「東京五輪への推薦状」第46回:精鋭相手に見せた別格の輝き。「覚醒してきた」尚志の1年生FW染野唯月
ゲキサカ / 2017年8月7日 9時20分
2020年東京五輪まであと3年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ
ちょうど1週間前の試合では、残り10分から交代で出てきたものの、ほぼノーインパクトに近かった。だが、1週間を経て地元の郡山市を舞台に行われた「第6回福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」で、尚志高の新1年生FW染野唯月は別格の輝きを見せ、全国級の精鋭を向こうに回して確かな存在感を見せ続けた。
5日の三重高戦で0-2でビハインドの状況から投入されて2点を奪うと、6日午前の大津高戦では交代出場でダイナミックな抜け出しからの好クロスでアシストを記録。そして同日午後の京都橘高との一戦ではFWとして先発出場。ゴール前で危険なプレーを継続して2得点を奪い、紛れもないMOM級の活躍で勝利に貢献してみせた。
鹿島アントラーズつくばジュニアユース時代は「元々ボランチ。たまにトップ下もやった」(染野)という選手だったが、尚志のスタッフは最初からストライカーとして獲得を目指していたと言う。前線の柱となれる資質があるという判断だった。
茨城県龍ケ崎市にいた染野が遠く福島の尚志を選んだのは「自分のプレーに合ったサッカーをしている」ことに加え、鹿島つくばJYの二歳先輩にあたり、幼少期から知っているという現尚志10番・加野赳瑠の存在も大きかったようだ。加野は「ずっと仲が良くて、『こっち来いよ』と自分が誘いました」と笑いつつ、「アイコンタクトだけで分かり合える」という絶妙なコンビネーションを早くも見せ付けているのは印象的だった。
仲村監督は「言われたことをすぐにピッチ上で反映できる。今日も中盤に下りて来すぎていることを指摘して我慢して待つように言ったら、パッとそれに対応して点も取った」という吸収力を評価しつつ、最近のプレーぶりについても「覚醒してきた」という言葉で前向きに表現する。チームとしての積年の課題である決定力不足解消にも「プリンスリーグ東北でも結構点を取れていますからね」と期待をにじませた。
「前線でヘディングに競り勝ったり、いろいろなパターンのシュートを持っているのが武器」と語る男が、いま前線の選手としてこだわっているのは裏への抜け出しとそこでのファーストタッチ。C大阪のFW柿谷曜一朗のプレーを参考にしながら、プレーを磨いてさらに得点パターンを増やしていきたい考えだ。
視線の先には二つの目標を見据えている。一つは長年の夢であるプロ選手になること。もう一つは「年代別日本代表に入りたい」という純粋な野心だ。まだまだFWとしてのキャリアも浅く、未完成の選手には違いない。だが、点を取るという感覚は紛れもなく天性のもの。郡山での日々がこのルーキーをどう育んでいくのか。2年後が楽しみになった。
執筆者紹介:川端暁彦
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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