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“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月14日 9時26分

“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

治療も気から…

【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

 みなさんは「プラセボ」という言葉をご存じでしょうか? 日本語だと「偽薬」と訳されることがほとんどで、具体的には有効成分が入っていないクスリのことを意味しています。

 なぜそんなものが存在しているのかというと、人間というのは心の影響を受けやすいからです。実際、有効成分が入っていないはずのプラセボでも、一定数の患者は効果が得られるケースがあります。これを「プラセボ効果」といいます。プラセボがどうして効果を発揮するのかは完全には明らかになってはいませんが、暗示などの心の影響が強いのではと考えられています。

 このプラセボは、世の中に出てくる前に行われる臨床試験によく用いられます。臨床試験では、新しいクスリの安全性だけでなく有効性も確認しなければなりません。よく用いられる方法が二重盲検試験というもので、実際に有効成分が入っているクスリを投与する群と、プラセボを投与する群の2つに無作為に分け、クスリの有効性を確認します。つまり、「プラセボ効果を加味しても、新しいクスリには有効性が確認できたよ」という証明をするのです。事実、臨床試験に参加する患者は、自分が服用・使用しているクスリに有効成分が入っているのか、もしくはプラセボなのかは知らされません。

 ではプラセボは臨床試験だけの話なのかというと、そうではありません。みなさんのほとんどは、なんらかの痛みがあるときに痛み止めのクスリを頓服として服用したことがあるのではないでしょうか? そのときに、服用して10分もしないうちに「あ、痛み止め効いてきた」と感じた経験があると思います。これもじつはプラセボ効果によるものです。

 多くのクスリ(内服薬)は、服用して効果を発揮するまでに30分以上の時間を要します。クスリは、服用して、溶けて、吸収され、成分が体中に広がって(分布)、初めて効果を発揮するのです。この過程は10分程度で完了するものではなく、もっと時間がかかります。ですので、服用してすぐに効果を実感しているのは、クスリというよりは「クスリを使った安心感」からくるプラセボ効果によるところが大きいのです。

 だからといって、プラセボが“悪い”わけではありません。暗示といった心の影響とはいえ、効果を実感できるのはさまざまな点でプラスになります。こんなことをいっている私自身も、クスリのプラセボ効果をしっかり享受しています。

「信じる者は救われる」という言葉があります。「病は気から」と同じように、「治療も気から」は大事といえるでしょう。みなさんは使っているクスリの効果を信じていますか? 強く信じたほうが、より効果が得られるかもしれませんよ。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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