健康寿命は経済力で決まる 低所得者は野菜や果物を食べず歯が悪い(永田宏))
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月25日 9時26分
今世紀に入ってから経済格差が徐々に拡大する傾向に(C)日刊ゲンダイ
所得格差が健康格差を生み出すことは、かなり以前から世界中で知られていました。日本では今世紀に入ってから経済格差は顕在化し始め、徐々に拡大する傾向にあります。どのような健康格差が生じているのでしょうか。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2018年)」によれば、低所得層(年収200万円未満)は、高所得層(年収600万円以上)と比べて、次のような傾向が強いことが指摘されています。
・野菜の摂取量が少ない(男性)
・果物の摂取量が少ない(女性)
・喫煙率が高い(男女とも)
・運動不足の傾向が強い(男女とも)
・健診を受けていない人が多い(男女とも)
・歯が悪い(男女とも)
野菜や果物の摂取が少ないのは、値段の割に腹が満たされないからと説明されています。確かに、炭水化物や脂質をたっぷり含んだ食事のほうが満足度は高いでしょう。しかし、カロリーの取りすぎは、肥満の原因です。
大和総研が17年に発表したリポートによれば、低所得層の肥満者の割合は、男性約38%、女性約26%で、平均(男性28.3%、女性19.8%)よりも、かなり高い数字になっています。
肥満・喫煙・運動不足は、いずれも生活習慣病のリスク因子です。定期健診を受けていれば、早めに手を打つこともできますが、低所得層では健診の受診率が低いことも問題になっています。
国民健康・栄養調査によれば、低所得層の健診受診率は、男女とも60%に達していません。10人中4人以上が、自分の健康状態を認識していないことになります。
所得格差は病院の受診にも影響を与えています。経済的理由から病院受診を控える人がいることは、以前からわかっていましたが、具体的な数字は出ていませんでした。しかし、23年に国立成育医療研究センターから発表された調査によれば、所得が300万円未満の世帯では、それより所得が多い世帯と比べて、男性約1.3倍、女性約2.1倍も受診控えが多いそうです。
低所得層は給料がなかなか増えず、増えたとしても税金と社会保険料で吸い上げられ、しかも物価は上がる一方。八方塞がりのまま、所得格差と健康格差は拡大していくばかりです。 =つづく
(長浜バイオ大学メディカルバイオサイエンス学科教授・永田宏)
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