安物買いではなく「責任ある消費」を。デザイナーが語るサステイナブル・ファッション

GIZMODO / 2019年8月1日 22時0分

hopeforflowers1 Photo: Itaysha Jordan ("Hope for Flowers")

とっても素晴らしい取り組みなので、シェアさせてください。

ファッションデザイナーのトレィシー・リース氏。デザインの世界で成功した黒人女性のひとりである彼女は、いまやファッション業界のリーダーともいえる存在です。

先月には、新たな12点のサステイナブルなコレクション「Hope for Flowers」が発表されました。彼女がつくった洋服は海外セレブが愛用するだけでなく、日本でもおしゃれ好きな人たちが注目するライフスタイルブランド「Anthropologie」や「Détroit is the New Black」で販売されています。

リース氏の洋服づくりに用いられるのは、オーガニック認証のコットンやリネン。シルクスクリーンプリンティングとよばれる技法でつくられています。注目すべきは、ほぼ水を使わず、手作業であること。水を使用する場面は主に、スクリーンを洗い流す工程だといいます。

衣類のファブリックは、環境に影響を与えるもの。たとえば、ポリエステルのような合成素材を洗濯すると、水道システムにマイクロプラスチックを流れ込ませる原因につながります。ファッション業界は世界で2番目に水資源を使用し、温室効果ガス排出では全体の8〜10%を占めることが国連環境計画(UNEP)により報告されています。

さらに、この新しいコレクションはミシガン州のデトロイトとフリントから製造されています。フリントはかつて、街全体が飲料水に高濃度の鉛が含まれていた地域。フリントでは現在、St Luke's N.E.W. Life Centerで、現状を変えて新しいスキルを身につけることに意欲的な女性たちが雇用されています。

持続可能性(サステイナビリティ)とは、どんなファブリックが使われているかだけでなく、どこで、どのような過程で製造され、それに関わる人たちがどんな影響を受けるのかが重要だと考えるリース氏。

ファッションが地球環境に優しい業界になれるよう目指すうえで、どのような道を辿るべきか。Earther Gizmodoが彼女に取材してきました。

※インタビュー内容は、読みやすくするため一部編集されています。

服を増やすために資源を浪費したくない

Earther:なぜ今、持続可能なファッションを取っているのですか。

リース氏:私たちの業界にとって、持続可能性は大きな問題だと考えています。これは私たちみなの責任ですが、私自身の責任として、あるいはもっと責任を持てるように、やり方を模索しながら取り組むことにやりがいを感じています。私たち全員が変化を起こさなければならないですね。

そして会社、デザイナー、個人が心の目で見て、魂で感じながらいままでの業界のやり方にアプローチし、決断をしていく必要があると考えています。製品を増やすために、ただ意のままに地球の資源を利用したり、労働者を搾取したりすることは許されないことです。いまの世の中はすでに大量の製品で溢れています。服を大量に買って、大量に捨てるのには心が痛みます。

Earther:コレクションに選んだ場所についてお聞かせください。最近ではミシガンに重きを置いていることについても。出身地であるデトロイトでコレクションを行なう重要性についてはどうお考えでしょうか。

リース氏:デトロイトの家にはよく帰省していたのですが、3年程前に街の変化に気づかずにはいられませんでした。新しい建物の建設、リノベーション、新しく引っ越してきた人たちの数に圧倒され、新しいエネルギーを感じたのです。

こうした街の再活性化を目にして、自分でも家族で集まれる場所をつくれたらと思い、家を建てることにしました。それまでは主にニューヨークを拠点にしていたのですが、もっとデトロイトで過ごしたいと考えるようになりました。そこで若手のデザイナーや製造者、他社メーカーの方々と会いはじめました。

デトロイトには芸術家や歌手、ダンサー、作家など非常に豊かな文化的コミュニティがあって、たいへんなときでもコミュニティの結びつきが常に強くあります。これは私にとって、非常に興味深いことでした。

故郷にいながら、生産的になれる方法を探していたら、ISAIC( 裁縫産業イノベーションセンター)との出会いに恵まれました。それに、新しくサステイナブルで最先端の衣料品製造工場がデトロイトにできたのですが、それがとても良くて...。数十年のあいだずっと海外で生産をしてきましたが、少なくとも一部をアメリカ国内で行なう方法がついに見つかったのです。

