《長谷川勇也の巻》三冠王も認めた「鷹のソクラテス」でも…思い出すのは皆をヒヤヒヤさせた右翼守備【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月25日 17時0分
長谷川勇也(C)日刊ゲンダイ
【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】#9
長谷川勇也
◇ ◇ ◇
長谷川勇也(39)が置きティーバッティングを黙々と1時間以上やると、終わるのを待っていた中村晃が入れ替わりで同じくらい打つ。いずれも職人肌の選手で、「こいつら2人で何時間打つんや」と周囲の口をあんぐりさせたものです。
マジメで一心不乱に打撃を追求する長谷川は、マスコミから「哲学者」「鷹のソクラテス」などと呼ばれたこともあります。
大卒選手(専修大)でしたが、ケガが多かったので一軍出場は入団2年目の2008年。一軍に昇格したばかりの頃には、三冠王の松中信彦に、「こいつのスイング速いなあ。俺とあまり変わらないくらいかも。ヘッドスピードがめちゃくちゃ速い」と言わせたくらいです。
超一流の打者も認めたバッティング。ただ、申し訳ないのですが、僕は長谷川といえばどうしても右翼守備の姿を思い出してしまいます。
当時、二軍が使用していた雁の巣球場は、夕方になると空の色と混じってボールが見えにくくなる傾向があった。そこで右翼守備中の長谷川が2回ほどフライをポロリとやった。それも「よし、アウト!」と誰もが確信する中での落球。だから僕を含め、二軍戦では打球が右翼に飛ぶたびに「ライトは……長谷川か……」と、みんなヒヤヒヤしながら注視するのが当たり前となっていた(苦笑)。
チームの雰囲気を変えるのもうまく、時折見せていたヘッドスライディングはナインを鼓舞する目的もあった。20年の巨人との日本シリーズ第3戦のそれが象徴的でした。すでにソフトバンクが2勝し、2点リードの六回、長谷川が凡打で一塁にヘッドスライディング。しかし、アウトとなり、長谷川は悔しさのあまり、グラウンドを叩き、しばらく起き上がれなかったくらいです。
普通に考えれば走り抜けた方が速いし、当時35歳の長谷川がそこまでやる必要はないと言えば、それまで。しかし、気持ちが入ったプレーで何とかチームを盛り上げようという思いがあったからこそ、頭から滑り込んだのです。
そんな男ですから、若手への苦言も歯に衣着せない。「今の子はいいですよね。(練習を)やらなくてもいいんですから」と言ったこともありますが、それだけ自分を追い込んできた長谷川だから言える言葉でもある。現在は動作解析などを担当するR&Dスタッフとして、縁の下からチームを支えています。
次回はモイネロの話をしましょう。
(田尻一郎/元ソフトバンクホークス広報)
◇ ◇ ◇
次回は、●関連記事【次話=モイネロの巻】…から読むことができる。
いったいどんな素顔が明かされるのか。2度も「近隣住民から苦情が入った」経緯とは。ソフトバンクファンは必読だ。
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