ワコム Cintiq 16レビュー:廉価ペンタブレットがiPadに勝る部分とは

GIZMODO / 2019年2月26日 18時30分

waom Photo: Andrew Liszewski (Gizmodo US)

プロを目指すなら。

iPad ProとApple Pencilは完成度の高い連携を実現しています。これによりAppleはペンタブレットの分野でも、ついにアーティスト向けのクリエイティブツールとしてのステータスを獲得しようとしています。かれこれ過去10年もの長きにわたり、デザイナーやグラフィックアーティストに愛用されてきたペンタブレットの老舗Wacom(ワコム)にとっては冷静ではいられません。WacomのCintiqはお世辞にもお安いとはいえませんし。

しかし、ここにきて市場に投入された廉価な650ドル(約7万1800円)のCintiq 16は、はっきりとAppleを競合として視野にいれた値段で、妥協点も多いものの、お金はないけど夢と野望は大きく持っているアーティストたちのお財布にやさしい味方といえそうです。

Wacom Cintiq 16

cap Photo: Andrew Liszewski (Gizmodo)

これは何?

Wacomの廉価な最安値スタイラスLCDタブレット。

価格は?

650ドル(約7万1000円)

好きなところ

アマチュアイラストレータや学生も気軽に買える業界標準のデザインツールな点

好きじゃないところ

ハードウェアに妥協しすぎ。プロならもう少しお金を払ってよい機種を選んだほうがよいかも

Wacomの他の液晶タブレットと比較すると格安ですし、同様のサイズの16インチCintiq Proは倍の1,500ドル(約16万6000円)ということを考えれば、Cintiq 16は文句なく安いです。マウスやトラックボール、タッチパッドでは思うようにその才能が発揮できない、そういうフラストレーションから解放されるためにデザインされたアーティスト用のツールがこれです。でもマジでデザインや美術系アートにでも打ち込まない限りは、普通の人にその機能はすべて使いこなせないでしょう。

650ドルという値段に見合っているかを考えるとき、Cintiq 16に「できないこと」を挙げてみたほうがよいかもしれません。同じ値段の650ドルの10.5インチiPad Proは立派なコンピュータ端末でもあります。アート系やデザイン系アプリも確かにありますが、メッセージやビデオ通話、メール、表計算、ゲームといろいろこなせる汎用機器です。

Cintiq 16はコンピュータのサブ画面として機能してくれます。Wacomのスタイラステクノロジーを駆使して各種ソフトウェアのデスクトップ版と連携できます。この点を見るとアーティストとして羽ばたきたい人達にとっては、iPadよりもよい選択だといえると思います。確かにiOSアプリにも、Adobe(アドビ)のPhotoshopやIllustratorに似たようなアプリは用意されています。ですが、ソフト面でもハード面でもデザインの世界で標準を打ち立てていてるデスクトップ版のフル機能ツールを使いこなせるようになるということは、アーティストとしての腕を磨くのと同じくらいに重要なことだと思います。

wacom2 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) Cintiq 16のディスプレイではAdobe Photoshopなどのソフトは使いやすい。

Cintiq 16の画面(実際のサイズは15.6インチといってもよい)はWacomが出しているタブレットでは最大サイズではありませんが、十分な大きさがあり、使いやすい広さです。 1,000ドル(11万1800円)の12.9インチのiPad Proと比べて少し大きくなっています。13インチのMacBook Proを接続すると、Adobe Photoshopの作業スペースが格段に広くなり、狭くてソフトウェアが使いにくいという窮屈感から解放される感じです。

wacom3 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) Cintiq 16の画素密度はiPad Proと異なるため、小さな文字やUI要素は粗く表示される。

繰り返しますが、Cintiq 16の650ドルというお得な価格は妥協により実現されています。まずLCDディスプレイの解像度。Wacomのプロ仕様バージョンは3840×2160ピクセル。ですが Cintiq 16の廉価版だと1920×1080 ピクセル。 13.3インチのMacBook ProのRetinaですら2560× 1600ピクセルですよ。 ユーザーインターフェースのアイコンなどがギザギザになって見えます。

wacom4 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) Cintiq 16の指紋防止コーティングはギラツキに弱いので暗いアトリエでの作業がよい

WacomのCintiqハードウェアのマイナス点は画面を見るときのアングル。色は正面から見なくてもくっきり鮮やかなのですが、反射はきついです。Cintiqには指紋がつかないよう特殊コーティングが施されているのですが、これがあるせいで、画面を横から見るとき非常に見づらくなっています。アトリエやデザインスタジオが暗かったりしたら、あまりギラツキも心配する必要がありませんが、光が多い場所で作業するときは画面を傾ける必要がでてくるでしょう。

slide1 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US)

slide2 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US)

