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「過度な除菌」がキレやすい子供を増やすワケ…急な疲れや痛み、不調も腸内細菌が大きく関係

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月21日 14時3分

 また、95%ものセロトニンが腸でつくられているなら、それが脳に影響しないわけがないだろうと、近年では考えられるようになってきています。

 そのほか、ドーパミンはやる気や集中力、オキシトシンは愛情や信頼感、β‐エンドルフィンは「脳内モルヒネ」のような高揚感、鎮痛作用をもたらすホルモンです。これらのホルモンについてもくわしい数値の変化などはまだわかっていませんが、腸で前駆体を合成したり、腸内細菌が腸神経系を介して間接的に合成を促進したりは確実にしています。これだけでもリラックスや安心感、集中力や信頼感、高揚感などを得るうえで、いかに腸が大切かがわかるでしょう。

 腸と脳の関係は一般に思われているよりかなり深く、腸を通っている「迷走神経」という太くて大きな神経は、脳と直結しています。そのためストレスがたまると食欲がなくなるなど、如実に影響が出るのです。腸管神経系という独自の神経ネットワークを持ち、幸せホルモンの前駆体もつくっている腸は「第二の脳」とも呼ばれてきましたが、そのはたらきの重要性から、近年では「第一の脳」ではないかとも言われています。

 実際、進化の過程においては脳より先に腸ができており、脳がない生物はいますが腸のない生物はいません。受精卵が細胞分裂を重ね、成長していく際にも、まずできるのは腸なのです。

 それほどまでに重要な腸ですから、たとえば病気などで切除手術をするといった場合には、じつはそれなりに高いリスクを負っているということになります。これをきちんと理解している医師は、迷走神経などをしっかりと残して手術してくれる。そうすればマウスの例のように感情に異常をきたすことなく、普通の生活に戻れるのです。

 ところが、そうした配慮をすることなく手術をすると、人が変わったのではないかと思うくらい性格が変わってしまうこともあるのです。

 また、腸の機能が衰えれば、幸せホルモンの前駆体もつくりにくくなりますから、感動的な場面に出会ってもホルモンが出ず、あまり感動できないといった事態も起こりえます。手術にかぎらず、加齢に伴い感覚が鈍ってくるのは腸内環境が悪化していることも関係しているでしょう。

 ◇  ◇  ◇

▽飯沼一茂(いいぬま・かずしげ)

 医学博士。純真学園大学客員教授。日本機能性免疫力研究所代表。1948年生まれ。1971年立教大学卒業後、ダイナボットRI研究所(現:アボットジャパン)入社。1987年大阪大学医学部老年病医学講座にて医学博士取得。1995年、米国アボットラボラトリーズ・リサーチフェロー。2008年よりアボットジャパン上級顧問。2010年より国立国際医療研究センター・肝炎免疫研究センター客員研究員。2012年から純真学園大学客員教授。ホルモン、腫瘍マーカー、感染症マーカーの測定法の開発に多く携わる。特に、C型肝炎マーカーの開発によりC型肝炎の輸血による感染を撲滅し、世界的な評価を得た。そのほか、HIVマーカーの測定法開発やエイズ撲滅のボランティア活動を積極的に行っている。

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