『デッドライジングDR』カメラマンは残酷な「ハゲワシ」か?傍観を求める報道写真の矛盾【ゲームで世界を観る#84】
Game*Spark / 2024年9月22日 17時0分
『デッドライジング』の冒頭では、プレイヤーはフランクとしてゾンビ騒動が起きるウィラメッテを上空から撮影します。車の上で抵抗する男、屋上に追い詰められた女性、彼らはヘリコプターを見つけ、フランクに向かって何かを叫びます。これから「決定的瞬間」が起こるのは間違いないでしょう。そのとき、あなたはその瞬間を待ち構えてはいませんでしたか?
つまり、レンズの向こうの人間が死ぬ場面を期待しませんでしたか?
カメラを手に取るものなら誰しも、「決定的な瞬間を撮りたい」という欲を持っています。美しい、衝撃的な、センセーショナルな……方向性は様々にせよ、構図探しに慣れてくると、そのうち「何かが起きそうだ」と勘が働くようになります。それは時に、撮影する対象が危険に晒される場合もあります。
例えば事故が起きる瞬間など、本来であればすぐさま助けに入る場面なのは間違いないでしょう。その状況を写真に撮るとは、相手を見殺しにしつつ、カメラマンのエゴに利用する卑劣な行為ではないか―報道写真における矛盾は、常に撮影者に突きつけられる最大の問題です。
この議論で物議を醸したのが、1994年のピュリッツァー賞を獲得した写真「ハゲワシと少女」。ケビン・カーター氏がスーダンで撮影した一枚で、極度に痩せてうずくまっている子供(少年だったという証言もあり)を、降り立った一羽のハゲワシがじっと見ている様子が映されています。
子供に近づくハゲワシはまるで死神のようで、スーダンの飢餓の状況を象徴する写真として高い評価を受けました。しかし、写真を撮影する以前に子供を助けなかったのかと強い批判も噴出。報道に携わる人間のあり方を問う者として、常に引き合いに出される一枚です。
子供は母親と同行していて、母親が用を足すため一時的に離れていた状況でした。カーター氏本人の証言によると、ハゲワシが翼を広げて子供に迫る瞬間を期待してしまったようで、そうなる前に我に返って、すぐさまハゲワシを追い払い、激しく後悔の念に襲われたそうです。子供はその後、母親に連れられて配給センターに向かいました。保護者が近くにいる状況で、よそ者が勝手に手を出すのはトラブルを招きかねないので、すぐに割っては入れたかは分かりません。それでも、子供が襲われる決定的瞬間を「待ち構えた」という点が、報道写真の倫理において重要な問題を孕んでいます。
報道はなるべく介入を避けて傍観者に徹し、より強く伝わるためなら撮るべきだという意見もあります。この子供一人を助けてもどうにもならない、報道の目的を果たすなら、よりセンセーショナルな画を撮るために目を瞑るのも仕方ない。確かに、この写真によってスーダンの実態に注目が集まり、支援が大幅に増えたのは事実です。一方で、この写真がどれだけ有名になっても、写っている子供が直接救助されることはありませんでした。
逆に言えば、被害者に追い打ちを掛けるような「衝撃的な画」でなかったら、スーダンの事態に注目が集まらなかったのでしょうか。異常に痩せ細った子供だけでも実態は伝わるはずなのに、ハゲワシに狙われる状況が本当に必要だったのでしょうか。もし狙い通り襲いかかる画が取れていたら、子供が怪我を負っていたら、評価はどう変わるでしょうか。
報道で発信される情報は、現場で被害に遭っている被害者ではなく、それを「見せる人」と「見る人」の都合で選ばれます。安全圏の人間が、どこか遠い別の場所で起こる「悲劇の物語」を欲しがっていて、ウケる筋書きに合わないものは見向きもされない……報道とはそうした残酷な面も持っているのです。
冒頭のヘリでは撮影するしかできませんでしたが、接近して助けの手を差し伸べる選択も有り得るでしょう。もしあなただったら、助けに向かいますか?撮影に専念しますか?
人間いつどこで何が起こるか分かりませんから、自分も撮られる側になることもあるかもしれません。自分が危ない目に遭っているときに、野次馬がスマートフォンを向けて撮影しだしたら、どう思いますか?
続編では「テラー・イズ・リアリティー」なんて悪趣味な番組が登場しますが、私達も日々ニュースで報じられる誰かの「悲劇」を「消費」する立場になってはいないでしょうか。
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