糖尿病患者は「骨折」に注意する…命に関わる合併症のひとつ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月29日 9時26分
健常者に比べ2.78倍転倒リスクが高い
「骨折」は日常動作はもちろん、生活の質の低下をもたらす。高齢者の場合は治りにくいうえ、死亡リスクも高める。そんな骨折リスクは糖尿病で特に高くなるという。なぜか?
糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に話を聞いた。
◇ ◇ ◇
「糖尿病というと血管や心臓、腎臓や肝臓などの病気ばかりを気にし、骨折への認識が欠けている人が多いのは残念です。糖尿病やその予備群は、骨折が糖尿病の合併症のひとつであることを自覚する必要があります」
糖尿病は、インスリン作用の不足による慢性の高血糖状態を主な特徴とする病気だ。高血糖状態は全身にさまざまな障害を引き起こし、寿命の短縮、生活の質の喪失などを招く。合併症は、網膜症、腎症、神経障害で、脳心血管障害や急性代謝失調(急性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖)や足病変、歯周病などの感染症、認知症などが知られる。ところが、糖尿病の人は骨折が多いという複数の報告があるのにあまり知られていない。
「糖尿病の人とそうでない人を比べた研究では1型糖尿病で3~7倍、2型糖尿病の人で1.3~2.8倍骨折しやすいことが報告されています。その理由のひとつが糖尿病の人の骨が脆弱だからです」
鉄筋コンクリートの建物の強度は、鉄筋とそれを取り囲むコンクリートの強さで決まる。骨の強度もそれと同じだ。
「骨はコラーゲンというタンパク質が束になってコラーゲン線維となり、ビルにたとえると、鉄筋部分の役割を果たしています。その周りにカルシウムなどのミネラルがコンクリートのように張り付くことで強度を保っているのです。強い骨になるにはコラーゲンにカルシウムやリンなどのミネラルが均一に沈着する必要があります」
■骨密度ではなく骨質に問題がある
ところが、糖尿病で高血糖が続くと、タンパク質に糖が結びつきコラーゲン同士のつながりが弱くなる。結果として骨質が劣化する。
「骨の強さは骨密度で決まると考えがちですが、骨の質が悪ければ、骨密度が低下しなくても骨折しやすくなります。糖尿病の人は骨密度が高くても安心してはいけないのです」
また、糖尿病でインスリンの分泌量が減ると骨がうまく作れなくなり、骨が弱くなることがわかっている。
「骨は、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞により絶えず作り変えられています。骨芽細胞にはインスリン受容体があり、インスリンと結びつくことで骨芽細胞は増殖するのですが、逆に足りないと骨芽細胞は増えずに骨形成が低下するのです」
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