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健康寿命は経済力で決まる(3)入院中の食事代に見る日本の貧しさ

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月27日 9時26分

健康寿命は経済力で決まる(3)入院中の食事代に見る日本の貧しさ

病院の台所は厳しい状況が続いている

 東京の築地界隈では、裕福なインバウンドたちが、何千円もする昼食に「安い!」といって群がり、日本人サラリーマンたちはそれを横目に見ながら、ワンコイン弁当に群がっているのだとか。

 ところでワンコインといえば、入院の1食当たりの食費とほぼ同額です。正式には「入院時食事療養費」といいますが、今年の6月から、1食当たりの患者負担が490円になりました。物価高騰に対処するためです。

 入院中の食費は、実は患者負担分と保険からの給付分の合計になっています。平成9年に1日(3食)当たり1920円と定められ、うち760円が患者負担、残りが保険給付となりました。

 その後は昨年までこの1920円という金額は固定のまま、患者と保険の負担割合だけが変更され続けてきました。今年の5月以前は、1食当たり患者460円、保険180円(1日3食換算で患者1380円、保険540円)でした。それが6月から、患者分が30円(1日換算で90円)値上がりしたのです。保険給付分は据え置きなので、1日換算で2010円です。

 しかし、病院の台所は厳しい状況が続いています。食料品の値上げラッシュはとどまることを知らず、しかも急激な円安による輸入食材の急騰、さらには米不足も加わって、ほとんどの病院で給食は赤字に陥っています。

 家計を預かる奥さんたちは、1日の1人分の食費が2010円なんて、高すぎると思うかもしれません。しかし病院給食には、管理栄養士や調理師の人件費が上乗せされますし、患者ごと、病気ごとに献立や材料を変える必要も生じます。手間と金がかかるのです。

 このままの状態が続けば、多くの病院が食材の質を落とさざるを得ないでしょう。「まずい病院食」の復活です。保険からの給付金を増やせば、と思う人もいるはずです。しかしそれは、現役世代の健康保険料をさらに引き上げることにつながります。そうなればワンコイン弁当すら、贅沢になってしまうかもしれません。

 インバウンドの昼食代にも満たない金額で入院の3食を賄わなければならない。築地で見られる日本の貧しさは、かたちを変えて、医療の世界にも影を落としているのです。 =つづく

(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科・永田宏教授)

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