長寿研究のいまを知る(3)なぜ、老化で「テロメア」が注目されるのか
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月26日 9時26分
ならば、テロメアの短縮を抑制できれば老化は止められ、長寿につながるのか?
「テロメアの短縮抑制は、老化を遅らせるアプローチのひとつにはなりえます。早老病のひとつであるウェルナー症候群の患者さんのテロメアは同年代の人より短く、100歳以上の長寿者とその家族は80代でも60代の平均値に匹敵するとの報告があります。また、テロメアの長さと見た目年齢の関係を調べた双子研究がデンマークで行われ、若く見えた人ほど長生きの傾向にあり、テロメアが長い、もしくは短いテロメアが少ないことがわかっています」
だからこそテロメアを「健康長寿の指標」ととらえてテロメアを無駄遣いしない生活習慣を身に付けることが大切だと根来医師は言う。
実際、米国の研究ではウオーキングなどの有酸素運動、野菜中心の食事、7時間以上の睡眠、良好な人間関係といった健康に良いとされる生活習慣はテロメアを伸ばすことが報告されている。
「私はとくに慢性炎症、糖化、酸化がテロメア短縮の敵であり、できるだけそれを避けることが肝要と考えています」
なお、1985年にテロメアの短縮速度を遅くしたり、伸ばす働きがある酵素が発見された。テロメラーゼと呼ばれる酵素で、発見した科学者はのちにノーベル生理学・医学賞を受賞している。
この酵素は普通の細胞では活性化されないが、生殖細胞のほか、日々の新陳代謝で失われる細胞を補うため日々分裂を繰り返している幹細胞(例えば造血幹細胞)、無限増殖を続けるがん細胞で活性化されていると考えられている。
「ならば普通の細胞をテロメラーゼで活性化させれば老化を防げると考える人もいるかもしれません。実際にそう謳ったサプリメントも出回っています。しかし、事はそれほど単純ではありません。テロメアが短くなる速度は細胞により異なり、体全体の細胞を一律に修復したら、不都合が起きないとも限らない。また、テロメラーゼは細胞のがん化に関係することもわかっています。特定の細胞のテロメラーゼだけを活性化させる技術も開発されておらず、実用化はまだ先だと考えています」
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