「飛ばないバット」でより重要 「二塁走者」にショートの動きを伝える伝達法(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月2日 9時26分
明治神宮大会を制した横浜の走塁(C)日刊ゲンダイ
【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】#213
高校野球に飛ばないバットが導入され、1点を取るために、より重要になるのが「走者二塁」の場面である。
二塁と三塁ベースを直線で結んだとして、無死の場合のリードは、線から1メートルほど後ろ。直線で走りたいからだ。
1死か2死の場合は、3~4メートルほど後方に膨らんでリードを取る。ワンヒットで本塁へかえるため、三塁ベースを回りやすくするためで、走者が膨らんでいると、遊撃手も守りにくくなる。
「ライナーバック」というが、これが難しい。二遊間へのライナーに対し、少し帰塁した後に打球が頭上を越えても、後方は右中間か左中間で外野手はいない。焦らなくても本塁へ生還できる。一塁と三塁へのライナーも飛び出さないことだ。
二塁走者は打者のスイングも見る。右打者が開き気味に打っていたら、三遊間に飛びやすい。開いていない時や外角球の時は、一塁や二塁へ飛びやすいなど、備えることはできる。
二塁走者の判断で最も難しいのは三遊間へのゴロだ。
遊ゴロなのにスタートを切れば、三塁で封殺される。逆に左前へ抜けているのにスタートが切れなければ、三塁止まり。これも痛い。打球の強弱にも関係するが、基本的には「三塁手の定位置から10~12メートル」が安打ゾーン。これはフリー打撃時に練習したり、三遊間にノックを打ってもらって培うしかない。感覚で覚えられれば「武器」になる。
二塁走者のリード、第2リードともに4~5メートルが目安。これをサポートするのが「一塁ランナーコーチ」だ。
甲子園などの大舞台で、二塁走者の背後にいる遊撃手の位置を知らせるテクニックがある。よくランナーコーチが「ショート入った」とか「ショート離れた」と声で指示を送るが、大声援の甲子園では全く聞こえないため、声は意味をなさない。一塁ランナーコーチが動いて知らせるのだ。
例えば遊撃手が二塁走者の背後にいる時は、一塁コーチはそのまま。三遊間側に動いたら、一塁コーチはコーチスボックスの本塁寄りに動く。この動きで走者は背後の遊撃の位置を知ることができ、リードを大きく取れるのだ。
高校野球では延長戦に入ると、無死一、二塁のタイブレークが導入される。送りバントのサインが出れば、二塁走者が大事になるが、打者にもプレッシャーがかかる。もし三塁手が投球前に猛烈に前進し、遊撃手が空いた三塁ベースに入る「オルストンシフト」を敷いてきた場合、打者はサインが出ていてもバントをしないで見送るか、バスターに切り替えることだ。
二塁走者は三塁手が前に出たからと、つられて飛び出してはいけない。投手が捕手のサインを見ているふりをして、振り向きざまに素早い牽制球を投げてくることがある。これは刺されやすいから注意が必要だ。
(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)
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