Cintiq 16はデスク置きしたときに傾きを与えるため背面に折り畳みできる小さなスタンドがついています。またVESAマウント規格のネジもついています。でも、固定するよりフリーに動く使い方のほうが便利に使えますね。

Cintiq 16はWacomのCintiq Pro製品の他のハイエンドディスプレイや、お高いAppleのiPad Proや外部モニタなどと比較すると表示できる色の数も少なくなっていることも指摘しておきたいと思います。カラーススペースはRGBに制限されるため、色表現にも限界があります。ということは、CMYKでの色表現ができないということ。色の再現が重要となる作業には使えないため、安いからとCintiq 16に飛びついても、最終的には困ることになる、最悪は買い替えを強いられてしまう可能性があるということです。結局お高くつくかもしれないのです。

wacom5 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) Cintiq 16の側面にある布製のホルダにペンをしまっておける。

とはいえ、ディスプレイのクオリティだけがすべてではありませんよね。アーティストが追い求めるのはWacomのバッテリーいらずのスタイラステクノロジーです。Wacomは電磁共鳴テクノロジーの開発を進めてきました。このテクノロジーによりスタイラスが抜群の性能を発揮してくれるのです。

Apple Pencilを使ってみて比較しても、ソフトウェアで作業するときにはWacomの太めのスタイラスのほうが心地よいです。反応性がよく、高速で、ボタンを押すことによりショートカットも操作できるため、キーボードを操作する手間が省けます。Cintiq 16はスタイラスのみに反応し、指を認識してくれません。でもこれはそれほど悪いことではなく、たまに手が当たったりしても誤動作しないので、それはそれで意外に便利なんですよね。

6 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) 操作性のよいエクスプレスメニューは物理的なショートカットには代えられないものの、機能性はよし。

WacomのIntuos Proペンタブレット、またはお財布に痛いWacomのオールインワンMobileStudio Proと違い、Cintiq 16のディスプレイ周りには電源ボタン以外のボタンが一切ありません。机以外でお絵かきするようなときは、ソフトウェアのショートカットを使うたびにいちいちキーボードに手を伸ばす必要があり、面倒です。ショートカットボタンがあるととても便利ですが、Cintiq 16ではスタイラスのボタンで操作するエクスプレスメニューでしかショートカットにアクセスできません。

7 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) 今やワイヤレスが当たり前。そんな現代にもCintiq 16はケーブルに依存しているため、使える場所が制限される。

iPad Proの方がCintiq 16に勝っている部分はたくさんあります。たとえば、iPad Proは完全にワイヤレスで機能しますが、Wacomは電源、HDMI、USBに至るまでコンピュータとの接続はケーブルに依存します。Cintiq 16で作業できる場所は制限されてしまうのです。飛行機でちょっとスケッチしようと思っても、簡単にはできないのががっかりです。

8 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US) スタイラスのペン先とCintiq 16のディスプレイのカーソルが微妙にずれているのは慣れるまで時間がかかる。

Wacomのテクノロジーは、コンピュータのカーソルをCintiq 16のスタイラスで素早く正確に追うことができます。しかし画面を構成している層が厚いため、スタイラスと画面の間にギャップが生じてしまっています。上の画像では色を塗ろうとしているのですが、ブラシのカーソルがスタイラスからずれており、これに慣れるまで少しかかります。それに対し、iPad ProとApple Pencilは画面に直接書き込んでいるフィーリングが得られます。

デジタルデザインという面で考えると、まだまだソフトウェアの使用が重要になってきますが、AdobeのCreative Cloudのフル機能を備えたアプリはiPadとiOSではまだ使えません。Adobeはモバイル版のライトバージョンも出してはいますし、一部ユーザーにはその機能で十分でしょう。ですがプロが使い始めたら、さまざまな肝心な機能が欠けていることに気づくことでしょう。 iOSでフル機能のアプリが使えるようになったとしても、iPadではファイルの管理が課題となることは目に見えています。

AdobeはPhotoshopの完全版がiPadに導入されることを告知していますが、デスクトップ版と比較して、どのような操作性をもたらしてくれるかは未知数です。すべての機能が使えるかもしれませんが、インターフェースのカスタマイズなども課題となってのしかかるでしょう。

9 Image: Andrew Liszewski (Gizmodo US)

AppleのiPadはいつの日かコンピュータにとってかわる存在となるのかもしれませんが、その日が来るのはまだまだ先のこと。 今でもグラフィックデザインや写真加工ではデスクトップのワークステーションが幅をきかせています。多くのソフトウェアはモバイルデバイスでは使えません。

新しいCintiq 16は最高のハードウェアにたっぷり予算が使えるプロが使うようなツールではありません。 でも、プロを目指すアマチュアにとって、業界で使われているソフトウェアを使いこなすきっかけを得てワークフローに慣れるという意味では、iPad Proよりも投資する価値があると言えるのではないかと思います。

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