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「自分たちの考えを全てシェアしなくてはいけない世界になったら?」 新感覚SF『カオス・ウォーキング』原作者が描きたかったこと

ガジェット通信 / 2021年11月11日 17時30分

巨大宇宙船、エイリアンとの戦い、謎に満ちた星──壮大なスケールと映画史上まれにみる設定のエキサイティングなストーリーで、映画ファンを驚愕と歓喜の〈ニュー・ワールド〉へと連れ去る『カオス・ウォーキング』が11月12日より公開となります。

本作はガーディアン賞、カーネギー賞など、数々の名立たる文学賞を制するパトリック・ネスのSF小説の映画化。監督は『ボーン・アイデンティティー』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で知られるダグ・リーマン。主演はトム・ホランド、共演はデイジー・リドリーと、マッツ・ミケルセンと豪華キャストが集結しています。

なぜ? どうして? いたるところちりばめられた謎。そして“ノイズ”によって、頭の中の思考や想像が露わとなる面白さに加えて、生まれて初めて女子を見る青年を演じるトム・ホランドの初々しさ爆発の演技。謎と“ノイズ”、それに10代の瑞々しい感性がミックスされた新感覚のSF映画。原作者であり、本作の脚本も手がけるパトリック・ネスさんにお話を伺いました。

ーー本作大変楽しく拝見させていただきました。原作の「心のナイフ」(「混沌の叫び」3部作の第1部)は2008年に発表されたの本ですが、今現代にも通じる考えさせられる部分がありました。パトリックさんは本著をどの様な思いで書かれたのでしょうか?

本を書く時、自分がその気持ちになっていないと、読者もその気持ちになってくれないと思うんですね。ワクワクするところはワクワク、スリリングな部分は緊張、悲しい時は思い切り悲しく、といった様に、自分がその感情にグッと入り込んでいないといけない。この本は“ノイズ”(劇中で頭の中の思考や想像が露わとなること)に苦しめられながら書いていました。

主人公2人の間に生まれてくる信頼感、追われる立場、次々と大変なことが起こって物語の展開は容赦ないんですね。本作の中で、とても悲しいシーンがあるのだけど、僕自身もすごく悲しい気持ちになりながら書いたんだ。

ーー劇中の“ノイズ”はSF的な設定でありながらも、共感出来る怖さがありました。

この“ノイズ”はSNSをあらわす寓話であり、メタファー的な部分があります。本を書いた2008年当時にはSNSサービスは登場していて、人と人をつなげる新しいパワーがあることは素晴らしいなと思っている。でもネガティブな面もあって、他者の意見が押し付けられたり、自分にとって嫌な言葉だったり考えがSNSによって増幅されていく。すでにうるさかった世界が、現在はもっとうるさくなっている。「自分たちが考えていることを全てシェアしなくてはいけない」世界になったら、どんな事が起こってしまうんだろう。そういう問いかけをこの物語ではしたかったんですね。特にこの映画では、若い人たちがそういう状況におかれたら?ということを中心に描きました。

ーーこの“ノイズ”の描き方は、SNSに対して私がモヤモヤ感じていることがすごく表現されていてビックリしました。

SNSは人と人をつなげる、ということにおいては人類史上最も優れた発明の一つだと思う。でも、信じていた人があまりよくない人であることもあるし、よくない人とつながってしまうリスクもある。僕はネットをやめろとか、SNSの無い時代に戻って欲しい、と思っているわけではなくて、もう少しそうったSNSのリスクを自覚することが大切かなと思っている。情報というものが、どの様に人にダメージを与える為に使われてしまうのか、しっかり目を開いて見ることが必要なんだと。

ーー本作では原作者としてだけではなく脚本に参加されていますが、映像化するにあたり脚本にどの様な工夫をされましたか?

世界観が登場人物たちにとって、どれだけリアルであるかということを考えています。読者や観客にとってどれだけファンタジックな世界観だったろしても、そこで生きる人物にとってリアルであれば、地に足についた物語が書けるのではないかと思っていました。ヴァイオラはこの星「ニュー・ワールド」に着いて、初めて“ノイズ”に触れるから、観客と同じ視点を持っていて、観客はヴァイオラと一緒にこの星の常識を知っていくんだ。

ーー映画冒頭でトッドが狩りなど生活をしているシーンがありますが、「この星ではこれが常識なんだ」ということがよく分かりました。

『マディソン郡の橋』(1995)という映画があって、映画としてすごく面白いわけではないと思うのだけど(笑)、メリル・ストリープが演じていたのがイタリアからアメリカに来た女性で、彼女がクリント・イーストウッドの前を歩く時に、スカートのお尻の部分を自分の手でサッとはらう。「こういうささやかなシーンが映画をリアルにしている」とメリルが語っているのを見たことがあったんだ。ロバート(クリント・イーストウッド)が自分のお尻を見ていることに気付いて、自意識が生まれる、それでスカートをちょっと自分で直す、というシーンで。そのメリルが言っていたことがとても印象に残っていて、すごく小さな動きであっても、意味のある描写は物語をリアルにするんだと。本作においても、そのトッドの狩りのシーンが、『マディソン郡の橋』のスカートにあたる役割なんじゃないかなと思っているよ。

ーーSFな世界と西部劇な世界が融合されているのもユニークですよね。

この小説自体が半分SF、半分西部劇であるイメージなんですね。開拓時代というのは色々な問題を抱えていて、人間というのは入植しつづける歴史を持っているので、この「ニュー・ワールド」の男たちは、アメリカが開拓してきた歴史と同じような過ちを繰り返してしまうのかという事が気になって書いていたんだ。

ーーそして素晴らしいキャスティングによって、映画の世界観がより身近なものになっていると感じました。

トム・ホランドとデイジー・リドリーは、映画ファンならどの皆さんも感じている様に、とても親しみやすいキャラクターを演じるのが上手です。彼らが演じているだけで応援したくなる魅力を持っている。そしてマッツ・ミケルセンは、本人は会った人なら誰しも好きになってしまう魅力を持っているのだけど、これまでも色々なヴィランを演じていますよね。彼の顔が佇まいに人を引きつけるものすごい魅力があると思うし、危険なのだけど支持してしまう。善悪の白黒がはっきりしていないキャラクターの方が僕は面白いと思うし、マッツは聡明な俳優なのでそういった人物を演じるのがとても上手なんだよね。

ーー今日は大変貴重なお話をどうもありがとうございました!

『カオス・ウォーキング』

出演:トム・ホランド、デイジー・リドリー、マッツ・ミケルセン、デミアン・ビチル、シンシア・エリヴォ、ニック・ジョナス、デヴィッド・オイェロウォ

原作:『心のナイフ』〈混沌(カオス)の叫び1〉パトリック・ネス著(東京創元社) 脚本:パトリック・ネス&クリストファー・フォード 監督:ダグ・リーマン

【原題】CHAOS WALKING/2021年/アメリカ・カナダ・香港/英語/109分/ドルビーデジタル/カラー/スコープ/G/字幕翻訳:大西公子 配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ cw-movie.jp

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