炭素から燃料原料生成に成功ー、Australian National University -Research breakthrough in artificial photosynthesis-

FUTURUS

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