未来のリーダーを育てる奇跡の学校に世界が注目

FUTURUS / 2014年12月16日 13時15分

2014年9月にNYで開催された国連気候変動サミット。国連事務総長と世界銀行総裁がホストを務め、世界の国家元首たちが出席した公式昼食会の席において、事務総長パン・ギムンからある学校が紹介された。

その学校の名はグリーンスクール。インドネシア・バリ島の熱帯雨林の中に”未来のリーダー”を育てるために作られた、奇跡のような学校。サミット開幕の直前にパン・ギムンは、重要な使命を持ってここグリーンスクールを訪れていた。


■ 未来へ向けた持続可能な教育

バリの州都デンパサールと、芸術・文化の中心地ウブドの中間地点、民家もまばらな鬱蒼としたジャングルの中にグリーンスクールはある。2008年に開校したこの学校には、2014年現在、3歳から18歳まで44の国籍の400人以上の生徒たちが通う。

創設者のジョン・ハーディーとシンシアは、デザインとマネージメントのプロフェッショナルとして、長年東南アジアの宝飾ビジネス界で成功を収めていた。そして次第に彼らの関心は建築へと移っていく。彼らが強く惹かれたのは、アジアではありふれた木材である”竹”。

独自に開発した加工法で、強度と耐用年数は鉄筋コンクリートに負けないほどにまで向上。インドネシアの伝統的建築法を応用し、地元の職人たちと共に次々と独創的なデザインのバンブーハウスを作り出していった。

転機は2006年に訪れる。アル・ゴアが出演した映画『不都合な真実』を観た二人は衝撃を受け「未来を変えなければいけない」と確信し、未来を担うリーダーを育てようと学校作りを始める。これからの世界のキーワード”サステイナビリティ”、持続可能な社会作りを追及する学校だ。

世界を変えるには、まず世界の注目を浴びなければいけない。ここで行われていることに、世界の目が向けられなければならない。今まで誰も見たことのない学校を作らなくてはいけない。彼らは竹だけを使い、世界に二つとない驚異的な建築による校舎を作った。

教育手法はシュタイナーをベースにしたもので、多様性を尊重し、創造心と独立心、そして変革を恐れない柔軟性を持つ”未来のリーダー”育成を目指す。世界各地のTEDイベントで行われたジョンのプレゼンテーションは、瞬く間に世界中で話題となり、多くの協力者がここへ集まって来た。

この学校の目指す未来に共感した人たちは、様々なアイデアを持ち寄り、この学校を更に価値あるものへと導いた。

大規模な太陽光発電システムは欧州の企業から寄付され、雨季と乾季で補完関係を築くことができる水力発電と合わせ、この学校コミュニティのエネルギーの自給自足が実現した。

食事面でもこだわりを追求。無農薬有機栽培にこだわり、遺伝子組み換え作物を排除した農業をキャンパス内で行うことにより、食の安全と食育を実践。それらの作物を育てる田畑の土壌は、コンポストトイレからの排泄物や食材の廃棄物から作られる堆肥を使用する。

■ 広がる共感とコミュニティ

様々なプロジェクトがこの学校から派生することにより、目指す未来は共有され、コミュニティはより大きく広がっていく。より持続可能性の高いライフスタイルを追求していくためには、地元住民の理解と協力が必要。学校内で地元住民を多く雇用することは、この学校の理念を普及させるためには重要だ。

生徒たちは授業の一環として地域のゴミ拾いを続けながら、環境問題についての啓蒙活動を展開。バリ島からビニールのレジ袋を無くすための活動”バイバイ・プラスチックバッグ”を始めたミドルスクールの少女たちは、バリ島内のみならず海外のTEDイベントでも深刻なバリのゴミ問題を訴える。

バリ州知事にゴミ問題を改善させる法整備の要望書を提出し、無期限ハンガーストライキを決行。ついに知事を合意文書にサインさせることに成功した。

また、地元バリの子供たちを奨学生として積極的に迎え入れ、放課後は近隣の子供たちに英語やICTを教えるボランティア活動も行う。卒業した奨学生が大学進学後に海外で金銭面で苦しんでいれば、在校生たちがクラウドファンディングで基金を立ち上げ生活をサポートする。

学校内に宿泊しながら様々なプログラムを体験できるグリーン・キャンプは、毎週世界各地から多くの人たちが訪れる人気プログラムだ。

個人や家族、学校や各種団体で参加し、バリの自然や文化に触れ、農業や竹建築を体験する。現在100人が同時に宿泊でき、修学旅行や企業研修などにも利用されている。

これまでは安価で寿命の短い建築資材であった竹を改良し、洗練されたデザイン・建築法を用いることにより、グリーンスクールは竹のイメージを一変させた。

次々と学校施設の建設を重ねることにより、その技術や可能性は次なるステージへと到達。環境負荷の小さい竹を使った持続可能で驚異的な建築群は、学校だけでなく現在個人邸宅やホテルとして利用されている。世界の多くの建築家・旅行客から注目を集め、見学者や宿泊希望者が後を絶たない。

ここを訪れ、寄付や投資を申し出る富豪や投資家たちも多く、資産価値の高いバンブーハウスを建設するには今や数年待ちの状態だ。


■ インドネシア、国連、世界を動かす

「近い将来、あなたたちは様々な分野でリーダーとなるだろう。だから私たち大人は、全ての人にとって今日より明日が少しでも良くなるように最大限の努力をし、この世界をあなたたちに繋いでいく責任がある。」

国連気候変動サミットの直前にグリーンスクールを訪れた国連事務総長パン・ギムンは、全校生徒と関係者一同を前にした講演でこう力強く述べた。

この日パン・ギムンと共に訪れたのは、REDD+インドネシア総長、UNORCID理事、ノルウェー王国外務大臣代理、在インドネシア・ノルウェー大使とインドネシア閣僚。気候変動や森林保護に取り組む国連やWWF・REDD+とグリーンスクールが協力し、環境教育プログラムを世界規模で展開しようという壮大な計画を進めるためだ。

事務総長とノルウェー政府関係者立ち合いの下、2015年よりインドネシア全土の学校でグリーンスクールの理念とプログラムに基づいた環境教育を始めることを約束した覚書が交わされた。まず目指すのは、インドネシア国内の子供たちから100万人の環境大使を生み出すこと。

世界の熱帯雨林面積で大きな割合を占めるインドネシアが”動いた”ことの意義は非常に大きい。この地での成功を足掛かりにグリーンスクールは世界へと羽ばたこうとしている。学校ホームページに書かれている彼らの存在第一意義は実に明確だ。

私たちはまだ種をまいたに過ぎない。本当に重要なことは、世界の人たちが私たちを真似て、さらに改良を加えて行動すること。常にその瞬間の自分の行為が孫世代にどう影響するのかを考えるようになれば、自ずと未来は変わっていくだろう。第二のグリーンスクールをどんどん作ってほしい。私たちは協力を惜しまない。

*画像出典・参照:グリーンスクール・バリ、IBUKU、REDD+

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