ゲキサカ特別インタビュー『岡田武史ブラジルW杯観戦記』中編
ゲキサカ / 2014年9月19日 17時18分
オランダ対ブラジル 完全に負のスパイラルにハマッた惨めなブラジルの姿
続く3位決定戦のオランダとの試合も、ブラジルは同じようにやられた。出場停止が明けてチアゴ・シウバは戻ってきたものの、中盤や攻撃陣の構成を変えて、普段やっていないメンバーで普段やっていないことをやろうとしてトコトンやられた印象だった。
私の考えでは、ディフェンスラインを押し上げるのは陣形をコンパクトにするためであって、相手からオフサイドの反則を取ることは副産物だと思っている。必要のないときや条件が整っていないときは、無理にラインを上げることはない。
しかし、この日のブラジルはPKでいきなり先制されたこともあって、むやみやたらとラインを上げて前のめりになって攻め込んだ。GKがドイツのマヌエル・ノイアーならともかく、ジュリオ・セーザルにディフェンス陣の背後の広大なスペースを埋められるわけがない。そういうミスマッチをオランダにどんどん突かれた。こういうちぐはぐさを抱えて試合をすれば、事は裏目、裏目に進んでしまう。
ブラジルの準決勝の大敗は、翌日のオランダ対アルゼンチンの準決勝に備えて移動したサンパウロのホテルのテレビで見ていた。正直、悲しい感情がわき起こった。私たちの世代にとって、ブラジルはそれだけの絶対的な存在感がある。
ただ、他のチームと比べたとき、この程度じゃ仕方ないかな、という気もした。今大会のブラジルは普通の人がイメージする華麗なサッカーはできず、ネイマールとオスカルがボールを持ったときだけ何かを起こせるチームだった。がっちり相手に引かれたらダビド・ルイスのロングボールに頼るようなチームだった。あるのは「王国」というブランドだけ。中身が詰まっていなければ、ブラジルであってもボロボロにされる。時代がそういうふうに移り変わったのかもしれない。
ネイマールにしても、ブラジルの歴代のスーパースターに比べたら、まだまだ足元にも及ばない。ペレやリベリーノ、ジーコやロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョといった先輩たちと比べてどこが違うかといえば、簡単にボールを失うことである。それが相手のカウンターの起点になっていた。ネイマールですらそうなのだから、フレッジやフッキは推して知るべしだった。
チリとの決勝トーナメント1回戦も薄氷の勝利だったし、ベスト8で戦ったコロンビアとも接戦になった。それでも勝てたのは、南米の相手にはこれまでに徹底的に刻みつけた敗者の記憶があり、ブラジルの「腐っても鯛」的な神通力が効く部分がまだまだあったからだろう。
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