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『デッドライジングDR』スーパーから食品が消える日は目前に―私達が背負う暴食の大罪【ゲームで世界を観る#85】

Game*Spark / 2024年9月29日 18時0分

『デッドライジング』の本編では文字通りユートピアのように、取りに行くことさえできれば物資は無限に供給されます。一方∞モードでは資源の数は限られており、生き延びるためには他の生存者を殺して奪わなければなりません。衣食足りて、とはよく言いますが、飢えが間近に迫れば人間の倫理などたやすく吹き飛んでしまいます。


物資の奪い合いを体感した最新の例は「令和の米騒動」でしょう。ゲーマーにとっては『天穂のサクナヒメ』が先にありますが、今年起こった「米騒動」では食品売り場から米袋がなくなる事態にまで発展しました。今月からの新米でようやく解消はされたものの、購入制限をかけるなどその余波は残り続けています。


不作による野菜の急激な高騰、値上げの代わりに容量を減らすシュリンクフレーション、一次生産者の不足、円安、戦争による生産コストの上昇……生活の最も大切な柱である「食」が不安定になる、今の時代はそれを実感せざるをえない状況です。しかしそれは、これまでも着実に寄せてきていた、食糧危機の波から目を背けていた私達にツケが回ってきたせいではないでしょうか。


イザベラとカリートの故郷サンタ・カベサはゾンビ化によって壊滅し、その原因は牛の肥育、つまり先進国の身勝手によるものだと明かされます。限界量を超え過剰に給餌する手法は、実際にフォアグラの生産において議論されており、伝統文化の保護と現代の動物愛護の両立が模索されています。フィクションとは言えバーナビー氏の研究は、アニマルウェルフェアの観点から倫理に悖ると言えるでしょう。


また、先進国に輸出する食材のために村の環境が破壊される実態もあります。アボカドの生産を伸ばしているメキシコでは、高収入が見込めるためトウモロコシなどから転作する農家が多いですが、アボカドは栽培に大量の水を必要とするため、他の用途の農業用水や生活水を奪ったり、使いすぎで水源が涸れてしまったりしています。違法な伐採による農地拡大もあり、周辺の森林に大きなダメージを与えました。


高値で売れるものは資金源になると、アボカドは犯罪組織から目を付けられて農家が被害を受けていることも明らかになっています。上納を拒否した人間が殺害され、農家自身で武装せざるを得ない、そんな状況が長く続いていたそうです(現在は改善しているとのこと)。


牛だったら約2年半という時間を、私達は「おいしい」という短時間の快楽のために消費しています。栄養摂取が目的なら、太って不健康になるほど食べなければ済むだけです。結局は「贅沢」のために、作る側の人達へ理不尽な仕打ちを強いているのではないでしょうか。その歪みが今になって噴出しているのです。稲作でも最も主流の小規模水田はほぼ赤字で、平均年間所得が僅か1万円という衝撃的な数字が出ています。代々受け継いできた田んぼを守るにしても、この状況で素直に継ぎたいとは言い難いでしょう。


お金を払えば食べ物が買える。それが当たり前になりすぎて、陳列棚の向こう側にあるものをあまりにも知らなすぎるのです。カトリックでは七つの大罪のひとつに「暴食」が挙げられていますが、時代によっては暴食が最も重いとしていた時代もありました。私達の食事の生産がフェアに行われているか、今まさに見直さざるを得ない地点にまで来ています。


その上、世界全体で見れば飢餓で苦しむ国がある一方で、私達を含む先進国がたくさん輸入して大量のフードロスを出している。先週の写真も「世界を変えた一枚」と評されたものの、では現在のスーダンの状況は当時と変わっているでしょうか。投機で高騰し、先進国の家畜飼料になった穀物は、飢餓に喘ぐ人達の口に届くべきものだったのではないのか……それを考えると、スーパーに並べられた大量の食品に一種のグロテスクさもあるかもしれません。


最後にひとつちょっとした提案を。あなたが次に食べ物を口にしたとき、味わって呑み込むまでの時間を数えてみましょう。次に、その食品が素材の生産から製品になるまでどれほどの時間がかかったかを想像してください。この2つの時間を比較して、本当に見合っているのか考えてみましょう。



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