[MOM1097]三菱養和SCユースMF下田悠哉(3年)_大会途中で闘志に着火、パワードリブルでMVP獲得
ゲキサカ / 2014年8月4日 22時6分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.2 日本クラブユース選手権決勝 三菱養和SCユース 1-0 F東京U-18 ニッパ球]
まさしく、戦車そのものだった。ボールを持てば積極的なターンから少し強引にも見えるドリブルで相手を引きずり、前進する。ゴールに近付けば、やることは一つ。左の大砲を打ち放つ。やや気持ちに正直過ぎるプレーで相手にブロックされることは多かったが、相手にとって最も脅威で、見る者にとって最も期待ができるのは、三菱養和SCユースが誇る2シャドーの一角、下田悠哉だった。決勝戦は、24分に敵陣中央からドリブルでショートカウンターを仕掛けた。相手を蹴散らしてGKとの1対1を迎えてシュート。思い切りブロックされたが、ツーシャドーを組む伊東駿が「リバウンド」を取るように跳ね返ったボールに素早く反応し、値千金の決勝弾をたたき込んだ。
下田の仕掛けに思い切りが出てきたのは、グループリーグの3試合目となった磐田U-18戦からだったという。「磐田戦から本当に厳しい相手になった。自分が走らないと勝てない、という感覚があった。心臓が止まるまで走ってやろうという気持ちになった」と振り返る。変化は如実に表れた。山本信夫監督は「元々、攻守に一生懸命にやってくれる選手。ただ、大会初戦は点を取っていたけど、チームのために走るという点では物足りなかった。でも、大会を通して自分からハードワークをするようになった。理由は分からないが、ものすごく暑かった磐田戦の後半から急にスイッチが入ったように動き出した。彼がボールを奪ってゴールにつながるプレーも多く、成長した姿を見せた選手」と評価した。
ただ走るだけでなく、プレッシングやドリブル、ヘディングの競り合いなどの対人戦で攻守に惜しみなく体を張るプレーは頼もしい限りだ。主将で最終ラインをまとめる池田樹雷人は「いつも前半は押さえ気味だけど、後半になるとスイッチが入る。でも、今日は最初からやってくれた。ハードワークで10番らしい(チームを引っ張る)プレーをしてくれているから、ほかの選手も走ろうと思える。前線であれだけプレスに行ってくれれば守備も助かる」と大きな信頼を寄せた。
下田は、三菱養和らしさを表に出している選手の一人。幼い頃から養和で培ってきた技術を持ちながら、和気あいあいとしたクラブの雰囲気に馴染んでいてノリが良く、気持ちで勝負する。MVPとして名前を呼ばれたときは驚いた表情をいろいろと作ってふざけていたが、いざ受賞をして列に戻ると感極まって号泣した。街クラブの日本クラブユース選手権制覇は、Jクラブが誕生した1992年以降では初。「なんで自分たちが優勝しているんだろう。夢の中にいるような感じ。Bチームの選手や親御さん、スタッフ、みんなが自分たちのことを信頼して信じてくれていた。みんなで勝ち取った優勝だと思う。自分も(足をつって83分に)交代してからは、声を出しまくっていた。僕らがJクラブを倒さないと、ほかのチームも街クラブはJクラブには勝てないという意識になってしまうんじゃないかという気持ちはあった」と、自分たちで成し遂げた快挙を振り返った。下田は走りまくり、戦いまくり、得点を生む――街クラブの快挙にふさわしい10番だった。
(取材・文 平野貴也)▼関連リンク
【特設ページ】第38回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会
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