ロシアW杯2得点も「悔しい1年」。乾貴士が語った戦術論、若手論、コパ・アメリカ…

ゲキサカ / 2019年6月18日 9時48分

MF乾貴士(アラベス)

 ロシアワールドカップでの2得点に始まり、2度のスペイン国内移籍、アジアカップ出場、そしてシーズン終盤の負傷もあり、MF乾貴士(アラベス)の2018-19シーズンは激動の1年だった。「全然何もできなかったので悔しい1年でした」。日本を熱狂させた1年前の栄光に浸らず、ひたすら前を向き続ける31歳のアタッカーにさまざまな質問をぶつけた。

―この1年間を振り返ると、いろんなことがありましたね。
「そうですね。今年はいろいろありすぎましたね。疲れました(笑)」

——率直にどう振り返りますか?
「こういう1年はなかなか経験できないので、サッカー選手としてこういう1年があってもアリなんじゃないかなと思っています」

―自己評価としては?
「いやいや、全然何もできなかったので悔しい1年でしたよ」

——いま振り返ると悔いのほうが大きい?
「そうですね、もちろん」

——どの点が最も悔しさがありますか?
「やっぱりチームで結果を残せていないというところが一番悔しいですし、そこが不甲斐ないですね」

——まずはベティスへ移籍しましたが、スタイル的にはボールを大事にしつつ、左ウイングの個で押し込んでいくという形でした。乾選手がどう絡んでいくか難しい部分もあったと思います。
「そうですね。やり方を覚えるのが難しかったですし、そこに自分が合わせられなかったのが2回目の移籍をした一番の理由なので、自分の実力不足でした」

——セビリアのファンの期待の大きさは感じました。
「W杯で活躍というか、点を取ったところしかみんな注目してなかったと思うんです。そういう活躍をしたことによって、自分の評価が上がりすぎたというか、過大評価されすぎているところがあったので、最初に入った時は期待も大きかったですし、そこはきつかったですね、正直。ちょっとした活躍じゃ許されなかったですし、その活躍もできなかったんですけど、プレッシャーに打ち勝てなかったというのはあります」

———ただ、W杯という大一番での勝負強さは、そうした反骨心も力に変えた結果だと思いました。
「いや、もう運だと思いますよ。(西野)監督が我慢強く使ってくれたというか、スタメンをガラッと変えてくれたのももちろんですし、自分の実力やそういった悔しい思いだけではなかったと思います」

———誰が出たとしても同じ活躍ができたとは思いませんし、あの場面で決めることができたのも一つの強さだと感じます。
「そこはすごくうれしかったです、もちろん。他の国民の皆さんもそうですし、チームメートもそうですし、みんなが喜んでくれたのはうれしかったです。あれが自分の財産になっていると思います。ただ、あの大会は自分の実力以上のものが出たので、それは運が強かったかなと思います」

———乾選手は上り調子の中で、そうした前向きな雰囲気を作り、自らも乗っていける選手だという印象があります。
「どうなんですかね、自分では考えたことないので分からないですけど、チームが乗っていけばある程度バーッと乗っていけるところはありますね。誰かが流れを作ってくれればうれしいですし、自分でそれが作れればまたすごいことだと思います」

———アジア杯の途中で『バナナの謎はまだ謎なのだぞ』という早口言葉をインスタグラムで配信していたこともありました。
「ハハハ(笑)。あれはふざけてやっていただけです(笑)。ふざけてましたね、はい(笑)」

———柴崎岳選手がやっていることへの反響がすごかったことを記憶しています。
「『誰々もやってください!』っていうのが、ダイレクトメッセージとかで来ていた中では、一番岳が多かったですね。岳をやってー!というのが多かったと思います(笑)」

———ああいう雰囲気づくりも大事という意味合いですか?
「いや、どうなんですかね。別にあんまり考えていなかったですけど(笑)」

———大会中に「せっかくやるなら楽しく」といった発言をよくしていた印象がありました。
「そうですね、そこが一番だと思います。それはピッチ外だけじゃなくて、出ている選手も出ていない選手も練習の中から楽しくやれれば…ということです。やっぱりサブ組の選手は試合に出られないとフラストレーションが溜まるものなので。日本代表ではいなかったですけど、練習の中で腐る選手もクラブチームではたくさん見てきましたし、自分はチーム内でも年が上のほうだったので、そうならないように盛り上げていけるようにやっていこうと思っていました」

———アジア杯を終えてアラベスに移籍し、チームが一段階レベルが上がったように思います。「まだやれるな」って感じはあったんじゃないですか?
「どうですかね、『まだやれる』っていうふうには思わなかったですかね。それまで半年間試合に出ていなくて、必死だったんで。ただそんな中でも声をかけてくれたチームが、俺が行った時は3連敗していて、あまり勝てていない状況でした。なので俺の中で『やるしかない』ということしかなかったですね。まあ、他の選手も『勝たないと』というところで、いいサッカーというか、みんなが必死に頑張った結果が出たんじゃないかなと思います」

———乾選手が怪我をしてからチームも苦しい戦いが続きました。「自分がいたらもっと上に行けた」という気持ちはありますか?
「いやいや、全然です。俺がいても3月の(キリンチャレンジ杯の)代表から帰ってきてからは全然勝ててなかったので関係なかったと思います。自分がいても何もできていなかったのが現状ですね」