そうして、ISAICの理事会に加わって数年が経ちます。そのあいだ多くの計画が実現し始めています。Carharttのサポートを得ながら、新しい工場を建設しています。衣服の生産を行ないながら、人々に縫製のスキルトレーニングをしたり、新しい技術を学んだり。アメリカ国内で最先端の持続可能な製造環境を目指しています。

Earther: 過去に大きな水質問題に直面したフリントや、環境問題を抱えるデトロイトで、サステイナブルな衣類をつくる姿勢はすばらしいです。

リース氏:起きてしまったことについてずっと考えるよりも、解決策を探したほうが早いですから。

環境に負荷をかけない素材のチョイスが重要

Earther: 新たなコレクション「Hope for Flowers」は、前回の「Flint Fit」コレクションよりもさらに持続可能性の使命を担っていると思いますか。

リース氏:そうですね。いま作っているコレクションのほうが、より手に届きやすいのではないかと思います。

デザインの段階から、どうすれば環境に対して責任ある意思決定となるか考えていますが、サステイナブルという点においては製造がいちばん重要な部分です。

素材はどのようにつくられたか? では、地球や生産者への負担が少ない有機コットン、リネン、ファブリックを使う...それは私が最初に考えはじめることです。

それに、地元での生産は非常に重要なので、どこまで地元地域で生産できるかについても議論しています。いまはコストの管理に取り組んでいて、公正な賃金を支払うことを目指しています。このことは本当に重要なのですが、少量のバッチ生産をするとコストはかなり高くなります。手に届きやすい価格にできる方法を探しています。

Earther: 「Hope for Flowers」コレクションをサステイナブルなものにしているのはどんなことでしょうか?

リース氏:私たちが服を選ぶとき、その素材や構成要素は非常に大きな部分だといえます。私にとって社会的側面、コミュニティ的側面もまた重要です。だからこそ、地域社会に還元しながら生産したいと考えています。学校や子どもたちと協力したり、メーカーやデザイナーを支援したりして地域の人々に恩返しするという使命感があります。

その過程にはたくさんのステップがありますが、もっとも大きな影響を与えることができる確かな方法は、素材を選択することだと考えています。

Earther: 「Hope for Flowers」コレクションでこだわっているのはどんなことですか?

リース氏:デトロイトで地元の人と一緒にシルクスクリーンで生地を手作りしたことです。とても興味深いプロセスだったんですよ。デトロイトで素材をつくり、フリントで形になったことは、とても誇りに思っています。

それから、サイズにもかなりこだわりました。私たちが撮影した作品のモデルは、サイズゼロのようなもの。私はというと、サイズ8か10。でも、私たちは同じ服を着ることができるんです。これも、持続可能なデザインのひとつです。より多くの人々が着れるサイズに収めることができれば、無駄も少なくなりますよね。

さまざまなアイデアを実現できたプロジェクトだったのでまたやりたいと思っているのですが、今度はもっと経済的に実行可能な方法を考えます。

消費にも責任がともなう時代

Earther: セレクトストア「Anthropologie」の大ファンです。でも、ほかのブランドと比べるとやっぱり高く感じます。持続可能なアイテムや衣服をもっと手の届きやすい価格にする計画はありますか?

リース氏:まさに、そのことはゴールととらえながら取り組んでいます。でもいまは、まだ生まれたての赤ちゃんのような状態で、無責任にデザインされたものを世に送り出したくはないですから。そのためにいま頑張っているわけではないのと、いまはどうしてもコストがかかる時期なんです。いま使用している素材も高騰しています。

アメリカ人(あるいは、世界中の人々)が「お手頃価格」に慣れていると思います。でも、レジで支払いをするときに、価格が安いということが何を意味して、どうやって製造されたか、どんな素材で、地球にどんな影響を与えるのかまで考える人は、どれくらいいるでしょうか?

少しでもお買い得品が欲しい気持ちはみんな同じです。でも、私たちは責任を持って消費をしなければなりません。それは、余計な買い物を減らして、質のいいものを求め、どこで作られたものかを知ることができて、地球にも人にも優しい買い物である必要があるのです。

Earther: 今後は?

リース氏: いま歩んでいる道を突き進むのみです。国内での製造を増やして、ISAICの工場をオープンします。それから、国内外の多くのメーカーやデザイナーと組んで、人々がより「責任ある消費」ができる社会の実現を目指していきます。

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