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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第59回:新時代へ走る「海舟」(佐野海舟:米子北高)

ゲキサカ / 2017年9月21日 19時0分

米子北高MF佐野海舟

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 大きな男になるように願いを込められて、偉人の名前を授かった。堅守速攻が伝統の米子北高は、相手のパスを前に跳ね返し、スペースへ走って速攻を仕掛ける。しかし、今季は中盤でボールを落ち着かせる選手がいる。2年生で10番を背負うMF佐野海舟だ。9日に行われた高円宮杯U-18プレミアリーグWEST第12節では、C大阪U-18に先制されて苦しんだが、反撃の起点となり、後半に同点ゴールを決めて引き分けに持ち込んだ。

「点は取れたけど、もっと走って、積極的にボールを受けて展開しないとチームも自分も良くならない。自分より上手い選手がいる中で、他人より走ったり泥臭く戦ったりすることが目標」と話した佐野がイメージしているのは、日本代表の井手口陽介(G大阪)だ。

 奪う、捌く、決める。現代サッカーのボランチは、ボールに関わり続けなければ評価されない。佐野の最大の武器は、中盤のボール奪取力。わざとパスコースを空けておいて、インターセプトを狙う。セカンドボールもよく拾う。しっかりとマイボールにできる奪い方ができ、なおかつ冷静さも持っているため、精度の高い攻撃につなげることができる。

 これまでの米子北にはいなかったタイプだ。ただ、落ち着いてボールを回すスタイルが身についているために、横パスを狙う傾向が強いという。城市徳之総監督は「僕は、シュートを求めています。点が取れるボランチでなければ、上の世界では通用しない。ボールを動かすチームで育って来た選手なので、縦を狙う意識が少し遅れるところがあります。まずシュートを狙うことが大事」とゴールへ向かうプレーを求めている。

 堅守速攻というベースの中で、技術はより実用的に磨かれている。就任2年目の中村真吾監督は、U-17日本代表の森山佳郎監督から聞いた助言も参考に、運動量を求めている。「僕は、今の運動量で満足していたところがある。でも、森山さんは『○○の誰々はペナルティーエリア(PA)で守備をして、相手のPAまで出て行くよ』と言っていた。だから、今は運動量やセカンドボールを拾うことをもう10メートル、20メートル連続でやらせたいと思っている」と話した。タフに戦う中で、技術が生きてくる。

 名の由来である勝海舟は、交通機関が未発達の幕末に、国内各地、海外へと足を運んで新たな時代を切り拓いた。「選手権でもっと上までチームを連れて行けるようにしたい」と話す佐野海舟は、チームの新時代を切り拓くために走る。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
▼関連リンク
スポーツライター平野貴也の『千字一景』-by-平野貴也

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