———それは具体的にどういった部分ですか?
「やっぱり得点能力も攻撃の部分もそうですし、守備の部分もそうですし、全体的に何もできていないイメージがありました」

———乾選手を見ているとシステムやピッチ上のスペースを見極める能力が高いように思います。アジア杯でも決勝のカタール戦で相手のシステムの特長をいち早く気付いていましたし、大会期間中には原口元気選手にポジションの指示を出す場面も見られました。ボールを触るのが得意な日本の選手はそういった特長を持つ選手が少ない中で、どこで覚えたのですか?
「エイバルですかね。エイバルの(ホセ・ルイス・メンディリバル)監督のサッカーがそういうサッカーなので、あの人の戦術を理解してからはそう見えるようになりましたし、そういうところを見ながらやっていると思います」

——日本のスタイルと違う部分はあると思うんですが、苦労はありませんでしたか?
「もちろんありましたよ。でも覚えていくしかないですし、エイバルではそれを覚えたらすごく楽しかったので。守備も攻撃も。それが自分の中にいまは染み付いているというか、あの監督の戦術が自分のサッカー観にもなっていると思います」

———それを他の日本の選手にも覚えてほしいという感覚はありませんか?
「ありますね、もちろん。でも人それぞれサッカー観は違うので、伝えてはいきますけど全てがそういうふうにならないのも分かっています。でも、やっぱり俺は森保さん(森保一監督)にも『こういうやり方のほうがいいよ』ってのは言いますし、森保さんも『どんどん意見を言ってくれ』と言ってくれていたので、アジア杯の時も3月のキリンチャレンジ杯でも意見交換はしましたね」

———高校時代に高校選手権なので活躍されましたが、そういった戦術眼は高校生のうちに学んだほうがいいと思いますか?あるいはもっとやるべきことがあるなと思いますか?
「学べるなら学んだほうがいいですよね。久保くん(MF久保建英/FC東京→レアル・マドリー)みたいにね。Jリーグに出たりとか、コパ・アメリカに出たりとか、そういうのは早いほうがいいと思います。ただ、日本の高校の指導者でそこまで教えてくれる人はいまはいないと思うので、いま覚えるのは難しいと思います。ただ早く海外に出たりして、いろんなところで覚えられると思います。その実力やタイミングをつかんでいくしかないと思っているので、それができるように頑張ってほしいですね」

———乾選手の立場から見て、高校生のうちにしておいたほうがいいことはどんなことがありますか?
「難しいなあ、それは(笑)。俺は高校生の時は……。うーん、何ですかね(笑)」

———これをやっておいて良かったなということ、これもっとやっておけば良かったなということでも構いません。
「たぶんそれってイコールになりますよね。でもシュート練習かな(笑)。シュート練習もっとやっておけば良かったなって思いますね」

———あまりやってなかったですか?
「いやー、そんなにやってなかったかな。追求するところまではやってなかったかもしれないです」

———やっぱり野洲高だと綺麗に崩し切る練習とか。
「そうですね。そっちのほうが多かったり、あとはドリブルですね」

———いまの若い選手を見ていて、個性を感じることはありますか?
「若い子がっていうのはないですけど、堂々としているのはあるかなって思いますね」

———乾選手が初めてJリーグに入った時は結構ビビりましたか?
「いやー、結構ビビりましたね。俺はビビりなタイプなんで、萎縮しまくってました(苦笑)」

———それが若い選手にはない。
「ないと思いますね」

———アジア杯の日本代表だと堂安律選手、冨安健洋選手などがいましたが。
「(萎縮することは)ないですね。あの歳でもう代表のスタメンになっているんですから凄いですよね」

——もうすぐコパ・アメリカが始まりますが、若い選手が多く先発に入っています。有名な選手が相手に並ぶ中、選手としてはどういった気持ちになるものですか?乾選手はスペインに行った直後、バルセロナのMFアンドレス・イニエスタ選手(神戸)にSNSで憧れを示していましたが。
「やっぱり嬉しいですよね、そういう選手とやれるというのは。ただそこで実力を出せないと悔しいので、どれだけ若い選手が思い切ったプレーをやってくれるか楽しみです」

——選手の目線からこういうところを見てほしいというのはありますか?
「たぶん海外でやるのが初めてな選手ばかりだと思うので、最初は違いに戸惑うこともあると思うけど、慣れていけばできることだと思うので、早く違いに慣れて、自分たちの良さを出してほしいです。たぶん技術は通用すると思うので、身体の強さだとかは負けることも多いと思いますけど、技術でどうにか対抗してほしいと思います」

——注目している選手はいますか?
「やっぱり翔哉(MF中島翔哉/アルドゥハイル)、久保くんですね。この2人は注目していますし、どんなふうにコンビネーションが合っていくのかなと思います」

——久保選手は乾選手の目から、どういった点がすごいと感じますか?
「状況判断がすごくしっかりできているので、ここでは自分で行ける、ここでは味方を使う、ここでは無理をしないという判断がすごくうまいと思います。周りを活かせるのが特長だと思います」

——また、中島選手については、報道陣からはポジション争いの相手として見られていましたが、乾選手は素直に高い評価をしている印象を受けました。
「はい、だってうまいですもん。誰が見てもうまいですからね。これからが楽しみですよ」

——争うよりはすごいなという感じですか?
「俺とは違う特長があると思っているし、俺には俺の良さがあると思っているので、そこでは負けたくないですけど、負ける負けないよりは、代表に入れるように頑張りたいと思っています」

——そういう意味では次のシーズン、どういう1年間にしたいですか?
「やっぱりこの1年が不甲斐なかったので、次の1年が大事になると思います。ここでまた踏ん張ってスペインに長くいられるようにやっていきたいです」

(インタビュー・文 竹内達也)●コパ・アメリカ(南米選手権)2019特集
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