「過度な除菌」がキレやすい子供を増やすワケ…急な疲れや痛み、不調も腸内細菌が大きく関係
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月21日 14時3分
人の世界に視点を戻してみると、最も理想的な腸内細菌を持っているのは、じつは僧侶、修行僧の方々です。
修行僧と言えば、非常に規則正しい生活で適度に体も動かし、集中し、瞑想もしている。食べ物においては、量はさほど多くなく、内容はいわゆる精進料理ですから、お粥にたくあん、最低限の野菜とタンパク質など、植物性のものを中心に、じつに質素なものしか摂っていません。それがある意味、日本人の免疫を考えると理想的なあり方ということになります。この生活を目指すのはなかなか難しいですが、頭の片隅にはとどめておきたいものです。
日本人の食事は戦後から現在までのあいだに、急激に欧米化しました。しかし、その前までは精進料理とまで行かずとも、それに近い食事をしていたわけです。江戸時代、日本にやってきたヨーロッパの方々は、質素な食事に比して日本人が随分元気で力もあるのを見て驚いたといいます。
飛脚が一日200㎞進み江戸から京都まで2日半で移動したという記録も多数ありますし、人力車は14時間走り続けたとか。それは肉を好むヨーロッパの人々からすると質素に見える食事が、食物繊維中心ゆえ非常に豊かな腸内細菌をつくりあげ、人体の持つ運動能力を十全に引き出せていたからでしょう。
当時の日本人の食事は、発酵食品や食物繊維がかなり豊富なうえ、抗生物質などもいっさい飲んでいませんから、腸内環境は現代よりはるかにいい人が多かったと思われます。江戸時代の食事や生活スタイルは、現代の腸内環境改善においても参考になる部分が多いのです。
幸せホルモンのもとも腸内細菌がつくっている
腸内細菌が、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」「ドーパミン」「β‐エンドルフィン」の前駆体、つまりもとになるたくさんの物質をつくっているという点も見逃せません。
まずセロトニンは、興奮を抑えて心身をリラックスさせ、心を安定させるはたらきを持つホルモンです。セロトニンのもとになるトリプトファンは、そのほとんどを腸内細菌がつくっています。そして、じつに95%ものセロトニンが腸でつくられ、脳では5%しかつくっていません。それでもこれまでは、腸にあるものが脳に行くことは絶対にない、と考えられてきました。
ところが酸素などの栄養素以外にも、炎症性サイトカインなどが神経に入り込んでいることがわかってきました。これは神経に入り込んで欲しくない「悪い物質」ですが、そういうことが起こり得るなら「よい物質」が入っていく可能性だってあるでしょう。
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