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[もうひとつの高校選手権・敗れざる者たち]王者を1点に封じ込めた、愚直な守護神

ゲキサカ / 2019年2月16日 21時55分

たまがわ高等支援学校の守護神・坂本和樹は王者のシュートをことごとくはねのけた

[2.16 もうひとつの高校選手権 東京都立志村学園 1-0 大阪府立たまがわ高等支援学校]

 第4回全国知的障害特別支援学校高等部サッカー選手権「もうひとつの高校選手権2018」が16日、静岡県藤枝総合運動公園サッカー場で開幕した。前回3位の大阪府立たまがわ高等支援学校は前回王者の東京都立志村学園に0-1と惜敗。前回準決勝で対戦したときに0-5と大敗したリベンジは果たせなかったが、今大会も優勝候補にあがる強豪のシュートの雨を浴びながら、わずか1点に抑えた裏に、サッカー経験1年足らずの守護神の意地があった。

「全国大会に出たい、という気持ちはあったので、気持ちの部分だけでは負けたくなかった。最初のセットプレーはやられてしまいましたけど、それ以降は(自分のやるべきことを)できたと思います」

 そう語りながら顔をあげたGK坂本和樹(3年)は、仲のいい友人と一緒にサッカーがしたくて、実は2年の終わりにはじめたばかり。しかもここ2週間は職場実習のため、ほとんど練習に参加できず、ぶっつけ本番で試合に臨んでいた。前半5分に先制弾を許したが、その後、相手選手と1対1になる決定的な場面を思い切りよく前に出て止めると、後半もシュートは浴びてもことごとくはじき返した。試合終了間際には相手のエース格、渡邉仁暉のシュートを飛びながら左手一本ではじき返した。指先まで意地が貫かれていた。

 サッカーをはじめる前はソフトボールで外野の選手。GKのように何度も地面を這うように転がることはなかった。そこで、面白い「儀式」を編み出した。練習前などに寝そべって転がるのだという。

「意識のうちのどこかで『飛びたくない』『こけたくない』という思いを消すためです」

 北川力也監督は照れくさそうに打ち明ける坂本の労をねぎらい、次を見据えた。

「(坂本は)この1年足らずの間でメチャクチャ成長してくれた。彼はメチャクチャ悩むんですよ、キックの蹴り方とか含めて。不器用かもしれませんけど、練習も休まないし、基本的に練習をきっちり続けてくれました。(渡邉の)左手一本で止めたシュートもここに来る前までだったら入っていますよ、きっと。今年は実習とかで人数不足で試合にのぞまなければいけないときもあったので、大変なこともありましたが、3年生は坂本を含めて2人しかいないのでいい経験を積めました。日本代表の候補になるような選手もいるんですが、今回は連れてこれなかった。その彼の復活も待ちながら何とか、来年は……」

 飲み込んだ言葉の中にあるのは打倒・志村学園を実現させる「3度目の正直」への思いか。悔しい敗戦は次なる戦いへの号砲でもある。

(取材・文 林健太郎)
●障がい者サッカー特集ページ

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